輸入車メーカーの出展がすくないなか、「東京オートサロン」に初出展したのがストン・マーティンだ。しかも、2台の展示モデルのうち、1台は「AMR(アストン・マーティン・レーシング)」が高度にチューンナップしたV型12気筒エンジンを搭載する「DB11 AMR」だった。
アストン・マーティンのブースは、コーポレートカラーといえるブリティッシュレーシンググリーンを基調に、モータースポーツでよく使われる蛍光系のライムグリーンをあしらったのが特徴だ。展示されたDB11 AMRも、ライムグリーンのボンネット・ストライプとブレーキキャリパーがただものでないオーラを強く放っていた。
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DB11 AMRは、2018年に発表された2プラス2クーペ「DB11」のラインナップにおける最上位モデルであり、かつもっともスポーティなモデルだ。
搭載する5.2リッターV型12気筒エンジンは、30psパワーアップ。630psを誇る。くわえて、シャシーもスポーティさを高めたという。
たとえば、エンジンおよびリアサブフレームのマウント部は、ブッシュの剛性を高めた。これにより、車体がヨーイングするときのオーバーシュートを防ぐとともに、ステアリングの入力に対する反応速度と正確性を上げたそうだ。
また、フロントアクスルにも手を入れ、ロールを抑えた。ダンパーも10%硬くし、ピッチングをより減らしたという。あらゆる部分をよりスポーティにファインチューニングしているのがDB11 AMRの特徴だ。
それでいて、ベースになったDB11が持つ“GTカー”としてのキャラクターを、犠牲にしていないことを強調する。
「私たちのモータースポーツ愛は、1922年におこなわれたフランスGPに2台のマシンで参戦して以来変わっていません」と、プレス向けの説明会で話すのは、アストン・マーティン市販モデルの性能を統括するチーフエンジニアのマット・ベッカー氏だ。
ベッカー氏はアストン・マーティンに移籍するまで、ロータスに26年間籍を置き、「エリーゼ」シリーズや「エヴォーラ」を開発してきた。まさにミスター・ブリティッシュスポーツカーである。
「DB11 AMRは、パワーアップしているだけではありません。ハンドリングや乗り心地など、すべての面でよりクルマとドライバーの一体感が高まっています。エンジンサウンドもレースカーを意識し、中高音域を強調しました。あらゆるシーンで楽しめるモデルです」
アストン・マーティンは2015年、ベッカー氏の主導で「セカンドセンチュリー・プラン」を策定した。次の100年に向けた計画だ。それにより、モデルラインナップを大幅に「わかりやすく」(ベッカー氏)整理した。
たとえば、2プラス2クーペの「DBシリーズ」は、DB11とよりパワフルな「DBS」、2シーターの「バンティッジ」の3モデルに絞られた。エンジンはメルセデスAMG製の4.0リッターV型気筒8ターボと、自社製の5.2リッターV型12気筒ターボである。
ラインナップの整理がひと段落した今、気になるのはこれから登場する新型モデルだ。今後の計画についてベッカー氏に尋ねると、「ミドシップエンジンのスポーツカーのこと? それともSUVの『DBX』のこと? それとも……」と、いろいろなモデルが飛び出してきたため、質問者である私とふたりで思わず笑い出してしまった。
ベッカー氏によると、ミドシップエンジンのスポーツカーは「ベンチマーキングが終わった段階」という。おそらく、ターゲットモデルを決めたうえで、おおざっぱな数値目標を定めた段階まで進んでいるのだろう。
「目標とすべきライバルは多いです。フェラーリやマクラーレンなど手ごわいライバルがいる市場に投入するモデルですからね。これらメーカーは、すでに顧客がしっかりついています。そのなかでアストン・マーティンが成功するには、よりオールアラウンドに使える性能が重要と考えています」
アストン・マーティン初のSUVであるDBXのお披露目タイミングも近づいている。アストン・マーティンのホームページにも、偽装を施したDBXの走行シーン動画もアップされていて、楽しみになる。重量級モデルだけに、パワートレーンも気になるところだ。環境問題も意識しなくてはいけないはずだ。
「だからさまざまなパワープラントを試してきましたよ。メルセデスAMGの6気筒? それはまだ言えませんね(笑)。ハイブリッド? ありうる選択ですが、それもいまは言えませんね(笑)」
ベッカー氏はニコニコしながら、大きな自信を感じさせる口調で答えた。大排気量&大パワーのクルマにはよりきびしい時代がくるかもしれないが、彼の話を聞いている限り、未来は明るいように思えてきたのであった。
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