こちらをお読みの多くの方はいわゆるバブルの頃、高校生か大学生ぐらいだっただろうか。その当時憧れていた、だが入手することなどまるで叶わなかった名作輸入車を大人になった今手に入れ、そして愛でるのは、なかなか風流な趣味といえるだろう。
そういった観点から筆者はこのコーナーにて往時のBMW 3シリーズ(六本木のカローラと呼ばれたアレだ)や、マニアはW124と呼ぶ80年代後半からのメルセデス・ベンツEクラスなどを紹介してきた。
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しかし今、とある名作輸入車のご紹介をすっかり失念するというミスを犯していたことを思い出した。
サーブ900である。
言い訳になってしまうが、筆者がその紹介を失念していたのもある意味無理はない。なぜならば、サーブというブランドはその後、事実上「消滅」してしまったからだ。
ここで言うサーブ900は、スウェーデンの航空機メーカー「SAAB」の自動車部門であったサーブ・スカニアが、1978年から1993年まで製造販売していたモデルだ。
クルマにお詳しくない人は、「往年のサーブ900」と言われてもパッとビジュアルが浮かばないかもしれない。
だが、いかにも航空機メーカー傘下らしいキャノピー(航空機のコクピットを覆う透明な円蓋)を思わせる湾曲したフロンドウインドウや、「絶妙な尻下がり」が魅力となる斜め後ろからの画像などを見れば、「ああ、アレですか!」と、約30年前の記憶が即座に蘇るはずだ。
それほど、約30年前のサーブ900は輝いていた。いや、正確には「異彩を放っていた」というニュアンスだろうか。
前述のキャノピー的フロントウインドウや尻下がりのフォルムは言うに及ばず、運転席のインストゥルメンタルパネルの作りもまた航空機ライク。自動車とともに空への憧れも抱きがちだった往時の男子高校生や大学生は、それを自動車雑誌(というのも今や懐かしい単語だが)で眺めながら「うぐぐ……」と、憧憬をつのらせたものだ。
搭載エンジンは2リッター直列4気筒DOHCの自然吸気またはそのターボチャージャー付き。特に「ターボ16S」に搭載されたターボエンジンは、今にして思えば最高出力160psとかわいいスペックなのだが、当時はそのドッカンターボぶりが好評というか伝説となった。そしてその結果、多くの(というか一部の)若い男子が「いつかはサーブ900ターボ16S……」と心に誓ったのだ。
ちなみに「ドッカンターボ」というのは、低回転域からターボチャージャーが作動する現代の模範的ターボエンジンと違い、中回転域あたりから唐突にビッグトルクが炸裂する古典ターボエンジンの様子を指す総称である。
そんなサーブ900は1993年に2代目へとフルモデルチェンジされた。これは、スウェーデンの独立メーカーだったサーブが1990年に米国GM傘下となったことを受けてのモデルチェンジだった。これ以降、サーブ900あるいはその後の9-3は、GM系の車台等を共用することになる。
つまり、その後も細かなデザインこそある程度継承されたが、本質の部分ではやや無国籍風というか、「汎用多国籍車」とでも呼びたいニュアンスのクルマに変わってしまったのだ。北欧の航空機メーカーを源流とする自動車ならではの「異彩」が減じてしまった──ということだ。
そのせいかどうかはさておき、サーブ・オートモービル社製乗用車の人気はその後低迷。親会社であるGMの経営破綻や、オランダ系企業あるいは中国系企業へのブランド譲渡等々の大混迷を経て、結局のところ自動車における「サーブ」という名称は2016年に、ほぼ完全に消滅した。
だがその中古車は、今なおマーケットで流通している。
約30年前のニッポンで得も言われぬ異彩を放ちまくっていた「クラシック900」は、今なおフツーに購入できるのだ。
しかし問題は「フツーに購入できるのはいいとして、フツーに維持できるのかよ?」という話であろう。
これについても、実は致命的な問題は生じていない。
いやもちろん、新車のプリウスやアルファードあたりを近所のディーラーで買うことと比べるなら、クラシック900の購入と維持は茨の道だ。明確な定量化は難しいが、おそらく新車のアルファードと比べて20倍は大変だろう。
だが、歴代の好事家が大切に保管してきた個体は日本中に(少数だが)確実に存在しており、「蛇の道は蛇」的な専門ファクトリーも、これまた少数ではあるが国内に点在している。さらには修理に必要な部品類も、ワールドワイドで見ればそれなりに流通しているのだ。
つまり「消滅したブランドの自動車ではある。だがその維持は、その気になりさえすれば決して不可能ではない」ということだ。
それゆえ真の問題は、あなたに「その気」があるかどうかという一点に絞られる。
こればっかりは人それぞれの美意識や人生観に基づき判断するほかない問題ゆえ、筆者から言うべきことは何もない。だが……もしも参考までに申し上げるなら、筆者は以下のように考えている。
素性よろしきクラシック900(の、できればターボ)を手に入れ、ボディを艶やかに磨き上げ、そして機関部分や足回りなどにも「蛇の道」にて完璧なメンテナンスを施したうえで屋根付きの車庫に保管する。そして衣服のおしゃれにも気を使ったうえで乗り込み、必要に応じて乗りまわす──というのは、ほかの車種ではなかなか真似できない、最上級にしゃれた自動車ライフのひとつであるはず。
もしも「なるほど」と少しでもお感じいただけたならば、全国に点在するクラシック900の現存販売車両の姿を、インターネット等を通じてまずはご確認いただきたい。
そこで心が動いたならば、次のアクションを模索してみる価値はある。
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