わくわくゲートの左右非対称のデザインは女性に不人気
日本の多人数乗用車、ファミリーミニバンのパイオニアである、ホンダ・ステップワゴンの5代目が苦戦している。2018年4月~2019年3月期の販売台数は5万3478台(標準車&スパーダ)。
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それはステップワゴンが属するMクラスボックス型のライバルでもっとも売れた日産セレナの10万0017台(乗用車全体でトヨタ・プリウスに次ぐ4位!)の約半数、トヨタ・ヴォクシー&ノア&エスクァイア軍団合計の18万7369台(ヴォクシー8万9944台、ノア5万6872台、エスクァイア4万0553台)と比べれば、圧倒的に少ないのである。
じつは、セレナ、ヴォクシー&ノア、ステップワゴンのハイブリッドモデル同士を走らせ、走りの質感、フットワーク、エンジンのスムースさ、快適性などを比較すると、ステップワゴンは負けていないどころか、多くの部分でリードしているにもかかわらず、なのだ。
ステップワゴンが苦戦している最大の理由は、エンジンのダウンサイジングにあると思える。初代は2リッター、2~3代目が2リッターと2.4リッター、4代目も2リッターを用意していたものの、現行型の5代目でガソリン車が1.5リッターターボ、ハイブリッドのみ2リッターというエンジンの排気量になったのである。価格的に魅力なのは、もちろんガソリン車。標準車の「G-Honda SENSING」と「SPADA HYBRID G- Honda SENSING」では約69万円もの価格差がある。
1.5リッターターボのガソリン車でも十分よく走り、高速道路、山道を含め、動力性能も十二分。それでも敬遠されるのは、そもそも大柄で多人数乗車できるボックス型ミニバンに1.5リッターで大丈夫なのかっ! という心配が先にたつからと推測できるのだ。
しかも、である。マイルドハイブリッドのセレナや、フルハイブリッドのヴォクシー&ノアでは標準車、エアロ系モデルの両方で2リッターのハイブリッドモデルが選べるのに対して、ステップワゴンで2リッターのハイブリッドが選べるのはエアロ系モデルのスパーダのみに限定されるシリーズ展開も痛い。
さらに言えば、現場の声を聞くと、どうやら5代目ステップワゴンの大きな特徴、使い勝手の良さのポイントとなる、第5のドア、わくわくゲート(テールゲート)の横開きサブドアによる、左右非対称かつリヤバンパーレスのリヤデザインが、女性、奥さまに不評のようなのだ。
実際に乗って使ってみると良さがわかる
ところが、実際にサブドアを使ってみると、駐車時、車体後方にスペースがなく、ヴォクシー&ノアではテールゲートを大きくガバッと開けるのに1m程度のスペースを必要とする場面でも、ステップワゴンの3段階に開くサブドアなら、最小400mm、中間で640mm、全開にしても760mmのスペースがあれば開けられ、荷物を出し入れでき、なんと人や犬も乗り降りできるのだから、超便利なんですけどね……。
忘れてはいけないのは、ダウンサイジングターボはVWやメルセデスベンツ、ボルボなどでも行っている時代の流れ。VWゴルフの1.4リッターターボなど、トルク、加速力は下手な2リッターモデルより上だったりするほどなのだ。加えて、ステップワゴンの場合、1.5リッターターボを選べば、排気量で変わる自動車税も安くなる理屈(ステップワゴンの1.5リッターは1496ccなので3万4500円。2リッターモデルは1993ccで3万9500円)。
で、5代目ステップワゴンは失敗作だったのか? の答えは、ボクとしては基本的にNO! と言いたい。確かにハイブリッドモデルの設定(標準車のHVの設定が急務)、いまや不可欠な先進装備と言えるACCが渋滞追従せず、再加速性能が穏やかすぎるなど、先進装備でたとえばセレナのプロパイロット仕様と比較すれば不満点はあるものの、ヴォクシー&ノアは現状、ACCすら付いていないのだ。
くどいようだが、1.5リッターターボ、2リッターハイブリッドともに、走れば納得。標準車の上質で爽快なドライブフィール、スパーダハイブリッドの上級感たっぷりの走行性能は、ライバルをしのいでいる。
問題はステップワゴン=1.5リッターという、エンジン排気量による「思い違い」から、そもそも選択肢に上がらないとすれば、ぜひ、日産、トヨタのショールームで試乗したあと、ホンダのショールームでステップワゴンに試乗してみてほしい。少なくとも、動力性能に不満を感じることはないはずなのである。
加えて、わくわくゲートのサブドアの、現代のクリエイティブムーバーと言える“意欲的”な使い勝手についても、体験していただきたい。室内側からバックドアを開けられ、乗降用のアシストグリップまで付いているクルマなど、世界中を見渡してもそうはないのである。
その便利さと楽しさは、子供やペットがいるファミリーにもうってつけと言っていい。左右非対称の違和感!? より、その画期的な使い勝手に着目すれば、失敗作などとは決して思えないはずである。
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