車載ナビよりも低いコストで利用できる
2018年6月4日、アメリカ・サンノゼで開催された開発者向けのイベント「Worldwide Developers Conference(WWDC)」で、これまでのiOSに添付されるCarPlayの使い勝手を大きく変えそうな発表が行われた。なんと、今後リリースされるiOS12から、Googleマップなどサードパーティが用意したナビアプリをCarPlayで使えるようになるというのだ。
これまでCarPlayはアップルが開発した地図アプリをデフォルトとしており、それ以外の地図アプリには非対応としていた。ところが日本ではこのアプリが交通情報に非対応でもあり、ナビゲーションとして使うにはあまりに力不足。今回の対応により、CarPlay上で交通情報を踏まえたルートガイドが実現することになったのは、まさに朗報と言うべきだろう。
周辺を見回せば、すでに三菱のアウトランダーやエクリプスクロスではナビゲーションそのものを標準搭載せず、オプション設定に。CarPlayやAndroid Autoへの対応をグローバルで展開中。ほかのメーカーも、日本でこそナビゲーションを数多くラインアップするが、海外ではほとんどがナビレスのディスプレイオーディオとなっているのも事実だ。今回のCarPlayの対応は、日本国内でもこの流れを加速させる可能性が出てきたとも言える。
では、多くのユーザーが車載ナビを使っている日本で、本当にスマホによるナビゲーションで間に合うのだろうか。マルとバツで考えてみた。
◆スマホで使うナビ(スマホナビ)の「○」
【つねに最新の地図データが使える】
スマホナビ最大のマルは、地図データをつねにサーバーにある最新版を使えるということだ。車載ナビでは、地図更新のためにネット上から最新版の地図データをダウンロードし、それを車載ナビ上で展開するという手間を経るのがほとんど。スマホナビでは通信がつねにつながっていることで、山間の県境でも越えない限りはいつでも最新の状態にある。まさにメンテナンスフリーで使い続けられるのがスマホナビなのだ。
【車載ナビよりもはるかに低いコストで利用できる】
スマホナビは車載ナビよりはるかに低コストで使える。車載ナビはどんな廉価モデルでも5万円以上はするが、スマホ向けには無料で使えるナビアプリが数多く提供されている。しかも交通情報はCarPlayの指定地図アプリが非対応であったものの、アプリにはVICSや独自に収集したプローブ情報を使うなど、車載ナビ顔負けのスペックで提供されるものも少なくない。仮に有料アプリであっても、その費用は月々300~500円程度とそのコストは桁違いに低い。
【ルートガイドの案内も大きく進化】
ルートガイド中の表示も着実に進化している。ただ、これはアプリによって対応はさまざまで、Googleマップでは今もなお地図を自動的に拡大するだけだが、その一方でYahoo!ナビやトヨタのTCナビでは車載ナビと比較してもほとんど見劣りしないルートガイドを行う。高速道路でも専用モードを用意したり、車線ガイドまでも行うアプリは確実に増えてきているのだ。
◆スマホで使うナビ(スマホナビ)の「×」
【測位の安定度は車載ナビに大きく劣る】
スマホナビ最大の弱点となるのが測位精度だ。スマホでは測位するのにGPSを使うのが基本で、この受信状況次第で精度は大きく左右される。そのため、建物に電波が反射するマルチパスにも影響され、ビル街や山間に入ると自車位置が不安定になるにもこのためだ。ここがジャイロセンサーや車速パルスも併用する車載ナビと大きく違う点だ。加えて、車載ナビでは当たり前の道路の高低差もスマホナビは認識できず。
【利用シーンによりルートガイドも不安定になる】
測位精度の不安定さはルートガイドにも影響する。自車位置が不安定だと正しい案内もできなくなってしまうのだ。また、アプリを立ち上げた直後は進むべき方角も示せない。つねに安定したルートガイドを求めるなら、スマホナビは明らかに力不足と言えるだろう。
【画面サイズが小さく視認性はイマイチ】
車載ナビに比べて画面が小さいのもスマホナビの弱点だ。画面サイズが小さいため、ダッシュボードの上に取り付けるとドライバーは案内が良く見えなかったりする。その一方で車載ナビは着実に大画面化が進んでおり、視認性は飛躍的にアップしている。一部の車種ではナビゲーション以外にさまざまな機能をモニタリングするために、画面サイズをタブレット並みしている例もあるほどだ。「それならスマホではなくタブレットを使えばいい」との声も出そうだが、衝突時のリスクも踏まえると運転席まわりに取り付けるのはかなり難しい。
◆スマホで使うナビ(スマホナビ)の「△」
【利用時の通信料をあまり気にする必要はない】
スマホナビを使う際には通信料も気になるところだろう。ただ私はこれまで経験上、それほど心配する必要はないと思っている。グラフィカルな表示を行うナビになるほど通信料がかかる傾向にあるのは当然だが、たとえばシンプルな表示にとどまるGoogleマップなどは頻繁に使っても1カ月で1GBを超えることはまずない。もちろん、月々の契約を1GBに抑えている人にとっては、ほかの利用も踏まえると少々と厳しい可能性はあるが、ナビアプリを使って“パケ死”することは考える必要はないだろう。だから、通信料は△とした。
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