現在のコネクティッドカーをいち早く取り入れたクルマも
発売された当時はコンセプトが疑問だったり、イマイチよくわからない方向性にあると思えたクルマも、時が経てば先鋭的な商品企画の意図が理解できることもある。
スポーツカーが売れないこのご時世でも健闘している貴重な国産モデル5選とその理由
今回は「時代を先取り」し過ぎてコケながらも、今振り返ってみると名車と呼ばれるまでじつは紙一重だったと評価できる国産車4台を選んでみた。
1)スバル・アルシオーネ(初代)
1985年に発売されたスバル初のスペシャリティクーペ。レオーネをベースとしながらもFF車では国産車としては初のCd値0.29を達成するなど、当時としては最先端の空力ボディを採用。
水平対向6気筒エンジンをはじめ、電子制御のアクティブトルクスプリット4WDやAUTO-4WDなど、先進的なメカニズムが数多く採用された。当時の富士重工業社内では「まさかウチがこんなクーペを出すとは!」と多くの社員がザワついたが、商品企画としては北米市場の入念なマーケティングを実施した結果実現したもので、プラザ合意による円高がなければ、北米市場で安定的な人気を持続した可能性が高い。自動車雑誌などでは「思い出の珍車」的な扱いを受けることが多いが、今のスバルにこそ、アルシオーネのような高級路線のクーペモデルが必要と考えるスバルファンは多い。
2)ホンダ・CR-Xデルソル
昭和末期から平成初頭にかけて大人気を博したFFスポーツハッチ、CR-Xの3代目モデルとして1992年に登場。ライトウェイトなハンドリングマシンとして、当時の走り屋に絶大な支持を受けた初代~2代目とは異なり、電動開閉式のメタルトップをもつ2シーターオープンカーとして路線変更。初代~2代目モデルのユーザーからはソッポを向かれ、RVブームの到来でスポーツカー市場そのものが冷え込んだこともあり、新規ユーザーはほとんど獲得できず、不人気のまま1997年に生産終了と相成る。しかし、CR-Xデルソルの後に登場したメルセデスのSLKは世界的なヒット車となり、2000年代になると電動メタルトップのルーフを持つC/Dセグメント車が大ブームになって激増。CR-Xデルソルが欧州市場へ与えた影響はとてつもなく大きかった。
3)ユーノス・800
「10年基準=10年色褪せない内外装デザインやメカニズム」というコンセプトを大々的にアピールしながら、1993年にデビュー。バブル経済期の設計らしい豪華な内外装や、量産車初のミラーサイクルエンジン搭載など、当時のマツダ車としては規格外とも言える挑戦的な内容で勝負に出た。玄人筋からの評価は高かったものの、当時のマツダの5チャンネル化の失敗もあって、世間一般的にはほとんど理解、共感されることなく販売は低迷。マツダ混迷の暗黒期を象徴するクルマとのイメージがついてしまった。ブランドの統合によりユーノス店が消滅してからは「マツダ・ミレーニア」として生き残り、旗印として掲げた10年間販売され続けたところには、マツダの執念が感じられる。入魂のミラーサイクルエンジンは、その後トヨタのプリウスなどで一般的なものとなった。
4)WiLL サイファ
1999年に企画が立ち上がった異業種合同プロジェクト「WiLL」の自動車第3弾として、2002年に登場。基本的なコンポーネンツはヴィッツをベースとしながらも、「サイバーカプセル」と呼ばれた斬新な外観デザインや、蛍光色に見える奇抜なボディカラー など、強烈な存在感を発揮。トヨタの情報サービス「G-BOOK」を初めて搭載し、eメールの送受信が可能で、最新地図や市街地図のアップロードができるなど、自動車界のIT革命の申し子のようなクルマだったが、世間一般のIT化がこのクルマに追いつかず、奇抜な外装デザイン以外はあまり注目されなかった。
「G-BOOK」は来年(2019年)にはサービスが終了する予定だが、テレマティクスのサービス自体は普及し、今後もクルマの性能の中核的な役割を担うほどに重要なものとなっている。
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