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MaaS、CASEという得体の知れぬ幽霊に怯える必要はない

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MaaS、CASEという得体の知れぬ幽霊に怯える必要はない

自動車産業が大きく変わる。CASEやMaaSが自動車の姿を変える。世の中ではそう言われている。これらは事実だろう。しかし、CASEを構成するひとつひとつの要素や移動のシームレス化を狙うMaaSに必要な技術は突然降って湧いたものではない。「100年に一度の大変革期」は「100年の集大成」であり、技術の組み合わせ方が広がるに過ぎない。

 日本経済新聞は「自動車株からマネーが離散している」と報じた。自動車関連企業の株価は2015年を100としたときの指数で現在は96だと言う。逆にすべての世界株は130であり、自動車が投資対象から外されつつある、と。同時に「自動車メーカーの利益率は頭打ちになり有利子負債が増えている」とも報じた。

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 CASEとはコネクテッド(外部の情報ネットワークとクルマとの接続)、オートノマス(自動運転)、シェアード&サービス(カーシェアリングやライドシェア)、エレクトリフィケーション(電動化)という4つの英単語の頭文字を取った造語であり、16年にダイムラーが最初にこれを使ったようだ。つくづくドイツはこういうキャッチーな言葉の作り方が巧いと思う。日本がとっくに取り組んでいた生産現場での新機軸をインダストリー4.0とドイツが言葉にした瞬間、本家はドイツになってしまった。CASEもドイツの提案のように聞こえてしまう。

 MaaSはモビリティ・アズ・ア・サービスの略だ。「マイカー以外のすべての交通手段をシームレスにつないで一体化させることでマイカーと同等以上の価値を提供する」といった趣旨である。ASAP(アズ・スーン・アズ・ポッシブル)と同じ短縮語だが、当たり前の表現に大文字と小文字の組み合わせを与えたことで見た目のミステリアスな印象を演出している。いまのところMaaSには確固たる定義がなく解釈は拡大縮小可能だ。「さあ、みなさんも一緒にMaaSを考えましょう」というムードが一層好まれるのだろうか。「 いま、CASE対応が自動車メーカーやサプライヤーの経営を圧迫している」

 経営分析の専門家やアナリストはこう言う。たしかにトヨタも「年間1000億円をCASE対応に費やしている」と公表している。しかしトヨタの研究開発費はいまや年間1兆円を超えており、CASE対応費は約1割に過ぎない。かつて研究開発費が年間5000億円にも届かなかった時代、マークII/チェイサー/クレスタ3兄弟の新型開発投資は、工場投資を除けば500億円だった。これも約1割である。基幹モデルの開発費とCASE対策がほぼ同等なら、とりたてて経営を圧迫しているとは思えない。そのリターンを得られる時期が少々先だというだけだ。

 だれもが「リターンはある」と信じている。とくにCASEのなかでAI(人工知能)ソフトウェアやCPU、GPU、センサーなど車載ハードウェアが必要になるS(シェアリング)を除いたC/A/E3領域は、ここでビジネスを展開する自社商品のプラットフォームであり、だから「コネクテッドはいまや標準装備」「将来は自動運転が必須」といったアピールをせっせと行なってきた。同時に、米国でのUberのような例がメディアによって喧伝され、IT系企業に投資が集中している。そのぶん自動車関連企業から投資が引き剥がされ、その結果が、冒頭に紹介した「自動車株からマネーが離散している」の記事である。

 いずれ間違いなく、CAEフルセットを標準装備したクルマが販売されるだろう。まずは高額モデルから始まり、いずれ中級価格帯に降りてくる。その過程でシステム価格は徐々に下がり、カーナビの普及過程で起きた現象、「ワンセット20万円なら買っておこうか」が起きるだろう。売れれば値段はこなれてくる。

 当面、大衆車ではCAEフル装備は無理な相談だが、コネクテッド装備は5G携帯電網の整備とセットで一気に価格がこなれ、今後5年以内に当たり前の装備になる可能性が高いと私は見ている。ただし、カーナビがスマートフォンの地図アプリケーションに食われたように、車載コネクテッド装備がぬるま湯に浸かったまま成長できるとも思えない。

 一方、カーシェアとライドシェアは、MaaSの流れに乗って成長する可能性が高い。とくにクルマを所有すること自体がコスト面で難しい都市部に住む若年層には受け入れられるように思う。高齢化が進むという事実もこれを後押しするだろう。結果、自動車販売台数に少なからず影響を与えるものと思われる。

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