1868ccの空冷V型2気筒エンジンが硬質なメカニカルノイズを伴い「ダカダン、ダカダン」とアイドリングしている。そのゆったりとした3拍子が歯切れのいい連続音に移り変わり、スロットルレスポンスがひと際鋭くなるのは3000rpmを過ぎてからだ。
エンジンはラバーの類を介さず、フレームに直付けされているため振動をダイレクトに伝えてくるものの、だからこそ自分でそれを操っている感覚に溢れている。爆発のひとつひとつがリヤタイヤに伝わり、路面を蹴り飛ばす様がつぶさに分かるからだ。
‘70年代の雰囲気を漂わせるレトロでクールなハーレー!──ハーレー・ダビッドソン フォーティーエイト・スペシャル試乗記
パワー、トルク、トラクション、サウンド……その高まりを常識的なスピードレンジのなかで堪能できるところがハーレーダビッドソンの魅力であり、もちろん最新モデルの「FXDR114」にも引き継がれている。
ただし、スタイリングやハンドリングはほかのモデルと比較すると抜きん出てアグレッシブ、あるいはスポーティだ。とくに強調されているのがロー&ロングなシルエットで、1735mmのホイールベースは33機種ラインナップされているハーレーの2019年モデルなかで、もっとも長く、かつ重心位置も低い。地面に這うようなディメンジョンを実現するため、フロントフォークは大きく寝かせられ、車体前方に放り投げられたかのような場所にフロントタイヤが位置しているのが特徴だ。
華奢な印象が漂うフロントまわりに対し、リヤまわりは力強さがみなぎっている。その象徴が240mmもの幅を誇る超ファットタイヤだ。必要最低限のスペースしか持たないシートカウルとギリギリのクリアランスで装着されたナンバープレートによってタイヤの存在感が引き立てられ、ドラッグマシンさながらの獰猛さが与えられているのである。
720mmの低いシートに座り、ライディングポジションを整えると、ほかのハーレーとの違いにまた驚く。車体にどっかりと腰を降ろし、上体をリラックスさせながら悠々とクルージングを楽しむのがハーレーダビッドソンのイメージとすれば、FXDR114は真逆だ。
大きな要因は、ハンドルとフットペダルがシートから離れた位置に備えられているからだ。もしライダーの体格が日本人男性の平均に満たない場合、乗車時に手と足をグッと前に伸ばさざるを得ず、車体にしがみつくような姿勢を強いられる。FXDR114は、すべてのライダーに対し、寛容なわけではない。
とはいえ、ポジションさえ問題にならなければ、FXDR114は従順に振る舞ってくれる。ドラッグマシン的な、つまり直線ありきのイメージとは裏腹に、コーナリングを得意とする。コンパクトに“クルリ”と向きを変えるタイプではないものの、試乗中、長大なホイールベースがもたらす鈍重さを感じる場面はなかった。ハーレーダビッドソン自身、異例にも右バンク時32.6°/左バンク時32.8°のリーンアングルを公表するなど、スポーツ性の高さを積極的に謳っている。
実際、FXDR114の真骨頂は街中でも高速道路でもなく、ワインディングで引き出せるように味つけされている。コーナーが迫ってきたら、まずはブレーキングによってフロントに荷重を移行。フロントフォークが充分ストロークしたら、それを逃がさないようハンドルに体重を掛け、同時に上半身を軽くイン側へ引き込みながら車体をバンクさせていく……こういったスポーツライディングの基本を、決して急かさない穏やかなリズムでライダーに示してくれるのだ。
FXDR114が搭載するエンジンは、2000rpm付近までならまろやかに、3500rpm以上では軽やかに吹け上がっていく新世代ユニット「ミルウォーキーエイト」だ。いずれの領域を選んでもリニアに反応し、暴力的なフィーリングは皆無である。車体を右へ、左へバンクさせ、Gとのバランスを図るというライディングの歓びにひたすら没頭できるのは、1868ccもの排気量を誇るエンジンが見事に躾られているからだ。
高剛性な倒立式フロントフォークも、適切な荷重を実現するためのセパレートハンドルも、タイヤの接地感が把握しやすいアルミスイングアームもすべてはコーナリングのためと言ってもよく、FXDR114は積極的に身体を使って走らせるフィジカルなバイクである。押し出しの強いデザインに目が集まりがちであるが、本質はピュアスポーツそのもの。ハーレーダビッドソンのトラディショナルなイメージを打ち壊し、まったく新しいマーケットを開拓しようとする野心作でもあるのだ。
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