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【日産は日本市場を見捨てたのか!?】売れ筋車種を放置し続ける事情と要望

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【日産は日本市場を見捨てたのか!?】売れ筋車種を放置し続ける事情と要望

 古いクルマ好きには「日産といえば日本第2位メーカー」というイメージが根強いですが、年間販売台数を見ると(軽自動車含む)ホンダ、スズキ、ダイハツに続く5位。2017年の新型車はリーフ1台きりだし、ノートが売り上げを伸ばして話題になったものの、じゃあその話題の中心であるe-POWERを拡大設定するかと思えば、やっと2018年3月にセレナe-POWERが発売するくらいと、動きが遅い。
 売れ筋カテゴリーであるはずのキューブやジュークは放っておかれっぱなしだし、日産、どうしちゃったんでしょうか。日本市場への投資はもうしないのか? それでいいのか? 自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に、そこらへんの事情と要望をじっくりと伺いました!
文:渡辺陽一郎

■売れ筋であるはずのマーチもジュークもエルグランドも放置

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 かつての日産は、クルマ好きのユーザーに愛されるメーカーだった。スカイライン2000GT、ブルーバード1600SSS、フェアレディZといったスポーツモデルが豊富に用意され、サファリラリーにも積極的に参戦している。「販売のトヨタ、技術の日産」などといわれた。メーカー別販売ランキングも2位で、トヨタを脅かす存在だった。

 ところが最近の日産は、新型車をほとんど発売していない。直近ではデイズルークスが2014年2月、セレナが2016年8月、リーフが2017年10月で、デイズルークスとセレナの間には2年半のインターバルがあった。

2018年3月にはセレナにe-POWERを追加予定。「オーテック」も追加設定される見込み

 2017年もリーフをフルモデルチェンジしただけで、新型車の発売は、グレード追加を除けば1年間に多くて1車種だ。

 そのために設計の古い日産車が増えて、マーチ/ジューク/エルグランドは発売から7年、フーガは8年、キューブは9年、ウイングロードは12年を経過した。緊急自動ブレーキもマーチやウイングロードは装着しておらず、エルグランドは設計が古い。

 このように今の日産は、さまざまなカテゴリーにおいて国内の新型車発売が滞り、売れ行きが全般的に下がった。2017年のメーカー別販売ランキングは、トヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次いで5位だ。最近はこの順位で定着している。

 ちなみにスカイラインは、かつての日産を代表する人気車で、1971年には11万4169台が登録されている。1か月当たり9514台だから、今日のノート(2017年の月販平均は1万1575台)に迫るが、今のスカイラインの売れ行きは当時の5%以下だ。

かつての名門車、スカイライン

■日本国内の売り上げは世界販売のわずか10%

 日産が国内で存在感を薄れさせた理由は、商品開発や販売面で、海外市場を優先しているからだ。日産の世界販売台数に占める国内の比率は、三菱やスズキが製造する軽自動車(NV100クリッパーリオやデイズ)を含めても10%にとどまる。

 最も需要が多いのは北米で、カナダとメキシコを含めると36%に達する。次いで中国が25%だ。欧州は業務提携を結ぶルノーの市場でもあるから比率は下がるが、それでも14%を占める。10%の日本よりは販売比率が高い。

 日産が国内の販売台数を下降させる一方、ホンダは2011年にN-BOXを発売して大ヒット。ダイハツやスズキも軽自動車を堅調に売り、今では国内で売られる新車の35~38%が軽自動車だ。この流れの中で、日産は販売順位を一層下げてしまった。

 従って2017年のメーカー別販売ランキングを登録車(軽自動車を除いた小型/普通車)だけで見ると、日産はトヨタに次いで2位になる。2位といってもトヨタの販売台数の約26%だから(登録車に限ればトヨタの市場占有率は46%だ)、誇れる売れ行きではないが、ホンダ/スズキ/ダイハツが軽自動車によって総台数を伸ばしていることが分かるだろう。その結果、日産は総台数で5位に押し下げられた。

 この厳しい国内の販売状況に接して、日産は戦意を喪失。リーマンショックも追い打ちをかけ、シエンタやフリードのようなコンパクトミニバン、キューブの後継車種を開発する計画もなくなったという。

現行キューブ、登場時には先進的なデザインで話題になったが……

■日本メーカーが日本で売れないと、海外でもピンチになる!?

