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第一印象良し!忖度なしの中古車試乗レポート第3弾、1989年式ポルシェ911カレラtype930

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第一印象良し!忖度なしの中古車試乗レポート第3弾、1989年式ポルシェ911カレラtype930

試乗可能な「広報車」というモノが基本的には存在しない中古車の試乗レポート第3弾、今回は1989年式ポルシェ911カレラtype930、いわゆる930(キューサンマル)である。

第一印象良しなミツワ物のタイプ930カレラ

世にも珍しい中古車試乗!なぜかは知らぬが妙に頑丈なポルシェ911カレラS ティプトロニック

まずは当該中古車の基本スペックからお伝えしよう。試乗車両は横浜市のガレージカレントが販売する1989年式911カレラtype930。車両価格は797.9万円で、試乗時点での走行距離は10.8万kmだ。

このモデルの当時正規インポーターだったミツワ自動車が日本へ輸入したいわゆるディーラー車で、整備記録簿によれば、納車後はミツワ自動車のファクトリーにて点検および整備を定期的に受けていた模様。オーナーが変わった後も、カレントテックセンター(ガレージカレントの自社ファクトリー)などで定期的なメンテナンスを受けている。

外装および内装のコンディションは、年式から考えると「なかなか良好」と言える。もちろん中古車ゆえ「新車同様の美しさ!」みたいなものではないが、丁寧に使い込まれた上質な道具ならではのシブさが感じられる、といったところだろうか。古い中古車にはありがちな「車内にこもった嫌なニオイ」もほぼ皆無と言っていいだろう。

リアに搭載される空冷水平対向6気筒エンジンは一発で始動し、アイドリングの不穏な揺れや、エンジンマウントなどの劣化に伴う不快な振動もない。もちろんまだ断言はできないわけだが、この個体に対する第一印象は「優または良!」である。

余談になるかもしれないが、中古車を選ぶ際、筆者はこのような「第一印象」をけっこう大事にしている。その個体を見た初期段階における印象と、細部をチェックした後おおむねわかった事実は、たいていのケースで一致しているからだ。もちろん百発百中ではないが、これまでの経験によれば「百発九十九中」ぐらいではある。

中古車としてのコンディションはおそらくかなり良好

閑話休題。まずは事務的に話を進めていこう。

先ほど申し上げたとおり、始動時におけるエンジンやエンジンマウント類の状態はおおむね良好であると推測された。そして走り出してみても、その印象は変わらない。いや走れば走るほど、「なかなか良い中古車ではないか!」との印象が溢れかえってくる。

トランスミッションは節度があり、クラッチのつながり具合も良好で、エンジンは回転フィールもパワー感もなんら問題なし。足回りもしなやかであり、ジョイント部分からコトコトだのコキコキだのといった異音が聞こえてくることもない。

もちろん「本当の正確なところ」は、せめて1週間はお借りしてさまざまなシーンを走り込んでみないことにはわからない。だがさしあたっての結論というか推論は、「特に何の問題もない中古車ですね。や、、むしろ素晴らしい中古車なのではないでしょうか。たぶん」ということになる。この感触を有している930カレラが797.9万円というのは「なかなかお買い得」と評するほかない。

最初は設計の古さに閉口。だがしばらく乗るうちに……

以上が「事務的な試乗レポート」だ。そのうえで「本編」に進もう。

筆者は最初、このクルマが嫌だった。

試乗当日は小雨が降っていたため、エンジン始動後にまずはワイパーを動かした。だがそのワイパーがきわめて頼りない感じのモノで、頼りない範囲しか拭き取ってくれない。「昔のワイパーって、そういえばこんな感じだったかも……」と思い出しながらクラッチを踏むと、これがまたクソ重い。

クソ重いクラッチを踏みながらトランスミッションを1速に入れ、クラッチをつないで発進させると、今度はステアリングがクッソ重い。「そういえば911にパワステが付いたのは、これの1コ後の964からだったな……」と今さらながら思い出し、筆者は試乗コースへと出たのだ。

そして出たはいいが、現代のクルマでは当たり前のようににドライバーの斜め前方にあるはずの「動く地図(要するにカーナビの画面)」がない。不案内な場所でナビ無しか……とため息をつきながら、重いクラッチを踏み、重いステアリングを回し、筆者は嫌々走っていたのだ。最初のうちは。

だが筆者は、クソ重いクラッチにもクソ重いステアリングにも、すぐに慣れた。まあ当たり前ではある。「数年前」とは言わないが、20年ぐらい前までは自分もこのようなクルマに乗り、そして「動く地図」無しで普通に走っていたのだから、ちょっと乗れば当時の感覚を取り戻せるのは自明の理だ。

そして筆者は、なんというかこう、燃えた。

今の時代にこういったフレーズを言って良いのかどうかわからないが、とにかく「コレは男のクルマだ! 男はこういうのに乗らないとダメだ!」とひとりわめきながら、横浜界隈の道でシフトチェンジを繰り返しながら爆走したのだ。や、実際は「爆走」ってほどのものじゃないが、「心的爆走」を繰り返したのだ。

930に乗れば男は健康になれる?

要するに、試乗前の筆者は「男の本能」みたいな部分が完全にナマっていたのである。

オートマで、パワステで、カーナビが勝手に道案内をしてくれて、それだけでなく筆者の場合はアイサイトver.3が半自動運転みたいなことをしてくれるものだから、「自分の肉体を動かすことで何かを獲得する」という行為の歓びを、すべてとは言わないが半分ほど、忘れていたのだ。

かなり大げさに言うのであれば、この1989年式911カレラを運転しているときの筆者は「縄文時代の男」であった。自分でねぐらを作り、自分で食料を探すなり殺すなりして手に入れ、食い、食わせ、ときに戦い、そして家族を守る。

そういった「肉体的行動」に伴う歓びというか、自らの肉体を動かした結果として得る歓び。それはおそらく人間の身体と心の奥底に、昔も今も変わらず存在しているはずのものだ。

半分ほど忘れてしまっていたそれを、930型ポルシェ911という「ある意味不便な乗り物」を操縦することによって、筆者は久しぶりに思い出したのだ。

おそらくだが、コンディションの良い930型ポルシェ911をファーストカーか、そうでなくても「メインのセカンドカー」ぐらいの立場で日常的に使えば、男の身体と心はかなり健康になるような気がする。

「健康志向」な各位に強くおすすめしたい、ナイスな中古車であった。

取材協力:ガレージカレント

[ライター/伊達軍曹]

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