7月30日よりレースが始まっている全米アマチュアモトクロス選手権、通称ロレッタリンモトクロスに日本の下田丈が参戦。年齢の都合上、最後のアマチュアシーズンとみられるこの大会で、目指すは頂点しかない下田が初戦痛恨のミス。下田が参戦する2クラスのうち、この7月30日は250 Pro Sportsクラスのヒート1であった。
「生まれて初めて。こんなことが起きるとは」
7月29日の練習走行では、クラストップタイム。全米における前評判としても、今季最注目とされる下田丈は、いやでもメディアに囲まれる立場にある。17歳、気負わず臨めというのが無理だろう。
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いやなムードは、グリッドにつく前からあった。ヒート1のグリッドは、くじ引き順に選べるのだけど、そのくじを引いた瞬間の下田は、顔を珍しいほどにゆがませながら叫んだ。下田の引いたくじは、42番。42人グリッドだから、まさに「最悪」のくじを引いたのだ。思えば、ロレッタリンでいいくじを引いた覚えが無い。下田に言わせても「いつも、くじ運が悪い。去年は38番と40番、一昨年は11番と37番…」と全部覚えているくらい、悪い。「もう、大当たり。ある意味」と。
まさに「残り物」のグリッドへ滑り込んだ下田は、アウト側より。奇しくも、隣にライバルの一人ピアース・ブラウンが並んでいた。2年前に取材した下田より、だいぶ緊張感が見て取れた。居心地の悪さか…落ち着かない。
スタートゲートが降りた瞬間、持ち前の反応の良さで好スタート。ここで前にすっと出てくるはずが、下田は数メートルで失速。首を若干傾げながら再加速するが、時すでに遅く集団に巻き込まれてしまい、2コーナー目でコースアウト。最後尾からの立ち上がり…いや、それだけではなかった。4コーナー目では転倒車につまづきさらに失速。はっきり言って、最悪だ。下田は、レース後この様子を語りながら「そこでレースは終わりました」と吐き捨てた。
もちろん、下田は表彰台どころか1位を狙っているライダーだから、いかに最後尾からと言えどグイグイと追い上げを効かせる。決して諦めたりはしないし、1周につき10人ほどごぼう抜きしながら追い上げを加速する…が、当然だが一気にスパートをかけていくトップ陣の逃げに、その位置からでは到底届かなかった。体力もしっかりついて、同世代の中でもタレないと評価されてもいるが、結果は8位。一体スタートで何があったんだ、スタッフは下田を囲んだ。
2速スタート、ニュートラルにギア抜け
スタッフ達は、みんなスマホでスタートの動画を撮っていて、何度も繰り返し研究する。原因は、2速からのギア抜けだろうとのことだった。シフトに触れることなく、ニュートラルに入った。下田は人生で初のことだったと言う。「何がおきたかわからなかったですよ」と。悔しがる下田に、チームメイトでライバルのジェット・ローレンスが「スタート前に、2速にしっかり入れて、少しクラッチをつないでおくんだ」と説明していた。レース後、下田はすぐにトレーナーのヤニングとスタート練習場に直行して、スタートの感覚を体に染みこませた。何度も何度も、スタートの所作を繰りかえす。「タイムアタック順で、グリッドしてほしいよ」と下田は漏らす。
下田は、今年から少し変わったスタート方法を取り入れている。というのも、見ての通りホールショットデバイスを思い切り下に下げている。その数値、140mm。フロントが上がってしまうことに対して、姿勢を思いきり前下がりにすることで対処するのだと言う。そもそも、下田はスタートにも定評がある。だが、「毎年、ロレッタリンは最初よくなくて、段々調子を上げていくんだよな」と下田の祖父は言う。
「ローカルレースでは、プロのトップクラスとあまりタイム差はない。でも、いまの段階でスピードが劣っていたら話しにならないですから。プロ(AMA)でどこまで戦えるか、たぶん初戦では一桁には入ると思ってる」と下田は淡々と言う。プロで通用する人間に育つだろう、と思っていたら、完全に認識は甘い。すでに「当然プロで通用する」ライダーだ。だからこそ、この8位は歯がゆい。勝って当たり前、その位置にいま下田はいる。2日目水曜日は、2クラス。ロレッタリンの火ぶたは、切り落とされたばかりだ。
もう一つのロレッタリン・チャレンジ。「なっちゃん」が4位!
じつは、このロレッタリンモトクロスに、日本人がもう1名チャレンジしている。全日本レディスでも戦っている楠本菜月だ。
楠本は、3年前に日本人向けのモトクロスキャンプ「MX Clinic」に参加。メキメキとその時に実力をつけて、2年前のロレッタリンに参戦した(2017年は下田同様カリフォルニアに移住してモトクロスに打ち込んでいた、横山遙希、瀬川開生らも参戦。うち、横山はご存じ全日本IA2クラスでポイントリーダー)。
そして、2019年下田丈が最後のロレッタリンになるだろうことを見込んで、楠本も再度参戦を決意した。下田が参戦しない年は、物流やその他様々な事情でとても参戦が難しい。楠本にとっても、これは最後のチャンスと言えるレースだ。
まさに、絵に描いたような好スタートで5~6番手あたりからの立ち上がりから、一時3番手まで浮上。ポディウムが見えたところ、ラスト2周でバックマーカーの転倒にまきこまれて4番手、そのままフィニッシュとなった。楠本が参戦するガールズクラスは、85ccをフルチューンして122ccまでボアアップしたマシンが使われる、アメリカ特有の層の厚いクラスだが、楠本を含めて5位までほとんどベストラップに差がない。見ていても、スタートで出てしまえば楠本の勝利に可能性が見いだせるほど。明日以降の楠本にも、期待をかけたい!
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