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ワクワクしない!? 初代が偉大過ぎた!? ホンダNSXは輝きを失ったのか?

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ワクワクしない!? 初代が偉大過ぎた!? ホンダNSXは輝きを失ったのか?

 ホンダの誇るスーパースポーツNSX。1990年登場の初代はアイルトン・セナも開発に参加するなどそのストーリーはいまでも語り草になるほどの名車だ。

 いっぽうで、2016年に登場した2代目NSXは初代のような胸が高鳴る感覚がかなり薄い。4WDにハイブリッドで乗りやすく、実際にNSXの名に恥じない速さを誇るのだが、なにかが「そそらない」。

総勢40台超! 誌上モーターショー2018 ベストカー11月10日号

 2018年8月にマイナーチェンジを発表するもあまり盛り上がらず。その原因はなんなのか? スーパーカーに詳しい清水草一さんが迫ります。

文:清水草一/写真:ベストカー編集部

■初代は時代にも恵まれたクルマだった

 ホンダがNSXのマイナーチェンジを発表したが、クルマ好きの間では、あまり話題になっていない。

 マイチェンの内容は、空力パフォーマンスを高める新しいエアロパーツの採用、スタビライザーバーをフロント26%、リア19%剛性アップ、トーリンクブッシュの剛性を21%、リアハブの剛性を6%向上。

 スポーツハイブリッドシステム「SH-AWD」、アクティブ磁気ダンパー、電動パワーステアリング、VSAのセッティングをアップデート。

 これらの見直しによって、限界時のハンドリング性能や日常での快適性を向上し、鈴鹿サーキットでラップタイムを約2秒短縮したとのことだ。

 また、フロントグリルのメッキ部がブラックになり、新色ボディカラー「サーマルオレンジパール」も設定された。

 内容を見ると、今回のマイチェンはいたってまともなものだ。こうした努力がないと、商品力を維持することはできないわけだが、これでNSXの魅力がアップするかと言えば、否だろう。

 現行NSXに対する我々の熱量は、なぜこれほど低いのだろうか?

 第一に言えるのは、初代NSX登場時の熱量があまりにも高すぎたので、それと比較するとどうにもならない、ということだ。

 初代NSXが出たのは1990年。すでに日経平均株価は下落を始めていたが、バブル崩壊に気づいていた日本人はほとんどおらず、空前の好景気が続いていると思われていた。

 そんな時代に、日本初のスーパーカーが登場したのだ。しかも、世界初のオールアルミボディを引っさげて。なにしろ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と、日本人が自らに酔っていた時代。

 フェラーリやポルシェなんてのは故障ばかりするポンコツで、性能だって本当は大したことはない、国産スポーツが世界一! と、みんな本気で信じていた。実際その通りだったとも言えますし。

 初代NSXの発表当初の価格は800万円(ATは60万円高)。今思うと驚くほど安い。1990年当時の日本人の平均年収は425万円で、現在とほとんど同じ。しかも98年までは、上昇カーブを描いていた。

 収入が増える中、800万円で日本初のスーパーカーが買えるとなれば、多くの人が「欲しい!」と思って当然ではないか?

 なにしろ当時は、日本人のだれもがクルマに熱狂していた。実際、この頃NSXで東京の街中を走っていると、ほぼ全員が振り返り、走って追いかける人までいたくらいだ。

 これは、みんな欲しがっているという熱狂状態の中、ひょっとしたら自分も買えるかも、手が届くかもと、これまたみんなが思っていたからだ。一種の集団心理ですね。今じゃ想像もできませんが。

■収入は増えずNSXは4倍の価格になった

 対する現行NSXはというと、まず価格が2370万円。初代の約4倍だ。日本人の平均年収はこの28年間でほとんど増えず、むしろ減っているくらいだから、ハードルは4倍も高くなった。

 フツーの日本人には到底買えない。つまり自分とは関係ない。周囲にも熱狂はない。速く走ったって誰も喜んでくれないし、逆に危ない、怖いと嫌われる。

 あの頃とは時代が変わってしまった。醒めるのも当然だ。ところで、なぜNSXはこれほど値上がりしたのか。

 初代は国内生産だったが、現行はアメリカからの逆輸入になったからという面も多少あるが、それは本質ではない。

 実は、日本以外の先進国にとっては、NSXは特に高くはなっていないのだ。

 この28年間で、アメリカ人の平均年収は約2.5倍になっている。富める者はますます富み、貧富の差が広がっているので、スーパーカーが買える層の年収は、おそらく4倍以上になっている。

 NSXの値段が4倍になっても、価格据え置きみたいなもの!

 この28年間、先進国の中で日本だけがデフレで苦しみ、平均年収が上がるどころか下がってしまったので、相対的にNSXがメチャメチャ値上がりしたように感じるだけなのである。

 NSXだけでなく、フェラーリやランボルギーニなど、値段がバカ高いスーパーカーへの日本人の熱狂は、すべてダダ下がりしている。

 販売台数は増え続けているが、興味を持つのはお金持ちだけで、庶民とはまったく無関係なものになった。最大の理由は、日本人が相対的に貧乏になったことにある。

 そういう意味で、現行NSXに罪はない。誰しも、もうちょっとで手が届きそうな夢には燃えるが、頑張っても到底ムリな夢には、トライする気も起きないのだ。

■熱狂が低いのは経済的事情だけではない

 ただ、現行NSXに対する熱狂は、海外でもあまり高くはない。

 初代が出たときは、海外の専門家も称賛した。特にレーシングドライバーは絶賛していた。当時はフェラーリもポルシェもクセが強く、速く走らせるには特殊技能が必要だった。

 初代NSXのようなマトモな操縦性を持つスーパーカーは他になかった。NSXは革命児であり、フェラーリのクルマ作りにも大きな影響を与えた。

 しかし時代は変わった。現在、世界のスーパーカーは、どれもこれもマトモな操縦性どころか、UFOのように曲がって加速はウルトラスーパー速い。

 NSXも同様のダイナミクスを狙って開発され、見事に実現しているが、それは決して飛び抜けたものではなく、スーパーカーの平均値にすぎない。デザインに関してはそれこそ……。いや、これは言わないでおこう。

 しかも現在のホンダのブランドイメージは、まったくもって高くない。過去のF1での栄光はあるものの、現在はあのていたらくだし、今はもう普通の大衆車メーカーに過ぎないのだ。

 そんなメーカーが、フェラーリやポルシェと同じくらいの性能のスーパーカーを開発したところで、熱狂が生まれるはずがないじゃないか。

 それでももちろん、ないよりはあったほうがいい。スーパーカーはもはや宝飾品のような存在。

 そういう意味では現行NSXの市場価値は高くはないが、しかし日本のメーカーが、少なくとも世界トップクラスの性能を持つクルマを開発・生産できるということを見せるのは、悪いことのはずがない。

 ただそれは、我々日本人にとっても海外のクルマ好きにとっても、あまり魅力的ではないというだけのことだ。

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