デザイン的に優位性 それだけではないメリット
ドアミラーにサイドウインカー(サイドターンランプ)をつけたクルマを多く見かけるようになりました。
この「ドアミラーウインカー」が世界で初めて採用されたのは、1998(平成10)年に登場したメルセデス・ベンツの4代目Sクラス、国産車では2001(平成13)年に日産が発売した4代目「シーマ」といわれています。当初は高級車を中心に見られましたが、しだいに軽自動車やコンパクトなど、幅広いクラスの乗用車へ普及しました。
「道路運送車両の保安基準」では、車体の側面に「側方方向指示器(サイドターンランプ)」を装着することが定められています。ドアミラーウインカーのほか、ボディーのフェンダー横にサイドターンランプが装着されている車種などもありますが、どちらか一方が装着されていればOKです。ドアミラーウインカーの普及とともに、サイドターンランプは数を減らしていきました。
では、ドアミラーウインカーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。日産は4代目「シーマ」発表当時の資料で、「ななめ後方のオートバイなどからの自車の右左折を認知しやすくする」としていますが、このドアミラーを開発した市光工業(神奈川県伊勢原市)にさらに話を聞きました。
――ドアミラーウインカーにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
サイドターンランプが車両幅方向において最も外側にレイアウトされるので、第三者が視認しやすい位置といえます。また、サイドターンランプを単独でボディ両側に取り付けるのと異なり、ミラーと一体にデザインできるので意匠のうえで優位性があるでしょう。
ほかに、車両メーカー側のメリットとして、ハーネスの配策(電線類の配置)があります。ボディー付けサイドターンランプの場合、このためだけに車両側のハーネスが必要ですが、ドアミラーにはもともと、電動格納や鏡面電動、ヒーターといった電気的な機能を担うためのハーネスが配策されており、ここにターンランプのぶんを追加するだけで対応できるのです。
「ドアミラーをぶつけたときの費用が…」で不採用に?
現在ほとんどの車種でドアミラーウインカーを採用しているスバルも、フェンダーのデザインとして、余計なランプをつけるのを避けるという傾向があるとのこと。このようなデザイン上のメリットもあるドアミラーウインカーですが、たとえばダイハツでは、これを積極的には採用していないようです。
ダイハツの軽自動車ラインアップを見てみると、“カスタム”などのモデルではドアミラーウインカーの設定があるものの、標準的なモデルでは多くの車種でドアミラーウインカーではなくサイドターンランプが装着されています。「ムーヴ」などは一時期標準モデルでもドアミラーウインカーだったのが、サイドターンランプに戻されました。
「ドアミラーウインカーにするかどうかは、機能性、視認性、デザイン性、コストを考慮して車種ごとに決めています。一時期はドアミラーウインカーが多かったのですが、最近はボディーにサイドターンランプがついた車種も増えました」(ダイハツ)
2018年6月に発売された「ミラ トコット」も、当初はドアミラーウインカーで考えられていたものの、結局はサイドターンランプを採用したといいます。ダイハツによると、「女性の意見を取り入れ、運転の苦手な初心者に向けた運転しやすいクルマというコンセプトがあり、ドアミラーをぶつけたときに修理費用が高くなってしまうことも考慮しています」とのこと。また、軽自動車は特に多くの車種で部品を共通化させてコスト縮減を図る必要性からも、サイドターンランプを採用したそうです。
ダイハツは、「いまドアミラーウインカーがついている車種も、それが固定というわけではなく、今後も総合的に判断して決めていきます」としています。
【写真】世界初のドアミラーウインカー搭載車
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