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総括座談会 国産メーカーの新世代クルマづくりを斬る! 3回目最終回

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総括座談会 国産メーカーの新世代クルマづくりを斬る! 3回目最終回

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「国産メーカーの新世代クルマづくりを斬る!」と題し、新世代プラットフォームと新しいクルマづくりの核心に迫り、元自動車メーカーのエンジニア2氏による覆面座談会を開催した。いよいよその3回目は、スバルのSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を中心にお話を伺った。

編集部:前回はスズキの新プラットフォームの導入とクルマづくりの革新についての話でしたが、今回はスバルです。スバルは2016年春に新世代プラットフォーム「SGP」を発表し、10月にインプレッサに採用して市販化されました。トヨタのTNGA採用の1号車がプリウスで、2015年年末の発売ですから、それより約1年遅れての市販化ですね。

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※本リリーズの過去の記事はこちら
総括座談会 国産メーカーの新世代クルマづくりを斬る!第1回
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総括座談会 国産メーカーの新世代クルマづくりを斬る!第2回
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A:恐らくスバルの新プラットフォームの計画もTNGAとほとんど同時期にキックオフしたのだろうと思います。

編集部:そもそもスバルは車種が少ないのに、プラットフォームを刷新する必要があったのですかね?

B:確かにスバルは、A/Bセグメントをやめ、軽自動車から撤退して以来、プラットフォームは1種類だけだといえばその通りなのですが、レガシィ系ではフロント部分のフレーム構成を変えたりして、そうしたことからモジュラー・プラットフォームとはいえなくなってしまいました。また、近い将来を考えるとPHEVや電気自動車もラインアップしなければならない。これらを考えると、さまざまな車種に適合できる新しいプラットフォームが必要だったということでしょう。

編集部:アメリカでの販売台数が多いスバルとしてはやはりZEV規制に対応したPHEVや電気自動車は早急に開発しないとだめですからね。

A:私が聞いたところでは、スバルのPHEVは2018年には2019年型モデルとしてPHEVを発売し、電気自動車は2021年に。少なくともアメリカでは発売するということをZEV規制の本家、カリフォルニア州大気資源局(ARB)に約束しているそうです。だから2019年、2020年、スバルはZEV用のクレジットを買わないといけないのですが、とにかくこの電動化のスケジュールに合わせて新プラットフォームの開発を急いだのだろうと思います。

編集部: TNGAも電動化を前提にしたプラットフォームですが、スバルも同様の発想なのですね。

B:それ以外に、低重心化とかもTNGAと同じ発想です。低重心化はハンドリング性能を高める手段のひとつで、「もっといいクルマづくり」に繋がる。スバルのSGPの場合は、ハンドリング性能の他に感動質感を目指すと言っています。そのために、静粛性や乗り心地などのレベルを高めようという意思が強く、これは結局ボディ全体の質を高めるということなのです。TNGAは、もちろん同じようなコンセプトですが、ハンドリング性能にフォーカスを絞っている感があります。だから、プラットフォームを比べるとよく似ているのですが、アッパーボディの作りではスバルのほうが凝っていると思います。

A:確かにプリウスのボディを見ると、けっこう後付補剛(追加補強のこと)もあって、開発中の迷いもあった感じですね。対してスバルのインプレッサはよりすっきりしたアッパーボディになっています。その理由は、インプレッサの開発時に、ボディ全体の高性能化の目的で、他社ではやっていない実験手法を使ったりして、かなりこだわったからでしょう。実験用の計測器メーカーの人に聞いたら、スバルのエンジニアから『難しいけど実車に近いコンディションでの計測をやらないか?』ともちかけられ、かなり苦労しながら共同でデータを採ったそうですよ。

B:プラットフォームだけでなくボディ全体の作りを新しくした。それとボディ全体のベンチマークとしてフォルクスワーゲンのゴルフ7をターゲットにしたというわかりやすさもあったのかなと思います。

