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業界ニュース 2019.8.19

あおり運転の知られざる原因!? クルマのデザインが「怒り顔」になった理由とは

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■ミニバンを中心に「怒り顔」が人気

 いまのクルマのフロントマスクを見ると、どれも目を吊り上げたような「怒り顔」が流行りです。最近のクルマは、なぜ怒り顔になったのでしょうか。

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 怒り顔がもっとも顕著なのは、ミニバンでしょう。トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」「ヴォクシー」などは、エアロパーツを装着したグレードを中心に、怒ったような仮面を被ったような怖い顔立ちです。

 これをそのまま小さくしたのが、いま日本で一番売れている背の高い軽自動車です。エアロパーツを装着したグレードは、すべて怒り顔です。

 スズキ「スペーシア」の標準ボディは柔和な顔立ちで、アウトドアテイストを取り入れた「スペーシアギア」も丸型ヘッドランプで独特の表情を演出していますが、エアロパーツを備えた「スペーシアカスタム」は怒り顔です。ホンダ「N-BOXカスタム」も、同様の怒った表情です。

 コンパクトカーのトヨタ「ヴィッツ」は、1999年に発売された時には、丸みのあるボディに穏やかなフロントマスクを組み合わせました。これが2010年に発売された3代目の現行型で怒り顔になり、数回のマイナーチェンジを経て、いまでフロントグリルが大きい吊り目の怖い顔になっています。

 マイナーチェンジで怒り顔に変更すると、ボディ全体の造形バランスが悪化します。変更するのはフロントマスクだけで、ボディサイドには手を加えにくいからです。

 現行ヴィッツも発売時点ではフロントマスクとボディサイドが調和していましたが、マイナーチェンジで顔だけ怒った表情を強めたため、比較的オーソドックスなボディサイドとのバランスが悪くなりました。

 レクサス「CT」も、マイナーチェンジでフロントマスクをスピンドルグリルに変更したので、バランスが悪化して前側が重く感じます。クルマに限らずデザインでは全体の見え方が大切ですから、フロントマスクだけを変えると無理が生じるのは当然です。

 レクサスの商品企画担当者は、怒り顔のデザインについて次のようにいいます。

「レクサスのようなプレミアムカーの場合、ブランドを表現する統一された顔立ちが必要です。そのためにコンパクトなCTから最上級セダンの『LS』まで、フロントマスクは基本的に同じ形状にしています。

 またフロントマスクには、視覚的なインパクトも大切です。例えば先行車のルームミラーに自分のクルマが映った時、そのブランドをアピールできることが求められます」

■クルマの世界も弱肉強食!? 怒り顔がドライバーに与える影響とは?

 メルセデス・ベンツやBMW、アウディなどは、フロントマスクで明確なブランド表現をしています。しかもその表現の仕方は、近年エスカレートしてきました。

 例えばメルセデス・ベンツの場合、かつてのセダンは緻密にデザインされたメッキグリルの上に、小さなエンブレムを立てるのが伝統的な手法でした。グリルの中に大きなエンブレムを収める形状は、空気抵抗を軽減させたいスポーツカーの「SL」だけが使っていました。

 それがいまでは、緻密なメッキグリルはほとんど使われず、セダンからSUVまで大きなエンブレムをグリルの内部に収めています。

 これはメルセデス・ベンツの世界的な戦略とされますが、いかにも「ベンツだぞ!」というデザインには、販売店からも疑問の声が聞かれます。

 メルセデス・ベンツの販売スタッフは、次のようにいいます。

「個人的には、最近のメルセデス・ベンツのエンブレムは、ちょっと目立ちすぎだと思います。グッチとかルイ・ヴィトンのロゴを大きくプリントしたTシャツみたいな感じで、ひけらかしている印象が強いです。

 お客様のなかにも、従来のグリルに変えられないかという要望がございます。

 以前は車種によって変更できるものもありましたが、いまは難しいです。というのも、グリルの内側には、緊急自動ブレーキなどの各種センサーを収めているからです。

 センサーの役割を果たしているので、単純にグリルだけを交換することはできないのです」

 メッキグリルの上に小さなエンブレムを立てると、歩行者と接触した時に加害性が生じるといいますが、高級車の「Sクラス」や「マイバッハ」はいまでも立体エンブレムを踏襲しています。Sクラスやマイバッハが歩行者保護を軽視しているはずはなく、矛盾が生じます。

 いまの各メーカーやブランドの顔立ちは、統一された表現をしながら、競うように目を吊り上げた怒り顔にするなどインパクトを強めています。

 以前はフロントマスクが穏やかだったアウディも、2000年代に入ると開口部を大きく見せる「シングルフレームグリル」を採用しました。

 極端ないい方をすれば、前走車のルームミラーに映ったときにインパクトがないと、道を譲ってもらえないなどの不都合があり、クルマの売れ行きにも影響を与えるのです。そこで世の中のクルマが全般的に怒り顔になったというわけです。

 これは、弱肉強食的な世界観でもあるでしょう。存在感の強い怒り顔で、前方の車両に道を譲らせながら、自分は追い越し車線を突っ走る感覚です。

 昨今の状況を考えると、あおり運転を連想します。あおり運転をするのが怒り顔のクルマとは限らず、問題があるのはもちろんドライバー自身ですが、弱肉強食的な世界観とデザインが与える心理的な影響も皆無ではないと思います。

 自動車メーカーは、クルマとドライバーの心理を、脳科学の観点も踏まえて多角的に研究しています。例えばアームレストなど内装の肌触りは、赤ちゃんの肌と同等の摩擦にするとリラックスできるとか、スイッチを押した時の感触なども含めて多岐にわたります。脳波や心電図でスタッフを測定しながら、心身ともに最良の状態で運転できる開発を進めています。

 そうなると安全の観点から、クルマのデザインが、ドライバーの運転に与える影響にも力を入れて研究すべきでしょう。道を譲らせながら走る弱肉強食的な運転は、危険に繋がるからです。逆にドライバーに優しい運転をさせるデザインがあれば、安全性も高められるといえます。

※ ※ ※

 優れた安全装備が採用されていても、運転の仕方が乱暴では意味がありません。ドライバーに優しい運転をさせるデザインが確立されると、交通事故の防止に一層の効果が上がるのではないでしょうか。

 フロントマスクなどクルマの外観は、機能の表現でもあります。優しい運転をさせるデザインは、造形にとどまらず、優しく運転できるクルマ造りに結び付きます。

 街中を走るクルマに怒り顔が減り、優しいクルマが増えると、安心して暮らせる街づくりにも繋がると思います。

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(くるまのニュース 渡辺陽一郎)

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