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ライバル「プリウス」との真っ向勝負は辞めた!? ホンダ「インサイト」が復活する本当の理由

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ライバル「プリウス」との真っ向勝負は辞めた!? ホンダ「インサイト」が復活する本当の理由

■ホンダ「インサイト」は、なぜいま復活するのか?

 2018年12月14日より、ホンダは新型モデルである「インサイト」の国内販売を開始しました。「インサイト」は、ホンダにとってのハイブリッド専用モデルで、これまではトヨタ「プリウス」のライバルという存在でした。

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 1999年に誕生した初代「インサイト」の謳い文句は、「量産ガソリン車、世界最高燃費」でした。もちろん、意識していたのは、「量産車初のハイブリッド」として1997年にデビューした初代「プリウス」であることは間違いありません。

 初代「プリウス」の燃費性能は28.0km/L(10・15モード)で、当時としては十分に立派なもの。一方の初代「インサイト」は35km/L(10・15モード)という驚異の数字とともにデビューしたのです。

 しかし、初代「インサイト」は売れませんでした。それも当然です。初代「インサイト」は2人乗りのクーペ。しかもボディはアルミ製で、軽自動車なみの820kgという軽さという、ほとんど燃費競争のための専用車のような仕様だったのです。

■「プリウス」圧勝でひっそりと姿を消した2代目「インサイト」

 ところが2009年に登場した2代目「インサイト」は、普通の5ドアハッチバックになります。しかも、価格は189万円という手ごろ感たっぷり。これに対して、同年5月に3代目が発売された「プリウス」は、なんと旧型を低価格で併売するという技で対抗したのです。

 その時の「プリウス」の発表会では、さんざんに「インサイト」をこき下ろすようなプレゼンを行い、「インサイト」に対するライバル心を隠しません。さらに3代目「プリウス」は、トヨタ初の全店販売という強烈な一手も打ちます。まさに販売合戦が勃発したのです。

 2代目「インサイト」と3代目「プリウス」の販売合戦は、最初のうちこそ互角に推移しますが、時間がたつほどに「プリウス」が圧倒していきます。そして2014年には、「インサイト」は後継モデルもなく、ひっそりと生産終了することに。勝負のゆくえは、「プリウス」の圧勝に終わったのです。

「インサイト」の敗因は、いろいろあると思いますが、やはり大きかったのはトヨタならではの販売力の強さ。そして、短い距離でもEV走行のできる「プリウス」のハイブリッドシステムの先進性が市場に受けたといえます。

 一方、2代目「インサイト」は、1モーターのハイブリッドシステムのためEV走行がほとんどできません。1モーターは1モーターで、安価でコンパクトというメリットはありましたが、「EV走行」というわかりやすい「プリウス」の先進性の方がユーザーに刺さったのでしょう。

■セダンボディで復活した新型「インサイト」は、もはや「プリウス」のライバルではない

 そんな惨敗の生産終了から4年。久しぶりの復活となったのが、今回の3代目となる新型「インサイト」です。ハイブリッドシステムは、2つのモーターを持つ「スポーツハイブリッドi-MMD」を採用しました。2代目モデルとは逆にEV走行が基本で、ガソリン・エンジンは発電を主に担当します。先進性は抜群です。

 ただし、新型「インサイト」は、「プリウス」のライバルからは降りたと言っていいでしょう。なぜならば新型「インサイト」は5ドアハッチバックをやめて、普通のセダンになってしまったのです。価格も326万円程度からで、「プリウス」よりも50万円以上も高い設定です。

 それでいて燃費性能34.2km/L(JC08モード)は、ほとんど「プリウス」と同じ。クルマの形も値段も違ってしまえば、購買層も別。ライバルということはできません。互いに販売に対する影響は少ないのではないでしょうか。

■アメリカを見据えた新型「インサイト」の販売戦略

 では、なぜ、新型「インサイト」は、セダンとなり、価格を高めて登場したのでしょうか。ホンダには、新型「インサイト」とほとんど同じサイズ感の「シビック」が存在します。わざわざ別モデルにせず、「シビックハイブリッド」として販売するという方法もあります。

 その答えはアメリカにあるのではないかと考えます。ホンダにとって自動車ビジネスの主戦場はアメリカです。日本もホンダにとっては大切な市場ですが、こちらは軽自動車とコンパクトカー、ミニバンが主要な商品となります。

 一方、日本よりはるかに規模の大きいアメリカ市場におけるホンダの主力商品はセダンとSUVです。そのアメリカのセダンに関してホンダは、今、電動化を熱心に進めている真っ最中。「アコード ハイブリッド」に「クラリティ」はPHV(プラグインハイブリッド)とEV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)の3兄弟を揃えており、そこに新たに「インサイト」が加わったという状況です。

 ちなみにアメリカにおける新型「インサイト」の立場は、「シビック」と「アコード」の間。“走る喜び”の「シビック」に対して、新型「インサイト」は“上質なミドルセダン”です。デザインも、若干、伸びやかでエレガントなものになっています。

 そして価格も「シビック」よりも上。広いターゲットに向けた「シビック」に対して、新型「インサイト」は、よりパーソナル色が強くなっています。

 つまり、アメリカにおけるセダンのラインナップ拡充というのが新型「インサイト」の役目です。この先に「シビック」にハイブリッドが追加されても新型「インサイト」には、独自の存在感が残されることでしょう。

 アメリカ市場を重視した結果が、新型「インサイト」の変化の理由と言えるのではないでしょうか。セダンになって値段が高くなったのは、アメリカ市場の都合と考えればつじつまがあいます。

 日本という小さな市場ではなく、広大なアメリカの市場で戦うための変化です。その結果が、日本での「プリウス」とのライバル関係終了だったと言えるのではないでしょうか。

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