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高齢ドライバー事故を防ぐ「サポカー」の比較が専門家でも難しい理由とは

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高齢ドライバー事故を防ぐ「サポカー」の比較が専門家でも難しい理由とは

■サポカーの性能比較は難しい

 最近、筆者(桃田健史)は「どの『サポカー』が一番安全なのですか」という質問をよく受けます。高齢ドライバーの事故がテレビやネットで大きく報道されることが増えていることから、世間から「サポカー」に対する期待が高まっているのです。

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 しかし、クルマにまつわる報道に従事する者としてどのような答えをするべきか、正直なところ、とても悩みます。その理由は多方面に関係するため、順を追ってご説明しましょう。

 まずは、サポカーに対する解釈について触れます。

 サポカーは「安全運転サポートカー」の略称で、個別のクルマを指す言葉ではなく、一定以上の安全装備を持つクルマの総称です。誕生したのは2017年と、まだ始まったばかりの取り組みといえます。

 特徴は、政策をまとめたのが「経済産業省」の「製造産業局 自動車課」だということです。

 経済産業省は、経済を中心とする領域を所管する行政機関ですが、通常、クルマの性能に関する制度や法律を担当するのは「国土交通省」の「自動車局」になります。また、交通や免許などに関しては「警察庁」の所管です。

 サポカーは、国土交通省と警察庁が経済産業省と連携して進めている取り組みなのですが、今回主体となって取りまとめをしたのが経済産業省なのです。

 つまり、サポカーはクルマの新しい規定ではなく、あくまでもサポカーは「安全運転をサポートするクルマ」という“概念”ということがいえます。

 こうした概念について自動車メーカーはこれまで、各社それぞれのクルマ作りの考え方に基づいて、開発や実験、そして商品の広報活動をしてきました。たとえば、スバルの「ぶつからないクルマ」、また日産の「自動運転技術を使った○○」という表現です。

 そして「自動ブレーキ」という表現についても、明確な定義がないまま販売されてきたのが、自動車業界の実態でした。

 こうした自動車メーカー各社の商業活動に対して、業界団体である「日本自動車工業会」と、ビジネス領域を所管する経済産業省が話し合いを持ち、業界内で安全運転を支援する機能についての意思統一を行うべきだ、という判断に至ったのです。

 ちなみにサポカーはあくまでも、日本でのみ用いられている概念であり、現時点では海外で用いられていません。

■複雑に分けられているサポカーの区分

 こうして誕生したサポカーですが、あくまでも概念であるため、自動車メーカー間の技術を同じテーブルで比較することが難しいといえます。  そのうえで、サポカーの技術について説明したいと思います。

 サポカーに含まれる技術で、最も重要度が高いのが「衝突被害軽減ブレーキ」です。一般的には「自動ブレーキ」と呼ばれるものです。

 仕組みとしては、クルマに搭載されているカメラやレーザー、レーダーなどのセンサーが、進行方向にあるクルマや壁、建物、そして歩行者やクルマなどを検知して、音や光などでドライバーに対する注意喚起を行います。それでもドライバーがブレーキを踏まない場合に、自動的でブレーキが作動するという流れです。

 ただし、衝突を確実に回避できる保証はありません。あくまでも、衝突の被害を軽減するための仕組みです。

 とはいっても、自動ブレーキについて一定の性能があることを消費者に対して説明することは、国の責務です。そのため、クルマの技術についての法整備を行う国土交通省では、2018年3月に衝突被害軽減ブレーキが一定の性能を持っていることを国が認定する制度を作りました。

 それによると、大きく3つの評価基準があります。

 その1:静止している前方のクルマに時速50キロで接近した際に、衝突被害軽減ブレーキが作動して、衝突しないか、または衝突時の速度が時速20キロ以内になること

 その2:時速20キロで同一方向に走行する前方のクルマに対して、時速50キロで接近した際に、衝突被害軽減ブレーキによって衝突しないこと。

 その3:上記「その1」および「その2」で、遅くとも衝突被害軽減ブレーキが作動する0.8秒前までに、ドライバーに対する警報が作動すること。

 以上の3点をご覧いただいてもお気づきの通り、性能として“かなりの幅”があります。

 国土交通省は、どのメーカーのどの車種をいつ認定しているかについて2019年4月に公表しました。ただし、車種ごとの詳しい試験結果は公表していません。

 またサポカーでは、衝突被害軽減ブレーキに加えて、アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置技術を付加した車種を「サポカーS」に認定しています。さらに、車線逸脱防止装置をはじめとする他の追加装備の有無などによって、「サポカーS・ワイド」「サポカーS・ベーシック+」、そして「サポカーS・ベーシック」といった別の区分けも設定されている状況です。

 国は、こうしたサポカーSにまつわる技術の評価基準について、現在のところ公表していません。

 こうしたなかで、一部の自動車技術雑誌などが、独自にサポカーやサポカーSの性能評価を行い、その結果を公表しています。

 ただし、これらの実験条件の設定方法をはじめとする公平性について、一部の自動車メーカーからは異論も出ていることから、これらの実験結果を鵜呑みにするべきではなく、あくまでも参考資料のひとつとして見るのが良いでしょう。

 このような理由から、「どのサポカーが一番安全なのか?」という問いに対しては、現時点では明確な回答をすることは難しいというのが私の見解です。

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