現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > パンクと無縁!? 夢の「空気なし」実現の目途は?? エアレスタイヤの課題と本気度

ここから本文です

パンクと無縁!? 夢の「空気なし」実現の目途は?? エアレスタイヤの課題と本気度

掲載 更新
パンクと無縁!? 夢の「空気なし」実現の目途は?? エアレスタイヤの課題と本気度

 2019年6月4日、ミシュランがGMと共同開発のエアレスタイヤ「アプティス・プロトタイプ」を発表し、注目が集まっています。

 乗用車用タイヤといえば、これまで空気入りのタイヤが普通で、ランフラットタイヤも、あくまで「パンクをした後も一定距離を走れる」というコンセプト。パンクそのものをゼロにできるタイヤではありません。

トヨタ新型スープラ発表!! 「スープラ復活」に込められた“初志貫徹”の狙いと意義

 パンクと無縁なタイヤの実現は長年の悲願であり、その意味でエアレスタイヤは“夢のタイヤ”なのです。

 ミシュラン以外のタイヤメーカーも、この「空気なしタイヤ」の開発に取り組んでいますが、本当に近い将来実用化できるのでしょうか? 課題と本気度を、タイヤに造詣が深い自動車評論家の斎藤聡氏に聞きました。

文:斎藤聡
写真:Michelin

なぜ「空気なし」可能? エアレスタイヤの仕組み

ミシュランとGMが共同研究を進めるエアレスタイヤの「アプティス・コンセプト」。写真のように、従来空気が充填される部分は、ゴム製の柱で繋がれており、この部分が空気の役割を果たす

 エアレスタイヤは、従来のタイヤのように空気を充填しないで走れる文字通り“エアレス”なタイヤです。

 構造は見てのとおり、ホール部と路面に接触するトレッド面を、スポークのようなゴム製(樹脂製?)の柱でつないだ構造になっています。柱のクッション部分がこれまでのタイヤの空気の役割を果たしているわけです。

 ミシュランとGMは、共同研究を進めながら、早ければ2024年にも乗用車用に「アプティス」を導入することを目標に、アプティス・プロトライプのようなエアレスタイヤの検証を行う、としています。

 これを受け2019年6月現在、シボレー ボルトEVのような車両から始めてアプティス・プロトタイプのテストを行っています。2019年後半にはボルトEVのテスト車両で実走テスト(公道テスト?)を開始する予定だそうです。

各社が鋭意開発中!! エアレスタイヤはどこまで本気なのか?

写真はアプティスプロトタイプを装着したシボレーボルトEVのテスト車。 エアレスタイヤは、どのような車への装着を念頭に置いているのか?

 もちろんエアレスタイヤの開発は、ミシュランだけでなく、ブリヂストンの「エアフリーコンセプト」や、トーヨーゴムの「ノアイア」、住友ゴムの「ジャイロブレイド」など、タイヤメーカーごとに開発が進められています。

 なぜ各メーカーがこぞってエアレスタイヤの開発を行っているのかというと、環境問題もありますが、もう1つ見逃せないのがレベル4(限定した場所でドライバーを必要としない自動運転)以上の車のタイヤのメンテナンスフリーです。

 運転にドライバーの介入を期待しないため、タイヤは空気圧の管理不良やパンクによって引き起こされる様々なトラブルをなくすことが求められています。

 また、これは可能性ですが、エアレスタイヤが考案されたことで、これまでの空気入りタイヤからドラスティックにタイヤのあり方が変わる可能性が出てきたのです。

 転がり抵抗の少ないタイヤ、トレッド面にセンサーを埋め込んで路面の状況を読み取り運転制御にフィードバック、さらには電子制御でクッション部の硬さを変化させるなんてこともできるかもしれません。様々な可能性が広がっているわけです。

 では、どのくらいタイヤメーカーは本気でエアレスタイヤに取り組んでいるのでしょうか。

 真剣ではあるけれど、それにメーカーの全手の力を注力しているわけではない、という意味で「自動車メーカ-が完全自動運転車を作ろうとしているくらい」といったところでしょうか。

 自動車メーカーやタイヤメーカーは様々な可能性を考えて先行開発や研究をしています。エアレスタイヤもその中の一つであることは間違いありません。自動車メーカーや、お役所からGOサインが出た時にすぐに対応できる準備はできていないといけないわけです。

 そんなことを考え合わせてみると、ミシュラン-GMの共同研究契約も微妙な言い回しで断言をしておらず、2024年に向けて実現できるように研究を進めるといったニュアンスがうかがい取れます。

懸念は乗り心地? エアレスタイヤの課題と使い道

路面の突起を乗り越えるアプティス・プロトタイプ。このようにショックを吸収するが、乗り心地と性能は相反するだけに実用化に向けた課題となりそうだ

 現実問題として、現在エアレスタイヤがクリアしなければならない問題が少なくなさそうです。

 乗り心地とクッション部の剛性は間違いなくトレードオフの関係にあり、乗り心地を良くするためには、柱の部分を柔軟にする必要がありますが、柔らかすぎると突起の乗り超えで柱がつぶれて大きなショックが出てしまいます。

 また、カーブでタイヤがねじれたときの操縦性にも課題がありそうです。

 タイヤの仕事が厄介なのは、縦方向に回転しながら斜めや横方向に力が加わり、相応の反発力が求められるからです。

 ミシュランがアップロードしているアプティス・プロトタイプのSNS動画を見てもほとんどカーブのシーンはありませんし、わずかにハンドルが切れた走行シーンが最後のほうに映っていますが、それを見るとホイールとトレッド面をつなぐ柱が多すぎて、トレッド面の変形が広範囲に起きています。

