現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 注目を浴びる高齢者の交通事故 世界各国と比べ日本だけが異常なデータとなるのは何故?

ここから本文です

注目を浴びる高齢者の交通事故 世界各国と比べ日本だけが異常なデータとなるのは何故?

掲載 更新
注目を浴びる高齢者の交通事故 世界各国と比べ日本だけが異常なデータとなるのは何故?

この記事は2017年9月に掲載した有料記事です。一般無料公開しました。

ペダルの踏み間違い事故、認知症の疑いのある高齢者による重大な事故・・・など、最近の日本では高齢者の交通事故がクローズアップされている。2016年に高齢者の運転による死亡事故が続いたこともあって、2016年11月「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」が開催され、政府一体となって取り組むことになった。

2019年ニュルブルクリンク24時間レースに向けスバルWRX-STI NBR始動

■セーフティ・サポートカーSと運転免許返納運動

この閣僚会議の結果を受け、国土交通省は相次ぐ高齢運転者による交通事故の対策の第1弾として、国内乗用車メーカー8社に対し「高齢運転者事故防止対策プログラム」の策定を要請した。これを受けてメーカー各社は2017年2月末までにプログラムを策定し、それに基づき自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置などの先進安全技術について、研究開発の促進、機能向上と搭載拡大、ディーラー等における普及啓発等に取り組む方針が打ち出された。

それ以後クルマのTVコマーシャルの多くが、運転支援システムや予防安全をアピールする内容になっていることは周知の事実だ。自動車メーカーは、自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時の加速抑制装置は2020年までに、ほぼすべての車種(新車)に標準装備、またはオプション設定され、このうち自動ブレーキについてはそのほとんどが歩行者を検知可能とすることになっている。また自動ブレーキ、ペダル踏み間違いによる誤発進抑制システムを装備したクルマは「セーフティ・サポートカーS」と呼ばれるようになっており、この名称もクルマのTVコマーシャルで盛んに使われるようになった。

また、こうしたクルマに予防安全システムを盛り込む機運とは別に、高齢者に運転をさせないために、警察庁がリードして「運転免許証の自主返納」運動が展開されている。70歳を超えたら免許証を自主返納することを奨励し、返納者には身分証明書代わりに使用できる「運転経歴証明書」が発行され、これを提示することで賛同企業などの割引サービスを受けられるようにしている。

しかし大都会ならともかく、地方では高齢化、過疎化が進み、鉄道やバスなどの公共交通機関のサービスも縮小傾向にあり、日常の買い物、病院への通院などにはクルマは不可欠であり、高齢者自らが運転する必然性があり、簡単に運転免許を返納できるような状態にはない、というのが現実だ。

そのため、高齢化社会が進み、都市部と地方の格差が進む日本の交通は、社会的に大きな課題となっている。

■海外の事情は日本とは違っていた

高齢者による交通事故は、日本ほどではないにせよ高齢・少子化のヨーロッパ諸国ではどうか? アメリカではどうか? 世界共通の課題なのだろうか? ということで世界各国の交通事故データを調べてみよう。

交通事故総合分析センター(ITARDA)が国際交通事故データベース(IRTAD)のデータを元にした資料(2015年版)で、海外諸国の交通事故の実態を知ることができる。

まず、主要国の交通事故での死者数の推移を見ると、ダントツの交通事故大国のアメリカでも2007年頃から減少傾向にあるが、日本を含めたその他の諸国は継続的に低減していることがわかる。

また1995年を100とした指数表示でも、アメリカだけは傾向が違っている。だが、その他の国の交通事故死者数は、継続的に少なくなっていることが分かる。さらに、人口10万人あたりの交通事故死者数の比較では、アメリカ、韓国、東欧やギリシャなどは際立って多く、日本はヨーロッパ諸国のレベルに近い存在であることがわかる。

