■相次ぐ高齢者の事故、悲しみを繰り返さないためには
近年、高齢ドライバーによる事故が増加傾向です。決して他人事ではなく今や社会問題にまで発展しています。高齢者になるほど、身体機能や判断能力は衰えていくため、ある一定の年齢に差し掛かったら、ベテランドライバーでも免許の返納が必要不可欠であることは明白でしょう。
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しかし、長きに渡って運転をしていると「自分は大丈夫」だと過信してしまい、免許を返納できないケースも多いようです。実際に、自分自身や両親が「運転免許返納」の時期に差し掛かった場合、どうすればいいのでしょうか。
2017年に内閣府が発表した「交通安全白書」内の「高齢者を取り巻く現状」によると、高齢者は加齢により動体視力や判断力が低下するなど身体機能の変化により、ハンドルやブレーキ操作に遅れが出ることがあるといった特性が見られるほか、加齢に伴う認知機能の低下も懸念されています。
警察庁の発表によると、2016年の免許更新時に認知機能検査を受けた75歳以上の高齢者約166万人のうち約5.1万人は、認知機能が低下し認知症の恐れがある第1分類と判定されていたといいます。
なお、2016年末の運転免許保有者数は約8221万人で、前年に比べ約6万人(0.1%)増加。このうち、75歳以上の免許保有者数は約513万人(75歳以上の人口の約3人に1人)となり、今後も増加する傾向です。
これらの背景を受け、警察庁や都道府県警察は高齢ドライバーの「運転免許の自主返納」に関する呼びかけをおこない、加齢による運転リスクや「自主返納制度」「運転経歴証明書」などに関する認知訴求を進めています。
また、高齢ドライバーが運転免許を更新する場合には、「高齢者講習」を受ける必要があります。これは、免許証の更新期間満了日(誕生日の1ヶ月後の日)の年齢が70歳以上、もしくは運転免許証を失効させ、失効後の再取得手続により再び免許を取得する際の年齢が70歳以上のドライバーに対して義務付けられている講習です。
受講可能な期間は法律で決まっており、免許の更新を希望する場合は更新期間満了日(誕生日の1カ月後の日)の6ヶ月前から更新期間満了日までのあいだに、指定の自動車教習所などに行かなければなりません。
また、満年齢75歳以上のドライバーの場合は、高齢者講習に加えて事前に30分間の「認知機能検査」の受講も定められています。認知機能検査とは、ドライバー自身の判断力、記憶力の状態を知るための簡易な検査です。
■両親の「自主返納」にはどんな問題が存在?
実際、両親に運転免許を自主返納してもらうにはどうしたらいいのでしょうか。体験談を紹介します。
Aさん(主婦)は、74歳の父に対し「お父さんも、この事故を起こしたドライバーみたいに小さい子どもの命を奪いたい?」といい、実際のニュースを見せたそうです。
はじめは「俺は運転には自信がある、一緒にするな……」と怒っていたそうですが、「年齢を重ねることで少しずつ身体機能が衰えていってしまうことは誰しも平等である」ということを淡々と説明。
繰り返し説明することで少しずつお父さんの心境にも変化が現れたようで、最終的に「取り返しがつかないことになる前に、免許を返しに行こうと思う」と自発的に返納したといいます。
また、81歳の父に免許を返納させたBさん(会社員)の場合は、運転免許の高齢者講習で引っかかったことが一番の要因だったそうです。
ブレーキの反応が悪く、何度も試験をやり直し。思っていたより運転できないと落ち込んでいたお父さんに「一緒に返しに行こう」と励まし、クルマを手放した場合の生活の変化や公共機関の使い方について、一緒に考えました。
最終的には運転免許センターの「運転適性相談窓口」に相談。専門機関に繋がることで具体的に話が進み、無事に免許を返納することができたそうです。
政府は、高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等を搭載した、安全運転サポートをしてくれるクルマに対して「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」の愛称をつけ、官民連携で普及啓発に取り組んでいます。
万が一の危険を察知した場合に、衝突被害軽減ブレーキを作動させるほか、ペダルを踏み間違えた時に加速を抑制してくれるため、重大な事故を事前に防ぐことも可能です。
免許の返納に成功しても認知症などの影響で「免許がなくても勝手に乗ってしまう」という事態が起こり得る以上、家庭で所有するクルマについても、今一度考えてみる必要があるのかもしれません。
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