 この状態ではトレッド面の変形による操縦性の悪化が懸念されます。

 ユニークで新しく、とても興味深いタイヤであることは間違いありません。限られた場所を限られた走行パターンで走るためのチューニングは比較的容易にできそうなので、実用化の可能性はあると思います。

 あるいは、トヨタのi-Roadやトヨタ車体のコムス、日産のニューモビリティコンセプト、ホンダのMC-βなど超小型モビリティならば、車重が軽くタイヤの負担が小さいので、早期実用化が可能かもしれません。

 ただ、公道用として市販車に採用するにはまだしばらく時間がかかりそうな気がします。

こんな記事も読まれています

パナソニック カーバッテリー「カオスW1シリーズ」発売 アイドリングストップに耐える長寿命
パナソニック カーバッテリー「カオスW1シリーズ」発売 アイドリングストップに耐える長寿命
グーネット
ジープ「ラングラー」新型モデル発売!エントリーグレード導入&2種類の限定モデル設定
ジープ「ラングラー」新型モデル発売!エントリーグレード導入&2種類の限定モデル設定
グーネット
ランドローバー「ディフェンダー」2025年モデル受注スタート 標準装備をアップデート
ランドローバー「ディフェンダー」2025年モデル受注スタート 標準装備をアップデート
グーネット
DS4 ヒナゲシのような赤いボディカラーの特別仕様車「コクリコエディション」発売
DS4 ヒナゲシのような赤いボディカラーの特別仕様車「コクリコエディション」発売
グーネット
渋谷の空に新型ラングラーが現れた!【改良新型ジープ ラングラー アンリミテッド】
渋谷の空に新型ラングラーが現れた!【改良新型ジープ ラングラー アンリミテッド】
グーネット
フェラーリ499Pが好調キープか、FP1でワン・ツー。ランボルギーニとアルピーヌが続く/WECスパ
フェラーリ499Pが好調キープか、FP1でワン・ツー。ランボルギーニとアルピーヌが続く/WECスパ
AUTOSPORT web
不遇のイメージが色濃いR33スカイラインだが乗っていて楽しかったゾ! 所有していたからこそわかった[走り]の真実
不遇のイメージが色濃いR33スカイラインだが乗っていて楽しかったゾ! 所有していたからこそわかった[走り]の真実
ベストカーWeb
シェイクダウンは今季初出走のソルドが首位タイム。ヒョンデがトップ3独占/WRCポルトガル
シェイクダウンは今季初出走のソルドが首位タイム。ヒョンデがトップ3独占/WRCポルトガル
AUTOSPORT web
ガソリンを捨てきれない理由は[ハイブリッド車]のバッテリー寿命!? 延命術はあるのか?
ガソリンを捨てきれない理由は[ハイブリッド車]のバッテリー寿命!? 延命術はあるのか?
ベストカーWeb
ウェッズの人気ホイール「レオニス」に輝く新作登場! 繊細さの「FR」と躍動感の「MV」はトヨタ「アルヴェル」から軽自動車まで対応
ウェッズの人気ホイール「レオニス」に輝く新作登場! 繊細さの「FR」と躍動感の「MV」はトヨタ「アルヴェル」から軽自動車まで対応
Auto Messe Web
ポイントリーダーのマルティン、初日最速で予選へ。母国戦クアルタラロも奮闘10番手|フランスGPプラクティス
ポイントリーダーのマルティン、初日最速で予選へ。母国戦クアルタラロも奮闘10番手|フランスGPプラクティス
motorsport.com 日本版
新型ミニ・クーパー SEへ試乗 プレミアムでも「個性」は希釈? 本当の4代目はEVのみ
新型ミニ・クーパー SEへ試乗 プレミアムでも「個性」は希釈? 本当の4代目はEVのみ
AUTOCAR JAPAN
ニューウェイ離脱に「彼の役割は変わった」とレッドブル代表。チームは数年前から準備をしてきたと主張
ニューウェイ離脱に「彼の役割は変わった」とレッドブル代表。チームは数年前から準備をしてきたと主張
AUTOSPORT web
日産「フェアレディZ」が1-2フィニッシュ! SUPER GT第2戦富士GT500クラスは波乱の展開でした
日産「フェアレディZ」が1-2フィニッシュ! SUPER GT第2戦富士GT500クラスは波乱の展開でした
Auto Messe Web
グローバル販売は340万台超 日産、2023年度決算発表 売上アップも中国では「苦戦」続く
グローバル販売は340万台超 日産、2023年度決算発表 売上アップも中国では「苦戦」続く
AUTOCAR JAPAN
「風評は瞬く間に拡散されてしまう」ミック・シューマッハーが明かすWEC挑戦決断時の葛藤と、F1との違い
「風評は瞬く間に拡散されてしまう」ミック・シューマッハーが明かすWEC挑戦決断時の葛藤と、F1との違い
AUTOSPORT web
630万円! 最上級の「3列シートSUV」発表! パワフルな「ターボ×ディーゼル」エンジン搭載した特別な「オーバーランド仕様」発売へ!
630万円! 最上級の「3列シートSUV」発表! パワフルな「ターボ×ディーゼル」エンジン搭載した特別な「オーバーランド仕様」発売へ!
くるまのニュース
ブノワ・トレルイエの新チームから参戦するヨアン・ボナートが高速ターマック戦を連覇/ERC第2戦
ブノワ・トレルイエの新チームから参戦するヨアン・ボナートが高速ターマック戦を連覇/ERC第2戦
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村