次に自動車1万台あたりの交通事故死者数を見ると、日本は少なく、事故大国のアメリカもこの指標ではわずかに多めというデータだが、米国が事故大国となっているのは、日本の2倍という1億2500万台という圧倒的な自動車の保有台数の多さに原因があることがわかる。

一方で、突出して事故が多いのが韓国で、乗用車保有台数は1700万台と、日本の1/4の保有台数にもかかわらず、死者数はダントツで多い。なお、この統計データには入っていないが、現在では中国がアメリカを抜いて1億5000万台の自動車保有が想定され、交通事故死者数はアメリカを上回っていると予想されている。

この結果、日本は保有台数が多いが、交通事故死者数は少ないグループに入っている。ただ、別のデータでは、1台の走行距離は、日本、韓国が他国より少ないが、韓国は突出した事故死者数で、日本もやや多目と位置付けられる。

交通手段別の事故死者数のデータを見ると、日本の異常な状況がわかる。日本と韓国だけが歩行中の事故死者数の比率が多く、さらに自転車での事故死者数も断然多くなっている。

逆に自動車乗車中の事故死者数は日本と、韓国は他国より少ないのも特長だ。これは自動車の平均速度が遅く、車道・歩道の区別、車道の狭さなど、道路インフラが劣っていることを示している。ドイツは事故死者数は日本より、やや少ないというレベルだが、歩行中の事故死亡者数は日本1/3以下になっていることかわもわかる。

また事故死者数の中での歩行中が原因の比率は、日本:37.3%、韓国:38.8%であるのに対し、アメリカ、ドイツは15%台、フランスは13%台で、やや多いイギリスでも23.7%で、いかに日本、韓国は歩行者の事故死者が多いかが分かる。

■これからの対策は

次に年齢別の事故死者を見ると、日本はその構成比の56%が65歳以上だ。他国のデータを見比べると異常に多いことが分かる。日本の次に位置する韓国でも39.3%で、その他の諸国は20%台以下、アメリカに至っては17.6%と少ない。

このことから、日本は高齢者の事故死者数がきわめて高いことになる。この点と、歩行中の事故死者数が多いという2つの点が日本の交通事故での最大の被害者であることは注目に値する。つまり、高齢者は死亡に至るような重大な交通事故の被害者であり、加害者だということになる。

その意味では、歩行者を検知できる衝突被害軽減・自動ブレーキ、ペダル踏み間違いによる誤発進抑制装置の普及を目指す「セーフティ・サポートカーS」の運動の狙いは間違っていないと。ちなみにペダルの踏み間違いによる事故は、日本特有ではなくATが普及している国では一定程度発生しているが、それが高齢者特有の事故という扱いになっているのは日本だけの現象だ。

その理由は、過疎化し、公共交通機関が衰退している地方で生活するためには、高齢者が自らハンドルを握らざるをえないという状況があると考えられる。

そうした問題を解消するために運転免許証を返納するといったことでは、とうてい本質的な解決策とはいえない。

「セーフティ・サポートカーS」のようなクルマの予防安全性を高めることも有効な手段であるが、地方での移動手段としてより、コミュニティをつなぐ新たな交通システムなどの模索も考える必要があるだろう。

