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古いクルマの持ち主を苦しめるイジメ重課税はおかしい!!【旧車を大事に】

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 古いクルマに乗り続けると、税金が高くなる。ただでさえ高くて問題のある日本の自動車関連税は、古いクルマを大事に乗っているユーザーに対して不当に厳しい。「旧車」といっても新車登録からわずか13年で重課税は始まる。今年から見ると2005年式のクルマがもう重課税対象となるわけだ。

 2005年って、ついこの前じゃないですか!

 こうした旧車への重課税に対して、「道徳のカケラもない」と怒っているのが自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏。まずは新車登録13年超のクルマがどれくらい多く税金を払っているかを紹介し、国がなぜ古いクルマに重税を課すのかを検証してゆきたい。

文:渡辺陽一郎 写真:Shutterstock

■ただでさえ高くて問題もある日本の自動車関連税

 自動車の税金には、購入時に納める自動車取得税、購入時と車検を受ける時に納める自動車重量税、毎年納める自動車税(あるいは軽自動車)の3種類がある。

 このほか燃料にも税金が含まれ、ガソリン1Lに付き揮発油税が48.6円、地方揮発油税が5.2円、合計すれば53.8円も納める。ガソリン価格が1L当たり140円とすれば、正味価格は86.2円に収まるわけだ。

 ディーゼルの軽油にも軽油取引税が32.1円含まれ、1L当たり115円なら正味価格は82.9円だ。つまりディーゼルは低燃費で軽油も安いから経済的といわれるが、正確には軽油の価格ではなく税金が安いのだ。

 このように、自動車関連の税金は多岐にわたり、車両や燃料には消費税も加わるから二重の課税が行われている(税金に税金が掛かっている、ということ)。

 しかも古い車両には、エコカー減税とは逆に税金を増やす「重課」が実施されている。自家用の乗用車と軽乗用車は、初度登録(軽自動車は初度届け出)から13年(自動車税)/18年(重量税)をそれぞれ超えた車両が対象だ。

■自動車税、重量税ともに「古いクルマ」からたくさん取る

 小型/普通乗用車は、初度登録から13年を経過すると自動車税が115%に高まる。1.6~2Lエンジン車の自動車税は、13年以内ならば年額3万9500円だが、13年を超えると年額4万5400円になり、新しい2.5L車の税額を上まわる。

 軽乗用車税は、初度届け出から13年以内であれば年額1万800円(登録時期が2015年3月末までなら年額7200円)だが、13年を超えると1万2900円に跳ね上がる。毎年7200円を納めていたユーザーは、軽自動車額が一気に180%まで増えるのだ。

 さらに自動車重量税にも重課が行われる。小型/普通乗用車の場合、初度登録から13年を経過すると139%、18年を経過すると154%に増える。

 継続車検を受ける時には2年分の自動車重量税を納めるが、車両重量が1001~1500kgの場合、一般的な税率(車両重量が500kg当たり年額4100円)で2万4600円だ。計算式は「4100円(暫定税率)×3(単位が500kgごとで車両重量が1000kgを超えるため)×2年分=2万4600円」になる。

 これが13年を超えると2年分で3万4200円、18年を超えると3万7800円だ。

 ちなみに購入当初に「エコカー減税」の基準に該当していれば、計算式が変わって「2500円(本則税率)×3×2年分=1万5000円」で済む。つまり新車を買った直後は2年分の自動車重量税が1万5000円、これが18年乗り続けると、3万7800円に増えるのだ。

 同様のことが軽自動車にも当てはまり、多くの車両が納める自動車重量税は、継続車検時の2年分なら6600円だが、初度届け出から13年を超えると124%に増えて8200円になる。18年を超えると133%になって8800円だ。

■ただ古いというだけで税額が約1.4倍に

 自動車税(軽自動車税)と自動車重量税が両方ともに増税されると、当然ながら税負担が大きい。継続車検を受ける時に納める2年分の自動車重量税+2年分の自動車税(軽自動車税)、つまり2年分の維持費を整理すると以下のようになる。

◆普通車の場合

【条件】小型/普通車(排気量:1.6~2L/車両重量:1001~1500kgの車両)

・エコカー減税車:2年分の自動車税(7万9000円)+2年分の自動車重量税(1万5000円)=9万4000円

・通常の税額:2年分の自動車税(7万9000円)+2年分の自動車重量税(2万4600円)=10万3600円

・13年オーバー:2年分の自動車税(9万800円)+2年分の自動車重量税(3万4200円)=12万5000円

・18年オーバー :2年分の自動車税(9万800円)+2年分の自動車重量税(3万7800円)=12万8600円

◆軽自動車の場合

・エコカー減税車:2年分の自動車税(2万1600円)+2年分の自動車重量税(5000円)=2万6600円

・通常の税額:2年分の自動車税(2万1600円)+2年分の自動車重量税(6600円)=2万8200円

・13年オーバー:2年分の自動車税(2万5800円)+2年分の自動車重量税(8200万円)=3万4000円

・18年オーバー:2年分の自動車税(2万5800円)+2年分の自動車重量税(8800円)=3万4600円

 上のリストからも分かるように、初度登録(届け出)から13年以上を経過した車両を所有すると、最大で1.4倍もの税金を負担させられる。

 この制度は数多くの問題を抱えるので、即刻廃止すべきだ。理由は以下のようになる。

■(1)社会福祉の逆行

 軽自動車を中心にして、老朽化した車両は、退職した高齢者によって使われることが多い。鳥取県/山形県/長野県などでは、10世帯に10台以上の軽自動車が保有され、人口に占める65歳以上の高齢者比率も30%を上まわる。

