■ホンダ「CR-V」が5代目へ進化、「ヴェゼル」との違いとは
約7年ぶりにフルモデルチェンジした、ミドルサイズSUV「CR-V」の登場で、ホンダのSUVラインナップはコンパクトサイズSUVの「ヴェゼル」と合わせて2モデルになりました。
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ホンダ「ヴェゼル」の登場は2013年ですが、2018年2月にマイナーチェンジされています。デザインの進化や先進の運転支援システム「Honda SENSING」の標準装備化をはじめ、主にハイブリッドモデルの加速フィールが改良されました。
新型「CR-V」の開発責任者である永留高明氏は、「世界の誰もがどんな環境で乗っても安心で快適な移動を提供したい。つまり、誰にでも使えるストレスフリーの究極の普通のクルマを作りたいという思いで開発しました。もっとも力を入れたのが、徹底的に磨きあげたダイナミック性能です。さまざまな環境、そしてシーンを具体的にテストすることで、細部まで磨き上げました。すべての面において先代を格段に上回る性能が与えられています」と語っています。
すべてが一新された「CR-V」か、熟成が進む「ヴェゼル」か。実は悩ましい選択かもしれません。そこで、それぞれにどのような魅力があるのか、比較試乗してみました。
どちらもガソリン仕様とハイブリッド仕様に2WD・4WDをラインナップしています。今回は、ハイブリッド仕様の4WDを取り上げます。グレードは「CR-V HYBRID EX Masterpiece」と「ヴェゼル HYBRID X・Honda SENSING」です。
まずは、運転しやすさを比べてみます。単純にボディサイズを比較すると、「CR-V」は全長4605mm×全幅1855mm×全高1690mm、「ヴェゼル」は全長4330mm×全幅1770mm×全高1605mm。この差が示す通り、運転席に座った印象でも「ヴェゼル」の方が身の丈に合った感覚が強く、「CR-V」はブカブカの洋服を着た時のようなゆったり感が強い印象を受けます。
ただ、だからと言って「CR-V」は運転しにくいかというと、そんなことはありません。「ヴェゼル」より60mm高い位置にアイポイントのため、視線がより遠くまで届き、ボンネットの両端が確認できることで車両感覚も掴みやすいと感じます。「ヴェゼル」の方がラクだと感じるのは、やはり全幅の小ささによる狭い道でのすれ違いや、最小回転半径が「CR-V」の5.5mに比べて5.3mとやや小さいため、Uターンや車庫入れで扱いやすい点です。
次に、一般道や山道での走りを比べてみます。「ヴェゼル」の大きな魅力は、軽快さとダイレクト感でした。1.5リッターエンジンに、軽量コンパクトな1モーターの「i-DCD」を組み合わせたハイブリッドは、ドライバーの意思にリニアに反応して、ヒュンヒュンと吹け上がる気持ち良さがあります。
路面からの応答も、良くも悪くも自然に伝わってくるので、カーブが続く山道ではとくに、スポーツカーに乗っているかのようなダイレクト感が味わえるのです。でも、決して荒っぽい挙動を見せることがないのは、リアルタイム4WDが雪道など悪路だけでなく、カーブでの旋回時にも後輪へのトルク配分を強くする、ヴェゼル専用のセッティングとなっているためでしょう。
■試乗だけでなく、後部座席の違いも比較
一方で、「CR-V」の大きな魅力は、2リッターエンジンと2モーターの「SPORT HYBRID i-MMD」による、機敏さと安定感が融合した上質な走りで、低速から中速域でもしっかりと路面に踏ん張る安定感に安らぎを覚えます。
新型「CR-V」のなめらかな加速フィールは、一般道でも山道でも余裕たっぷりで、「SPORT」モードのボタンを押すと、低回転から盛り上がりのあるスポーティな走りに変わります。「CR-V」の中でもハイブリッドモデルだけに施したという、「アクティブサウンドコントロール」によって、ドライバーがよりリニアな感覚に浸れるエンジンサウンドとなっているのも、ホンダらしいプレミアムな演出と言えるでしょう。
新型「CR-V」は車両重量が1700kgと、「ヴェゼル」の1380kgに比べるとだいぶ重いので手足のように操るダイレクト感は薄くなりますが、カーブをかわしていく楽しさは互角というのがすごいところです。続いて、高速道路での走りを、後席の乗り心地も含めて比べてみます。
最も違いを感じたのは、やはりダイレクト感でした。「ヴェゼル」は高速域で走りながらも、刻々と変わる路面状況が手に取るように伝わり、それに合わせて自分の意思で操る楽しさがありました。一方で「CR-V」は、EV、ハイブリッド、エンジンという3つのモードを自動でシームレスに切り替えながら走ることで、クルマが路面の変化に瞬時に適応してくれるため、ドライバーは大きな変化を感じ取ることなく、常にリラックスして走れると感じました。
ここ一発の追い越し加速では、「ヴェゼル」には瞬発力があり、「CR-V」には伸びやかさがあります。ひとつ意外だったのは、こうした走りの特徴から想像すると、後部座席の乗り心地は「CR-V」より「ヴェゼル」の方が劣るのではと思っていましたが、予想以上に落ち着いていて快適でした。これも、熟成を重ねてきた成果なのだと思います。
パッケージングとしては、「ヴェゼル」はガソリン仕様、ハイブリッド仕様ともに5人乗りのみですが、コンパクトサイズSUVの中では随一の居住性を誇ります。フル乗車でも荷室容量が393Lとしっかり確保されていますから、ファミリーユースにも十分対応します。
対して「CR-V」は、5人乗りをベースとしながら、ガソリン仕様には3列7人乗りの設定があります。帰省時に祖父母を乗せる機会があるなど、ミニバン的な利便性が欲しい人は指名買いとなるでしょう。ハイブリッド仕様は、5人乗りのみですが、荷室容量が499Lと大きく、後席を倒してフラットにすれば最大荷室長が1830mmにもなり、 趣味や仕事の道具など、大きな荷物を積むことが多い人にも、「CR-V」は頼もしいです。
そのほか、快適・便利装備を比べると「CR-V」にはドライバー2名分のシート位置を記憶する「ドライビングポジションシステム」や、足の動作で自動開閉する「ハンズフリーアクセスパワーテールゲート」など、「ヴェゼル」には設定されない上級装備が豊富です。
そこはやはり、最新モデルならではです。それぞれの魅力を好みやライフスタイルに照らし合わせれば、より好相性のSUVを選ぶことができます。 【了】
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