A:かなりゴルフを研究したようですが、やはり工場の能力の問題でゴルフと同じようにはできないところもあったようで、できるところはやったということですね。例えば、ゴルフと同じようにドイツのムベア社が加工したテーラーロールブランク(可変差厚鋼板)のBピラーを使っている。インプレッサはアメリカ生産モデルだけがこれを採用していますが、結局、国内生産のXVでは全車が採用しています。これは日本車で初めてのことで、かなり思い切ってますね。今後はインプレッサも全車がこれにするんでしょうね。

編集部:つまり、それは衝突安全性能もかなり重視した結果、ということなんでしょうか。

B:まあ実際には、ゴルフはBピラーだけではなく要所に多用しているので、まだまだと言っていい(笑)一挙に飛躍するのは、生産技術的にハードルが高いです。ただ、高剛性と軽量化を両立させるためには、超高張力鋼板の採用、テーラーロールブランクの技術はこれからより多く採用されると思います。

A:それに加えてスバルは、アウターパネルのプレス技術や精度には課題があると思います。それは工場の生産技術の課題ですね。聞いたところでは、建付けの精度は異常にこだわっているそうですが、見栄え品質については後手に回っているような気がします。ただ、衝突安全性能をクラストップレベルまで高くすることと、操縦安定性、乗り心地、静粛性などのレベルを上げることを目指した点は評価してもいいかなと思います。

B:トヨタのNGAは、コンセプトが違ういろいろな車種に採用しなければいけない、という条件がありますが、スバルの場合は、よく似たコンセプトのクルマに共通して採用できる、ということがありで、簡単に言えば取り組みやすいので有利ですよね。(笑)

編集部:でも、ゴルフと同等以上になったかというと、まだそこまで来たとまでは言えないですよね。

B:それはなかなかハードルが高いでしょう。じつは私の友人の某国産メーカーのエンジニアは、某ドイツ・プレミアムカーメーカーとCセグメントのクルマの共同開発に携わったのですが、競合プレミアムメーカーのCセグメント車に加えてゴルフもベンチマークに入れて、新型車開発のシミュレーションを繰り返したということです。でも、なかなかゴルフの壁は乗り越えられなかったと。ある部分は超えても、それ以外で同等というところまで行かないということで、特にボディの共振周波数は異様に高い、つまりとてつもなく固いということでした。

編集部:同じドイツの、しかもプレミアムカーメーカーで、そうなんですか!

B:ええ、そうなんです。ゴルフを含めた競合車をあらゆる面からテストしてデータを採って、そのデータをシミュレーターにかけて、そういう結果だそうです。ただ、そのシミュレーションのために長時間を掛けてデータ取りする点は、そのエンジニアはびっくりしたそうですが。さすがにプレミアムカーメーカーの開発に対する愚直な工数の掛け方はすごいなあと・・・

A:まあプレミアムカーメーカーはそうした、我々では考えられない工数をかけても、それをちゃんと価格に反映できますからねぇ。日本のメーカーは残念ながらそうはいかない。

編集部:そういえば今夏に発売される10代目の新型シビックも、新しいプラットフォームを投入しましたね。


A:今までのシビックのヨーロッパ仕様はグローバルスモールプラットフォーム (Global small platform)を使っていましたが、今後は新開発のコンパクトグローバルプラットフォーム(compact global platform)を使っているようですね。軽量化、高剛性化、低重心化など、TNGAなどと同じコンセプトで、日本、ヨーロッパ、アメリカの各工場で同時展開するようです。そういう意味でスケールの大きな文字通りのグローバル・プラットフォームですね。

編集部:これで、日本のメーカーもCセグメント用のプラットフォームが出揃ったといえますね。

B:いやいや、まだマツダがあるでしょう。ただし、マツダの第2ジェネレーションのプラットフォームはFFではなくてFR用のプラットフォームでしょうね。C/Dセグメントをカバーできるような。

編集部:それもまた、大変興味深いお話ですね。

A:また時間を作ってやりましょう。

新世代のプラットフォームの投入で、国産車のクルマつくりはどのように変わったかを考えるという覆面座談会は今回でひとます完結。今後また別のテーマも検討中。ご期待下さい。

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