■ドアミラー、セルフガソリンなど、なんでも後追い
自動車に関するさまざまなことが、まずは海外で始まって、そこから日本に伝わってくることが多いのです。いまでは「当たり前」のドアミラーやセルフ式ガソリンスタンドなどあらゆるものを後追いしています。なぜ、日本はなんでも海外の後追いなのでしょうか。
なぜタクシーは新型でも「フェンダーミラー」? ドアミラーに変えない理由
1980年初頭に、いきなりドアミラーが解禁となり、それまで主流だったフェンダーミラーはタクシーなど一部商用車を除いて廃止。当時、ドアミラーは欧州、アメリカ、さらには中国返還前の香港などで日本に先行して使われていました。
また、セルフ式ガソリンスタンドも同様に後追いスタイル。2000年代に入り、日本で一気に普及し、アメリカでは当たり前になっていたビジネスモデルです。
日本でセルフ式ガソリンスタンドが導入され始めた当時、「女性は手がガソリン臭くなるので利用を敬遠するなど、日本人には不向きであまり流行らないのでは?」という声もあったと記憶していますが、そんな心配をよそに現在は全国でセルフ式が普及しています。
このほか、最近ではデイライトや連続して点滅するシーケンシャルウインカーなど、メルセデス・ベンツやBMWでの採用が先行し日本の高級車やミニバンも追従しているのです。
日本は、中国・アメリカに次ぐ、世界第三位の自動車大国であり、トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、三菱、スバル、ダイハツと大手乗用車メーカーが最新の技術研究と開発を行っているのに、自動車関連の新たなる技術やサービスで、なぜ日本が最初にならないのでしょうか。
そのカギを握るのは、国産自動車メーカーの開発背景にあります。「ジャーマン3(ダイムラー・BMW・VWグループ)、それからボッシュとコンチネンタルはいま、どうしていますか?」、自動車メーカーや自動車部品大手の技術関係者と意見交換していると、よく出るフレーズです。
悲しいことに、こうしたドイツ至上主義を観察するような日系自動車産業の姿勢は、いまも昔もあまり変りません。自動車が導入する新しい技術について、世界的に最も強い意見を持つのが、ドイツ。数十年前なら、エアバック、ABS(アンチ・ロック・ブレーキ)、そして車載データ通信システムもCAN(コントローラー・エリア・ネットワーク)など。
最近では、自動運転に関わる各種の技術要因で、ドイツ大手各社の発言力は極めて大きいと感じます。こうした声は、EU(欧州共同体)におけるEC(欧州委員会)でも同じ。欧州内で最も大きな産業は、ドイツの自動車産業に他ならないからです。
また近年、日本では自動ブレーキの機能が強化され、軽自動車でも標準装備されるようになりましたが、その裏にも欧州の影響力、つまりはドイツの影響が強くあります。ユーロNCAP(ニュー・カー・アセスメント・プログラム)という消費者向けの安全評価について、歩行者保護、さらには夜間の歩行者保護がテスト項目に加わりました。
それを受けて、日本でのJNCAPでも夜間の歩行者保護への対応が始まったため、トヨタをはじめとして日系自動車メーカー各社は昨年から、高度な運転支援システム(ADAS)で新たな量産計画を発表しています。
■アメリカと欧州は深く連携
技術面でのドイツ至上主義と上手に連携しているのが、アメリカです。NCAPなど衝突安全基準については、アメリカは各種の消費者向け指標がありますが、ドイツメーカーとしてはドル箱であるアメリカに対して、欧米での各種基準のすり合わせを行い、欧米が『WIN-WIN』になるような体制を作っています。
その象徴的な存在が、EV(電気自動車)の急速充電器の標準化です。欧米メーカーは、コンポコネクターと呼ぶシステムの世界標準化を主張。日本が進めるチャデモ式に対して、極めて強く否定し続けている。その中心にいるのが、ジャーマン3なのです。
ジャーマン3としては、「日本はこれまでさんざんドイツ至上主義を容認してきたのだから、EVについてもこちらの言うことを日本が聞くのが当然だ!」という姿勢をまったく崩しません。
そうしたなか、2018年8月後半には中国が日本のチャデモを活用することで大筋合意しました。しかし、ジャーマン3と米GM(ゼネラルモーターズ)と中国政府は長年に渡り強い絆があり、そう簡単に中国が一斉にチャデモ化するとは考えにくい状況です。
また、自動運転において、日本は国連の欧州委員会に属する各種のワーキングチームで結成される、道路交通法や技術要件での自動運転の国際標準化の議論に加わっています。しかし、議論の主役はドイツであり、アメリカや中国とのすり合わせを行うのが国連の役目、という印象があります。
日本が自動車関連で追従するのは、ジャーマン3など自動車メーカーに限りません。EVや自動運転に加えて、通信によるコネクテッドカーや、ライドシェアなどのシェアリングサービスの領域で、最近話題のGAFA(ガファ)に対する後追いが目立っているのです。
GAFAとは、グーグル、アップル、フェイスブック、そしてアマゾンという米IT大手4社を指します。SNSやEC(電子商取引)が、これからの自動車産業で大きなカギとなることは間違いありません。
当然、決済についてもGAFAは自動車産業に深く関与してくると予想できます。外圧に弱い日本。こうした状況は、まだまだ当分続きそうです。 【了】
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