経済性に優れる車の筆頭候補といえばクリーンディーゼルとハイブリッド車。その得意分野や魅力はかなり違うものの、「燃費が良い」という部分は両車に共通した長所といえる。
ただ、その燃費に関しても「ディーゼルは高速巡行が得意で、ハイブリッドは市街地が得意」といった具合に、それぞれの得意分野があるというのが“定説”だ。
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では、実走行で比べてみた場合どうか? 本企画ではディーゼル車とハイブリッドを用意し、燃費を計測。大型セダンとコンパクトSUVによる傾向の違いもチェックした。果たして、その結果は定説通りとなるのか、それとも……。
文:永田恵一、ベストカーWeb編集部
写真:平野学
ベストカー 2019年1月26日号
マツダのディーゼルとホンダのハイブリッド 計4車でテスト
今回、テストに使用したディーゼルとハイブリッド車は、それぞれマツダ CX-3、アテンザセダンとホンダ ヴェゼルハイブリッド、アコードハイブリッド。セダンとSUV、カテゴリーとサイズも異なる計4台。
各車のスペックは以下のとおりとなっている。
【CX-3 XD Lパッケージ(4WD/6AT)】
・エンジン:1.8L直4ディーゼルターボ、最高出力/最大トルク:116ps/27.5kgm、WLTCモード燃費:19.2km/L、価格:306万2080円
【ヴェゼルハイブリッド Z・ホンダセンシング(4WD)】
・パワーユニット:1.5Lハイブリッド、最高出力/最大トルク(モーター):132ps/15.9kgm(29.5ps/16.3kgm)※システム最高出力:152ps、JC08モード燃費:21.6km/L、価格:292万6000円
【アテンザセダン XD Lパッケージ(4WD/6AT)】
・エンジン:2.2L直4ディーゼルターボ、最高出力/最大トルク:190ps/45.9kgm、WLTCモード燃費:17.8km/L、価格:419万400円
【アコードハイブリッド EX】
・パワーユニット:2Lハイブリッド、最高出力/最大トルク(モーター):145ps/17.8kgm(184ps/32.1kgm)※システム出力:215ps、JC08モード燃費:30.0km/L、価格:410万円
※マツダの2車はJC08モード燃費を、ホンダの2車は新しいWLTCモード燃費を取得していない。
では、4台を実際に走らせた燃費はどうか? 高速道路(約90km)と市街地(約32km)という異なる交通環境でテストを行った。
【編集部】
「ディーゼルは高速で優勢」は本当?
ヴェゼルハイブリッドとCX-3ディーゼルのコンパクトSUV対決は、「負荷の大きい高速道路の燃費はディーゼルが有利(高速道路といってもいろいろあるが)」とよく言われるとおり、CX-3ディーゼルが、ヴェゼルハイブリッドを20%近く上回って圧勝。
カタログ燃費に対する達成率も、ヴェゼルハイブリッドが21.6km/LのJC08モードに対して93%だったのに対し、CX-3ディーゼルは新しいWLTCモードで公表される高速道路モードの19.0km/Lの126%という素晴らしい成績だった。
この結果はディーゼルの高速走行での燃費・効率の有利さに加え、今回は4WD同士での比較だったこともあり、車重1390kgのヴェゼルに組み合わされる1.5L+1モーターハイブリッドが、動力性能を含めた効率という面でやや力不足な感が出てしまったといえる。
対照的にCX-3ディーゼルは2018年のマイナーチェンジで排気量を1.5Lから1.8Lに拡大したことで動力性能と燃費を同時に向上させており、車とパワーユニットのマッチングのよさを裏づけた。
アコードハイブリッドとアテンザディーゼルのDセグメントセダン対決は、高速道路の燃費自体は両車21.7km/Lで引き分けだった。
しかし、カタログ燃費に対する達成率に加え、アコードハイブリッドがFFなのに対してアテンザディーゼルのテスト車が4WDだった点、日本では軽油がレギュラーガソリンより20円程度安いことも含めたランニングコストを加味すると、高速道路の燃費は実質的にアテンザディーゼルがアコードハイブリッドをかなり上回っている。
【高速道路編の結論】
今回は比較的遅いペースでの高速巡航だったが、「上り坂が多い」、「強い向かい風が吹く」、「乗車人数が増えて重量が重い」、「クルマのジャンルがミニバンやSUVになった」など負荷が大きい場合であれば、この差はもっと開くことが予想され、ディーゼルのアドバンテージは一層大きくなると思われる。
市街地の燃費は意外な結果に!?
一般的にストップ&ゴーが多い市街地の燃費では「モーターでの発進やEV走行での巡航、回生制動によるバッテリーへの電気の戻しがあるハイブリッドが有利」と言われている。
だが、意外なことにコンパクトSUV対決ではカタログ燃費に対する達成率だけでなく、実燃費でもCX-3ディーゼルがヴェゼルハイブリッド4WDを上回った。
この結果は高速道路と同様に、車重が重い4WDのヴェゼルに1.5Lエンジン+1モーターハイブリッドを組み合わせるとEV走行領域が少ないなど、効率が今ひとつであるためだろう。
Dセグメントセダン対決は定説どおりアコードハイブリッドが圧勝。市街地ではシームレスな加速とエンジン音の静かさというハイブリッドの美点も光った。しかし、アテンザディーゼルも車重1670kgの4WDで12.7km/L走っており、アコードハイブリッドがよすぎるだけで、十二分な燃費と言える。
【市街地編の結論】
ディーゼルは昔とは比較にならないとはいえ、アイドリング中の振動&騒音が気になるのは事実。アイドリングストップがあるとはいえ、クーラー全開となる夏場はアイドリングストップしにくくなり、また12Vバッテリーの交換費用を気にして、アイドリングストップをオフにしたら振動&騒音から逃れられない。快適性の高いハイブリッドの勝ちだ。
【総評】
ハイブリッドとディーゼルの白黒をつけるのは、得意分野が違うため難しい。
傾向としてはセダンやハッチバックで、車重が軽く街乗りが多いであろうコンパクトカーなら「ハイブリッド」。Cセグメントならイーブン。車重が重いDセグメント以上と空気抵抗などの負荷が大きいSUVやミニバンは「ディーゼル」だろう。
実際には燃費だけでなく、マツダのディーゼル車のMT設定のようなクルマ自体の魅力や楽しさも加味して選ぶといいと思う。
【永田恵一】
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