関連タグ

こんな記事も読まれています

3時間で争われるスーパーGT第2戦富士の持ち込みタイヤ数と義務ピット回数が発表。モラルハザードは1名が適用
3時間で争われるスーパーGT第2戦富士の持ち込みタイヤ数と義務ピット回数が発表。モラルハザードは1名が適用
AUTOSPORT web
F1、2025年に向けてポイントシステム変更を検討。12位まで対象を拡大か
F1、2025年に向けてポイントシステム変更を検討。12位まで対象を拡大か
AUTOSPORT web
「30万円」の大幅値下げ!? 鮮烈レッドの「新型セダン」発表! 爆速の「超高性能モデル」も新設定! 今あえて「値上げラッシュ」に逆行した理由とは
「30万円」の大幅値下げ!? 鮮烈レッドの「新型セダン」発表! 爆速の「超高性能モデル」も新設定! 今あえて「値上げラッシュ」に逆行した理由とは
くるまのニュース
急拡大! BYDの高級車ブランド「方程豹」 無骨SUV&華麗スポーツカー発表
急拡大! BYDの高級車ブランド「方程豹」 無骨SUV&華麗スポーツカー発表
AUTOCAR JAPAN
約20年ぶりのBTCCフル参戦に臨む元世界王者ロブ・ハフ「カローラはかなり快適だ。でも忙しいね!」
約20年ぶりのBTCCフル参戦に臨む元世界王者ロブ・ハフ「カローラはかなり快適だ。でも忙しいね!」
AUTOSPORT web
アウディの電動SUV『Q6 e-tron』に105mm長い「L」
アウディの電動SUV『Q6 e-tron』に105mm長い「L」
レスポンス
においを出すSUVだと…? ホンダの新SUVは至れり尽くせり? 中国でEV攻勢へ
においを出すSUVだと…? ホンダの新SUVは至れり尽くせり? 中国でEV攻勢へ
乗りものニュース
「市販します」トヨタのEV“bZ”シリーズ新型2車種 Z世代向け&ファミリー向け スタイルはっきり分ける
「市販します」トヨタのEV“bZ”シリーズ新型2車種 Z世代向け&ファミリー向け スタイルはっきり分ける
乗りものニュース
三菱「新型“精悍”コンパクトSUV」発表! 斬新マスクがカッコイイ! 新型「ASX」マイチェン版 欧州で発売へ
三菱「新型“精悍”コンパクトSUV」発表! 斬新マスクがカッコイイ! 新型「ASX」マイチェン版 欧州で発売へ
くるまのニュース
セゾン自動車火災保険、商号を「SOMPOダイレクト」に変更
セゾン自動車火災保険、商号を「SOMPOダイレクト」に変更
レスポンス
フィアット「500」の謎の振動がやっと解消! 飛び散るオイル問題は果たして解決されたのか…!?【週刊チンクエチェントVol.35】
フィアット「500」の謎の振動がやっと解消! 飛び散るオイル問題は果たして解決されたのか…!?【週刊チンクエチェントVol.35】
Auto Messe Web
厳選値引き実例 X氏の値引き特報
厳選値引き実例 X氏の値引き特報
グーネット
33歳、フェラーリを買う──Vol.17 オープン最高! でも……
33歳、フェラーリを買う──Vol.17 オープン最高! でも……
GQ JAPAN
タイヤブランドGTラジアルよりオールシーズンタイヤ「4シーズンズ」発売
タイヤブランドGTラジアルよりオールシーズンタイヤ「4シーズンズ」発売
レスポンス
これぞ徹底的に遊べる軽!──新型ホンダN-VAN FUN STYLE+ NATURE試乗記
これぞ徹底的に遊べる軽!──新型ホンダN-VAN FUN STYLE+ NATURE試乗記
GQ JAPAN
グランツーリスモ7に新規車種3台を追加するアップデート配信。シュコダがシリーズ初登場
グランツーリスモ7に新規車種3台を追加するアップデート配信。シュコダがシリーズ初登場
AUTOSPORT web
顔が…いや全身変わった!? ホンダの売れ筋コンパクトSUV「ヴェゼル」改良 ハイブリッドはEVに近づく?
顔が…いや全身変わった!? ホンダの売れ筋コンパクトSUV「ヴェゼル」改良 ハイブリッドはEVに近づく?
乗りものニュース
ワイパー「高速運転」はゴム寿命縮める? 面倒な交換ケチって「ゆっくりモード」本当にコスパは良いのか
ワイパー「高速運転」はゴム寿命縮める? 面倒な交換ケチって「ゆっくりモード」本当にコスパは良いのか
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

565.0860.0万円

中古車を検索
ヨーロッパの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

565.0860.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村