2009年。S1000RRの登場は衝撃だった。
それはわれわれ一般ライダーはもちろんのこと、まさか同じ土俵で戦うとは思っていなかったであろう日本メーカーにとっても同様であっただろうことは想像に難くない。しかも登場したマシンはBMWらしい独自の構造を持っているわけではなく、非常にオーソドックスな構成。アルミフレームに並列4気筒エンジンを搭載し、サスペンションも通常のテレスコピックタイプ。デザインにはオリジナリティを感じさせたものの、日本のお家芸を奪うかのようなそのいでたちにも驚かされた。
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正直、そこには賛否もあるが、BMWとしてはそんな声が上がるであろうことも想定の範囲内だったのかもしれない。
日本メーカーをギャフンと言わせるほどの完成度で見返してやろう!という思いがあったかどうかはわからないが、走行してみれば「さすが!」と思わせる完成度を誇っていたのだ。
事実、日本メーカーのSSマシン開発陣からは、打倒S1000RRという声も良く聞かれた。
過去にはレースシーンで活躍していた時期もあったBMWであるが、ここ数十年はコンペティションの現場から疎遠になっていた。S1000RRはデビューと同時に市販車による最高峰レースであるワールドスーパーバイク選手権にも参戦。数多くの勝利を収めつつも、残念ながら数年でワークス参戦は取りやめ、チャンピオンを獲得することもかなわなかったのであるが、ストック状態でのポテンシャルの高さは誰もが認めるところでもあった。
また、数々の電子制御の搭載はBMWらしいところでもあった。ただ速く走るだけでなく、クルーズコントロールやグリップヒーター等の装備を備え、BMWらしいライダーに寄り添うマシンとなっていたのだ。
さてこのS1000RRというバイクは数回のモデルチェンジを行なったものの、基本的な骨格は大きく変えずに熟成してきたモデルだ。累計で8万台以上のセールスを記録し、今回が待望の初フルモデルチェンジとなる。
エンジンはミッション以外すべて刷新。クランクは1.6kgも軽量化され、しかもモトGPマシンの多くが採用する逆回転仕様としている。また、可変バルブ機構、シフトカムを採用することで、低回転域では低速用カム、高回転では高速用カムに切り替わり、より高い燃焼効率を実現している。そして車体も同様にオールニューとなり、デザインも含め、従来型とは全く違うマシンに生まれ変わっている。
テストはポルトガル・エストリルサーキットにて行なわれた。
生憎の空模様。ウェットパッチの残るピットロードを走り始めた瞬間に、その大トルクのエンジン特性に笑みがこぼれる。
もともとがワイドなトルクバンドを持つマシンであったが、シフトカムの採用でよりトルキーかつ躍動感のある、楽しめる低速域を確保していたのだ。
そして、同時に恐ろしく軽快である。
テスト車はカーボンホイールを装着するM仕様であったこともその印象を後押ししているだろう。従来型は安定感が高く、そこからもたらされる安心感がBMWらしさを感じさせていたのであるが、新型の印象は全く異なる。とにかく軽快で、何でも出来てしまいそうな運動性を備えている。
なんとかドライ部分の残っていた1本目の走行を終えると、本格的な雨が降り出してきた。2本目からは完全なるウェットとなり、装着されるタイヤもレインタイヤに。初めて走るサーキットにウェット路面と、207馬力のマシンを扱うのには適した状況とはいえないものの、マシンのフィードバック性能がすこぶる高く、不安感をすぐに取り除いてくれる。車体剛性がよりしなやかな方向になり、また新たに採用されたリアサスペンションの取り付け方法による動きの良さも見逃せない。トラクション性能が、マシンのコントロール性の良さにもつながっている。
電子制御もアップグレードされ、アクセルに対する反応、トラクションコントロールやABS、セミアクティブサスペンションにオートシフター等、より自然で違和感のない作動性となっていることも注目すべきところだ。
207馬力というとてつもないパワーばかりが注目されがちなマシンであるが、その本領は単純なる速さではない。
エキスパートだけが楽しめるマシンとはなっていないことが、S1000RRの価値をより高めているのだ。
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