 日産の思惑としては、北米と中国が堅調で、ロシアでも相応に売れているから、日本で必死になる必要はないのかも知れない。しかし日本のメーカーが国内市場を軽視したら、日本車メーカーではなくなってしまう。

 特に最近はウェブサイトが発達したから、日本国内で売られる日本車を、海外でもチェックできる。その結果、海外だけで売られる「日本で買えない日本車」は、価値が下がってきたという。要は日本国内で売っていないと、日本車として認めない風潮が出てきた。

 これは当然の成り行きだろう。例えば日本のユーザーがドイツ車を買う時も、「ドイツで走っていないドイツ車」に高い価値は認められない。今では海外の人達のほうが、日本における日本車の価値を認めているようにも思える。

 話を日産に戻すと、日本のメーカーなのだから、もう少し国内市場を大切にすべきだ。前述のようにキューブやマーチは改良されず、緊急自動ブレーキすら装着されない。技術的にはノートと同じe-POWERの搭載も可能だろうが、それも行わない。

2017年の販売を支えたノートe-POWER

 日産としては「コンパクトカーはノートだけでいい」という考えだろう。困るのは5ナンバー車を求める日産のユーザーで、ティーダは生産を終えて久しく、キューブも後継車種がない。5ナンバーセダンのブルーバードシルフィは、現行シルフィになって3ナンバー車に拡大された。

■出せば売れるよエクストレイルe-POWER!!

 このように日産の5ナンバー車が衰退する中で、ノートがe-POWERを設定したから、上質な5ナンバー車を求めるユーザーに絶好調で売れた。ほかに乗り替えるべき日産の新しい5ナンバー車が見当たらず、仕方なくノートe-POWERが選ばれたのだ。ノートe-POWERメダリストが、内外装が上質だったティーダの後継になれるわけはないが、愛車が古くなれば乗り換えないわけにはいかない。

 日産はこういった顧客の悲しい事情を汲み取るべきだ。国内向けの新車開発に潤沢な予算を投入できないなら、既存の車種を発展させて欲しい。

 2018年3月にセレナe-POWERを発売するなら、同じパワーユニットを搭載したエクストレイルe-POWERも開発できるだろう。

「エクストレイルにe-POWERが設定されるなら、すぐにでも欲しい」というユーザーは多い

 またSUVのエクストレイルは比較的売れる見込みがあるから、車高を少し下げたエクストレイルハイウェイスターがあってもいい。理屈で考えれば、SUVのエクストレイルにエアロパーツのハイウェイスターは合わないが、そんなことをいっている場合ではない。

 派生車種という意味では、ノートをSUV風にアレンジしたCギアには期待したが、実車を見て落胆した。もっとSUVらしさを強めないとダメだ。

 ノートCギアの最低地上高は130~155mmだが、180mm前後まで持ち上げて、タイヤサイズも15インチではなく16~17インチにする。ブラックのホイールアーチも太くして、SUVの力強さを強めたい。ノートCギアは中途半端だ。惜しいところで失敗している。

2017年11月に登場したノートCギア、いろいろ「惜しい」モデル

 またセレナやデイズルークスにも、Cギアのような仕様が欲しい。デイズハイウェイスターの姉妹車となる三菱eKカスタムには、アクティブギアが設定された。最低地上高は150mmで変更ないが、ブラックとオレンジの色彩を効果的に使ってeKカスタムをSUV風にカッコ良く見せている。

 少ない予算(それでも軽く数十億円単位ではあるが)でも、できることがあるだろう。何もしないのが一番ダメだ。

 2018年4月にはジュークがフルモデルチェンジを受け、e-POWERも設定して国内で売るという。2018年は、日産が海外ではなく国内市場で飛躍する年にして欲しい。

2018年の夏~秋頃登場予定の新型ジューク、はたして台風の目になれるのか……?

 

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