三菱自動車の新型デリカD:5は、正式販売前から“電気シェーバー”といったニックネームが付けられるほど、ルックスにインパクトがあるミニバンだ。今回、北海道千歳市郊外にある「新千歳モーターランド」の特設氷雪コースでデリカD:5の走破性能を体験すると、外観だけでなく、中身も唯一無二のミニバンであるのがよくわかった。
試乗コースは、パッと見て「こりゃミニバンには無理でしょう」と、思えるほどタフだった。すり鉢状の急坂の登り下りや、コブの斜面にビビる試乗会参加者にレクチャーするのは、パジェロでパリ-ダカール・ラリーを2度制した伝説のドライバー、増岡浩さんだ。
デザインに驚き、悪路でびっくり! 衝撃続きの1台──三菱新型デリカD:5試乗記
増岡さんは「ほとんどの場所は、トルクを自動で4輪に配分する走行モード『4WDオート』で行けるはずです。もし、滑って進まないようなら強力なトラクションが得られる『4WDロック』を選んでください」と説明のあと、増岡さん自身がハンドルを握り、すり鉢を猛烈な勢いで下り、登り、スキーのモーグル競技に出てきそうなコブの連続をクリアする。
1周の模範演技後、デリカD:5のステアリングホイールを委ねられる。すり鉢では「4WDオート」のモードを選んで、ただアクセルペダルを踏み込めばいい。2000rpmから380Nmの太いトルクを発生する2.2ℓ直列4気筒ディーゼルターボエンジンの力強さもあって、デリカD:5は急坂をぐいぐい登る。ただし誰が乗っても同じように走る走破性能の裏には、高度な4輪駆動制御技術がある。
デリカD:5の4輪駆動システムはただ前後にトルクを最適配分するだけでなく、ステアリングホイールの切れ角やヨー(クルマの旋回運動)を把握し、4輪それぞれにトルクを伝え、ブレーキをかけることで、車両の安定性を保っているのだ。
何台もの車両が通過すると、やがてすり鉢はピカピカに磨かれ、4WDオートではタイヤが空転し、進まなくなった。ここで慌ててはいけない。増岡さんのアドバイスを思い出し、「4WDロック」を選ぶ。すると、4本のタイヤがじわじわと路面をとらえるようになり、ゆっくりと斜面を登り始めた。
壁のようにも見える登り坂は、日常ではほとんど出くわさないと思えるほどの急勾配で、車輪で磨かれた雪がテカテカに光っている。そこを悠々と登るデリカD:5のステアリングホイールを握りながら、このクルマで行けないところはないのでは? と、信頼感が芽生えた。
コブ斜面では、基本的な車体設計がほかのミニバンと違うことを実感した。よく、「車高が高いから悪路を走れる」と、言ってしまうけれど、車高が高いだけで悪路は走れない。正確には最低地上高(地面から車体までの高さ)が確保されていると悪路に強いが、デリカD:5の最低地上高はなんと185mmと、SUV並みだ。
また、悪路を走れるかどうかの指標に、アプローチアングルとディパーチャーアングルもある。前者が確保されていると急な登り坂でもフロントが地面に接触しないし、後者が確保されていると急な下り坂でもリアが地面と干渉しない。
デリカD:5は、このふたつの値がSUVに近い。つまり設計の段階から悪路走行を想定しているわけで、普通のミニバンとは出自が違うのだ。だからコブの斜面でも、ボディ底部を擦ったり、亀の子状態になったりせずに進める。
4輪駆動システムと車体構造がもたらす本格的な悪路走破性能にふれたあと、デリカD:5の顔を見ると、ブラウンの電気シェーバーとおなじく、研ぎ澄ませた機能を持つ男の相棒のようにも見えてくるのであった。
急勾配の上り下りが連続するコースでデリカD:5の悪路走破性能を体感したあとは、フラットなハイスピードコースに移動する。
試乗するのは「エクリプス クロス」。4輪駆動システムの基本的な成り立ちはデリカD:5とおなじで、FF(前輪駆動)をベースとし、リアデフに設置された電子制御式カップリングが状況に応じ、後輪にも駆動力を伝える。
踏みかためられた雪道を、かなりの速度であるにもかかわらず、イメージしたラインをトレース出来る能力には目を見張る。コツ要らずで、ステアリングホイールを切ってアクセルペダルを踏むだけで、真っ白なコースに思い通りのラインを描くことができる。
ただグリップするだけでなく、思った通りに曲がるあたりが、かつて「ランサー エボリューション」でWRC(世界ラリー選手権)のテッペンを獲った、三菱の4輪駆動技術の真骨頂だろう。
まず、前出の電子制御式カップリングは、車輪が滑る状況に応じ、後輪に駆動力を伝える。これによりグリップは確保される。さらに左右車輪の駆動力をコントロールするトルクベクタリングによってコーナリング能力を獲得する。たとえば左コーナーを曲がる場面を想像してほしい。ギュッと曲がりたいとき、外輪(つまり右タイヤ)にトルクを伝えて、コーナリングを促進するのだ。
続いて曲がりすぎてしまった場合、つまりお尻が滑ってオーバーステアの状態になると、今度は内輪(つまり左タイヤ)にブレーキがかかる「ブレーキAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)」が作動。乱れそうになった姿勢を瞬時に建て直してくれるのだ。
前後と左右のトルク配分と、4輪それぞれの制動力をコントロールする三菱の4輪駆動技術レベルの高さは、次に乗った「アウトランダーPHEV」でさらに強く実感する。
アウトランダーPHEVは、前後に搭載するモーターで駆動する4WDだ。ガソリンエンジンのエクリプス クロスと何が違うのかというと、アクセル操作に対するレスポンスが違う。エンジンは回転を上げてトルクを高める必要があるけれど、モーターはピュッと電流が流れた瞬間にギュッとトルクが高まる。
反応が素早いうえに、前述した前後と左右のトルク配分がよりキメ細やかにおこなえる。これにより、雪道でのハイスピードドライビングにどのような影響を与えるのかというと、一糸乱れぬ姿勢でラインをトレースできるのだ。
エンジン搭載のエクリプス クロスも理想のラインを描いたけれど、アウトランダーPHEVと比べると、あちらは4Bぐらいの鉛筆で太いラインを描いた感じ。一方アウトランダーPHEVは、2Hぐらいの鉛筆で細く、硬質の線を引いたように走る。
戦後の「ジープ」に始まり、パリダカを制した元祖SUVの「パジェロ」、そしてWRCで無敵を誇ったランサー エボリューションなど、多くのモデルで磨いて来た4輪駆動技術。そこにEVの「i-MiEV」やPHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルのモーター制御技術が組み合わされると、いままでに経験したことのない、新しいファン・トゥ・ドライブが生まれるのであった。
試乗会後、三菱自動車の強みは4輪駆動とモーターにあると確信した。
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