 つまりこれらの地域では公共の交通機関が未発達だから、高齢者が初度届け出から13年を超えた軽自動車を使って、日常の通院や買い物をしている現実がある。

 このような人達に重税を課して苦しめるのが今の自動車税制だ。高齢者にとって自動車の増税はライフラインの切断を意味する。生存権にも影響を与え、もちろん社会福祉にも逆行する。

 ちなみに東京都は軽自動車の普及率が全国で最下位だ。10世帯で1台少々にとどまり、65歳以上の高齢者比率も23%と低い。

 したがって東京の霞ケ関や永田町から、日本の切実な自動車事情と、高齢化社会の現実はまったく見えない。自動車行政は、自動車がライフラインとして機能する地域で考えるべきだ。政治も常に現場で仕事をしないと判断と行動を誤る。

■(2)課税根拠の崩壊-1「もはやクルマは贅沢品ではない」

 自動車税はもともと「財産税」、あるいは「贅沢税」として設けられた。高額な財産で、所有すれば行動半径も広がるため、多額の利益を生み出せる。そこで自動車税の徴税が開始された。

 ちなみに軽自動車税は1958年に廃止された「自転車荷車税」の後継として整備された経緯があり、昔は自転車や荷車も課税の対象だった。

 この趣旨に沿って考えれば、退職した高齢者の移動手段として使われる古い軽自動車は、もはや財産税とか贅沢税の対象にはなり得ない。

 そして、もし自動車が贅沢な財産だと仮定するのであれば、自動車税の税額を経年劣化に応じて下げないと理屈が通らない。時間の経過に伴って車両の財産(資産)価値も減るからだ。

 要は減価償却の考え方が必要になる。初度登録から13年を経過した車両は、中古車価格が10万円以下になったりするが、そこに年額4万5400円(1.6~2L)の重税を課すのは、自動車税の趣旨に真っ向から反する。まったく理屈が通らない。

 また、そもそも自動車重量税は、自動車が道路を傷つけ、道路の建設や整備費用は自動車ユーザーが負担すべきという趣旨で設けられた。そのために車両重量に応じて課税している。

 しかし車両が古くなっても車両重量が増えたり、道路の損傷を拡大させることはないから、これも増税の根拠がない。

■(3)課税根拠の崩壊-2「道路特定財源は廃止されたのに」

 自動車取得税、自動車重量税、揮発油税などは、もともと道路建設や整備をするための税金(目的税)として1950~1970年代に設けられた。

 この背景には、先に述べた道路建設や整備費用は自動車ユーザーが負担すべきという、受益者負担の考え方があった。

 ところがこの道路特定財源制度は2008年に廃止され、今では課税根拠を失っている。それなのに一般財源化されて存続している。「自動車を走らせる道路を造るから、自動車ユーザーの皆さん、お金をください」といって徴収を開始したのに、ちゃっかり別の目的に使っているのだ。しかも古い自動車ユーザーから多額の搾取をしている。

■(4)モノを大切に使う道徳の欠如

 我々は「モノを大切に使わないといけませんよ」と言われながら育った。昨今のエコロジーを踏まえても、とても大切な道徳だ。

 ところが今の自動車税制は、古い自動車に重税を課して廃棄をうながす。モノを大切にする道徳に反する。

 古い自動車を増税して廃棄に導く根拠は「環境性能の向上だ」というが、これにも矛盾がある。自動車は開発/製造/流通/使用/廃棄のすべてにおいて、環境に負担を与えて二酸化炭素も排出するからだ。13年を超えた自動車に重税を課して、多くの人達を悲しませながら廃棄処分にさせ、無理に高額な新型車を買わせることがエコとは限らない。

 結論をいえば、今の自動車税制は、国と自動車業界が癒着した結果の稚拙な産物だ。道理の通らない「元・道路特定財源」の税金を今でも徴収しながら(これは自動車販売の妨げになる)、その代わりにエコカー減税と13年を超えた車両の増税で販売促進にも加担する。いわゆる「アメとムチ」だろう。この犠牲になるのが古いクルマのユーザーだ。道徳のカケラもない。

 そして最も残酷な軽自動車増税については、13年を超えた古い車両に向けた増税分が、新車の減税分の4.5倍に達した。高齢者のライフラインに重税を課して苦しめ、しっかり税収太りする構図が出来上がっている。やっていることは、もはや犯罪に近い。

 改めていう。13年を経た車両の増税は即刻廃止して、新たな税金の仕組みを再構築すべきだ。

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