平成が終わろうとしている。三十余年間に登場した、強く印象に残る機構を備えていたクルマを振り返ってみる。MotorFanTECH編集長が、テクノロジーの視点で、「記憶に留めてほしい」クルマと技術を取り上げた。TEXT◎萬澤龍太(MANZAWA Ryuta)
さまざまな技術が現れては消えていく自動車の世界。平成の30年間(+α)は、とくに環境問題がクローズアップされただけに、全世界的にも急速な技術の進展が見受けられた。現代の視点からすれば効能が認めにくかったもの、登場が早すぎたもの、その後の大きな潮流の呼び水となったものなどを振り返ってみる。なお、「平成」ということで対象は日本のクルマに限っている。
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平成2(1990)年:トヨタ・エスティマのパッケージング
意欲的なパッケージングを実現したクルマ。
現代のクルマのほぼすべてを占めるフロントエンジン構造においては、車両の先端部にパワートレインを収めるスペースがどうしても必要だ。ならばボディ構造を二階建てとし、キャビンはパワートレインセルの上に載せてしまおうというのがエスティマの基本的な考え方である。
床下に収めるためには、とくにエンジンの全高を抑えなければならない。そのための専用エンジンをトヨタは当初考えて設計を進めていたのだが、排ガス規制を達成できないことで断念(なんと2ストロークサイクルエンジンだったという!)、通常の4ストロークエンジンを思い切り倒して縦置きとし、基本レイアウトをMR/発展形をAWDとした。結果、4750mmの全長に対して室内長2810mmという、途方もないパッケージを実現している。翌91年に登場したクラウンが4810/1975mmであることから考えても、いかにエスティマが優れたレイアウトを持っているかがわかるだろう。
効率とコストを追求するモジュラー設計が一般的となった現在では実現が難しそうな、非常に贅沢で先進的、意欲的なクルマであった。
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