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迎合ではなく「真の忠誠」を尽くす「リアルクライアント・リスペクト法」とは

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迎合ではなく「真の忠誠」を尽くす「リアルクライアント・リスペクト法」とは

前回の当欄ではクルマとまったく関係のない、ゼニの稼ぎ方というかギャランティーの上げ方、具体的には「プラスαぶっこみ法」について書いた。それによりCL CARS様からクビを宣告されるものとばかり思っていたが、どうやら首の皮一枚でつながった模様である。

ならば今回はその後編、すなわち「リアルクライアント・リスペクト法」について述べてみようと思う。これにより、いよいよクビになるのだろうが。

カーにはゼニがつきものだ。「プラスαぶっこみ法」で自身のギャラを上げよう!

その仕事の報酬の「本当の出所」はどこなのか?

さて、「リアルクライアント・リスペクト法」である。これがいったい何かといえば、そのまま文字通りだ。つまり「仕事をする際は本当の依頼主(=ゼニをくれる人)は誰なのか? ということを見極め、その人に対してのみ絶対の忠誠を尽くす」という手法である。

筆者の場合でご説明しよう。

わたくしは記名の単行本等を書き、それを読者様各位にご購入いただくことで生計を立てているタイプのライターではない。

わたくしにゼニを払ってくれているのはCLCARS編集部のような21世紀型メディア企業各位や、旧来型の出版社各位である。直接的には読者様ではなく、彼らがわたくしのクライアントなのだ。

だが「リアルクライアント」すなわち「本当の意味での依頼主」は誰なのか? ということを突き詰めて考えるなら、答えはいささか微妙となる。

直接的には「担当編集者」が私の顧客なのだが

や、表面上はメディア企業各位がフリーライターのクライアント様であり、より具体的には「担当編集者」こそがわたくしども最下層執筆業者のクライアント様であることには、いささかの疑いもない。

フリーライターの生殺与奪は、一般に担当編集者が握っているものだ。

そのライターが何をどう書こうが言おうが喚こうが、担当編集者様が「とにかくあいつには仕事を出さん」と思えばハイそれまでで、一銭のゼニも稼ぐことはできないからだ。

もちろん昨今は自前でプラットフォームを用意し(noteとか有料メルマガとか)、それを通じて稼ぐことも不可能ではない。だがもしも伝統的プラットフォームでのみ物事を考えるのであれば、わたしにとってのクライアントは「担当編集者」ということになる。

それゆえわたくしは、必要があれば担当者様にへーこらする。

「あ、ちょっとボクの靴が汚れているような気がするなあ。どうしてかなあ?」などという独り言を聞けば、「あーっ! それは気がつきませんで失礼しました!」と叫びながらすぐさまジャンピング土下座し、担当者様の靴を、我がハンケチとつばきでもってキレイに磨いて差し上げる。

そのぐらいのことは平然とできてこその、フリーランス生活14年目である。

担当者が本当に欲しているモノは「数字」

だが同時に、実はこの行動こそが合成の誤謬の芽でもあるのだ。

……や、ちょっと格好をつけました。「合成の誤謬」とか、本当は自分でもあまり意味わかってません。すみません。

要するに「良かれと思って行う担当編集者へのジャンピング土下座(および靴磨き)は、長期的には功を奏さない」ということである。つまり担当者に土下座したところでゼニは稼げないのだ。

担当者が本当に欲しているモノとは何だろうか。

ジャンピング土下座され、そして靴を磨かれること?

……それはそれで悪くない気分なのかもしれないが(知らんけど)、仕事人としての彼または彼女が真に欲しているのは、そんなことではないだろう。

真に欲しているのはズバリ「数字」だ。

その数字というのが売上なのかPVなのかUUなのか「こんばーじょんれーと」とかなのかは、業界によりそれぞれだろう。とにかく彼ら/彼女らが欲しているのは、こうである。

・自分が関与した業務がバッチリの数字を上げること。
・それにより自分が称賛されたり、あるいは給与等がアップしたりすること。
・あるいは「少なくとも上席から怒られなかった」という事実。

土下座&靴磨きよりもコレなのだ。わたくしども外注労働者はコレを、彼または彼女に提供する義務がある。いや義務はないのかもしれないが、提供したほうがゼニは稼げる。

そして数字はエンドユーザーが作る

では、そういった「数字」を作るのは、そもそもいったい誰なのか?

……言うまでもなかろう。筆者の業界でいえば「読者様」であり、それぞれの業界でいえば、それぞれのエンドユーザー様各位である。そういった意味で、わたくしが真に仕えるべき対象は革靴をはいた担当編集者様や編集長様ではない。今これをお読みの「あなた様」なのだ。

といっても、わたくしは離れた場所にいるあなた様の目の前でジャンピング土下座はできないし、靴をハンケチで磨いて差し上げることもできない。というか、そんなことはそもそもお望みでもなかろう。

読者様やエンドユーザー様がお望みなのは、ただ一点。

「その製品(わたしの場合でいえば原稿)が、どれだけオレ(またはワタシ)の役に立ったか」である。

「役に立つ」といってもいろいろあるので、この場合のそれは、

・実益になった
・笑えた
・泣けた
・暇つぶしになった

等々、別にどんな形でもよい。とにかく、それぞれのケースにおける最適な形で「あー、満足した!」とユーザー様に思ってもらえれば、それでいいのだ。勝ちなのだ。

迎合ではなく「真の忠誠」を尽くす

とはいえへーこらしてエンドユーザー様に迎合する必要はなく、迎合はむしろ逆効果となりかねない。

ライターに限らず、何かの作り手がやるべきことはエンドユーザー様の感覚に迎合することでは決してない。

常にエンドユーザー様の真の利益とは何か? を考え、ときにはエンドユーザー様の利益と相反することも多い広告主様の意向を積極的にシカトし、ボンクラな担当編集者とかのボンクラなオーダー内容に対して「そうじゃねえだろバカ!」ということをオブラートに包んで伝え、成果物の質をなるべく高めること。

それこそが、リアルクライアント様へ「忠誠を尽くす」ということの意味と内容なのだと、わたくしは思う。

それができてさえいれば、表面上のクライアントである担当編集者の靴を磨く必要などなく、むしろ向こうから当方の靴を磨きに来るものなのだ。

ただしサブクライアントも大切に……

以上の信念をもとに昨日、自分は所用があってCL CARS編集部に赴き、編集長と面会した。

だが彼は日頃から原稿納品が遅れ気味のわたくしを叱責し、「こんな調子では困るんですよねぇ」と言った。

……今こそ「リアルクライアント・リスペクト法」発動の好機と見たわたしは、彼に言った。

「ふざけるな。オレの本当の意味でのクライアントはキミではなく、全国一千万の読者様なのだ。そんなキミがボクに文句を言うなど、少なく見積もって百億年は早い。物の道理を学んで出直してきたまえ!」

当然ながらわたくしは怒り心頭に発した編集部一同から袋叩きにされ、ビル7階から突き落とされ、絶命した。

そして三途の川を渡りながら、手元のメモ帳に以下のとおり書き記した。

「リアルクライアント・リスペクト法に関する補足。リアルクライアント(読者)をリスペクトすると同時に、サブクライアント(直接の発注者)の面子も立てないと、この手法はすぐに詰むので要注意」

[ライター/伊達軍曹]

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