■小型軽量! 世界最高峰レースも制したロータリーエンジンのこれから
国内の自動車メーカーのなかでも、固有のファンを多く持つことで知られているマツダとスバル。この2メーカーに共通することとして、他メーカーがほとんど作らないエンジン「ロータリーエンジン」(マツダ)と、「水平対向エンジン」(スバル)を持つことが挙げられます。
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マツダは、長年「ロータリーエンジン」という独自の機構を持つエンジンを研究・開発していることで知られています。
1967年には量産車として世界で初めてのロータリーエンジンを「コスモスポーツ」に搭載して以降、「ユーノスコスモ」や「サバンナRX-7」など、さまざまなクルマに搭載しました。ル・マン24時間レースを初めて制した日本車「787B」にも、レース仕様のロータリーエンジンが搭載されています。
ロータリーエンジンの特徴は、駆動力を生み出す機構の違いにあります。
一般的なエンジンがピストンの往復運動で回転力を生み出しているのに対して、ロータリーエンジンは「ローター」と呼ばれるおにぎり型の部品が「ハウリング」というひょうたん型の枠のなかを回転することで駆動します。一般的な直列エンジンに比べて小型でかつ軽量です。
ロータリーエンジンの搭載車種はスポーツカーに絞り込まれた時期を経て、2012年に「RX-8」が生産終了したことで販売を一旦終了しました。
しかし、マツダは現在もロータリーエンジンの研究を継続していて、2015年には次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R」を搭載したコンセプトカー「RX-VISION」を公開しています。
マツダは現在販売されているモデルには搭載していないのに、なぜロータリーエンジンの研究を継続しているのでしょうか。マツダは次のように説明しています。
「小型・軽量でありながら高出力、かつ静粛性の高いロータリーエンジンのメリットは、電気自動車の分野においても最大限に発揮できると考えています。
2013年11月に発表した試作車『デミオEV』は、トランクスペース下にロータリーエンジンによる小型発電機(レンジエクステンダー)を搭載することで、400kmの航続距離を達成できる可能性を持っています。
新世代のロータリーエンジンは、優れた動力性能と環境性能を両立できる高いポテンシャルを持ったエンジンとして活用するため、開発をすすめています」
※ ※ ※
マツダが一例として挙げている小型発電機を用いた試作車は、ロータリーエンジンを発電に用いて、その電気でモーターを駆動させるというシステムです。マツダはこのシステムを用いたクルマを2020年に発売する予定であるとしています。
ロータリーエンジンにこだわりを持ち続けている理由は、これから新たな方法で活用することを模索しているからなのです。
近い将来、新しく直列6気筒エンジンを投入する可能性があるマツダは、これまでの功労者であるロータリーエンジンも再投入したいという考えです。
■水平対向エンジンを組み合わせた電動化の鍵はトヨタ?
同様に、独自のエンジンにこだわり続けるメーカーとしてスバルが挙げられます。スバルが生産しているのは「水平対向エンジン」です。
水平対向エンジンの特徴は、一般的な直列エンジンでは垂直に設置されているピストンが、水平に寝かされて左右に配置されていることです。
ピストン部分の動きがボクサーの打ち合いに見えることから、ボクサーエンジンとも呼ばれます。
現在、スバル以外で4輪車に水平対向エンジンを搭載しているメーカーは、ドイツのポルシェのみです(例外としてスバルとトヨタの共同開発車『86』が存在)。
1966年に発売された「スバル1000」に搭載されて以降、スバルは水平対向エンジンの開発・生産をおこなっています。かつては直列エンジンのクルマも生産していたものの、現在スバルが自社生産しているモデルはすべて水平対向エンジン車です。
スバルはなぜ水平対向エンジンの開発を続けるのでしょうか。スバルはこう説明します。
「水平対向エンジンは、スバルが考える理想のパワーユニットです。水平かつ左右対称に配置されたピストンが、互いの慣性力を打ち消し合うことで、振動の少ないスムーズなエンジンフィールを提供します。
また、スバル独自の4輪駆動システムとして『シンメトリカルAWD』がありますが、このシステムの特徴は水平対向エンジンを含めたパワートレーン全体が、エンジンと同じく左右対称に、かつ一直線上でレイアウトされているということです。
このレイアウトは4輪にバランスよく荷重がかかるため、タイヤの接地性をしっかりと確保できます。
水平対向エンジンと、それを核としたシンメトリカルAWDは、『どんな道や環境でも、乗る人すべてが変わらない安心と愉しさを感じられる』というスバルの理想を叶える、独創的かつ合理的なコアテクノロジーなのです」
※ ※ ※
さまざまなメーカーがクルマの電動化を推し進めているなか、スバルは水平対向エンジンというアイデンティティを守りながらどのように対応していくのでしょうか。
その答えのひとつとして、同社の「XV」や「フォレスター」に搭載されている「e-BOXER」があります。これは、モーターをシンメトリカルAWDに統合したマイルドハイブリッドシステムで、クルマのレイアウトの良さをいかしつつ、加速時にモーターアシストがおこなわれることが特徴です。
また、アメリカで発表された「クロストレック(日本名:XV)」のハイブリッドモデルは、クルマへ直接充電できる「PHEV」タイプとなっていますが、ハイブリッドシステムはトヨタの技術を応用しています。
ここから、今後の電動化の道筋についてスバルが独自の戦略を持っていることがうかがえます。
マツダとスバルの両社には、独自ノウハウを継承しつつ時代にあわせたモデルの開発を継続していくことが望まれるところです。
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