日本車としては異例なほど高かった、そんな「初代プリメーラ」が心配だ!!
まだ旧車の域でもなくそれほど古臭くもない。絶対的にもヴィンテージと呼ばれるには時間がかかるかもしれないが、心配でならないのが日産「プリメーラ」だ。確かにヨーロッパ風ではあるものの、決して流麗なスタイリングでもなく、名車風を吹かせる感じはしない実用車。初代P10型がデビューしたのは1990年と、すでに30年近くにもなる。フロントにマルチリンクサスペンションを採用。そのハンドリングにもファンが多かった。欧州でも高い評価を集め、日本車で初めて欧州カー・オブ・ザ・イヤーで二位を獲得し、欧州車信奉のあった国内のファンにもこのクルマを評価する声は数多く聞かれた。
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“技術の日産”。このフレーズはもはや言い古された感もあるが、思えばこの初代プリメーラあたりが、日産における分水嶺のような意味合いを持つクルマと言えるかもしれない。もっともそれ以前から性能面で引けを取っていたわけではないだろう。しかし、この前でフォルクスワーゲン・サンタナの製造を手掛け、ドイツ流のクルマ作りなども車内により一般的になってきたタイミングで、高いボディ剛性や、パンタグラフタイプのトランクリッドのアームなど、欧州車を徹底的に意識。この常識に照らし合わせて誕生したことがうかがえる箇所が随所に見て取れる、そんな一台が「プリメーラ」である。さらに、この後ルノーの傘下に入ることになる日産自動車。合理化と日本車のクルマ作りというより、世界基準でのクルマ作りが一般的になっていくこの後のモデルと、それまでの黎明期の日産との間が「プリメーラ」にあるような気がするのだ。
こうしたファミリーカータイプはなかなか残っていかないという傾向だが、その例にもれず、随分と見かけたものである。にも関わらず、最近では現存するクルマの値段は高騰し始め、すでに好きな人たちの間で再評価されはじめている。ハンドリングの良さが人気だったと紹介したが、そもそも限られたスペースを有効に使い、優れたパッケージに加え、車重も十分に軽かった(P10型/1,080kg~)。今の基準でいえば、という部分でももちろん、数あるクルマの中でも高く評価のできる点ではないだろうか。
こうしたクルマに乗ると、鼻先を向けた方向にスッと進むその挙動についうれしくなってしまうもの。エンジンも1800ccと2000ccがあって、MTとATが選べたことなど、確かにパワーが十分か、それを自在に操ることは可能か・・・、いろいろとクルマ好きは小理屈を並べてみたりする。しかし、”そんなことはどうでもいい!!”と思わせる魅力がこの時代のクルマには残っているような気がするのだ。
一部に不当なと思えるようなプライシングも散見されるスカイラインなどの陰に埋もれ、そしてまさか趣味の対象にはならないだろうという雰囲気でいっぱいの「プリメーラ」だが、今のクルマへのベクトルの中に、元来のクルマの魅力を色濃く残すP10プリメーラ。「あれがいいならこれは大アリだ」ということに今後一層なっていきそうな気がするのである。もはやすでに遅いのかもしれない。けれども投機や、話題的に注目されるからといって人気が出るのは、クルマとしてはどうなのだろうかと思わないでもない。原則としてお金を持っている人が、その予算で何を買おうが勝手ではあるのだが……。
そうしたやや本質ではない評価をこのクルマもされてしまうのだろうか。そして他のクルマがそうであるならば、このクルマあたり、人気急上昇しても不思議ではない。一度自分で所有して乗ってみたいし、それならできるだけ早いうちに。値段が上がりだしたら結構高いところまで行ってしまいそうで心配でならない。
とにかく、プリメーラが気になってしょうがないのである。
(レポート:中込健太郎)
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