クルマ好きでももはや把握するのがかなり困難になりつつある、軽自動車のOEM。スズキのエブリイはマツダスクラムバンであり、三菱ミニキャブバンであり、日産NV100クリッパーでもあるわけです。もう書くと数学の証明問題のようで、文系の担当はだんだんとパニクってきてしまうのですが、なぜこのような混沌が生まれているのでしょうか? もちろん生産効率の向上など色々理由があるのはわかりつつも、ちゃんと説明するのは実はかなり難しい。そこで今回は渡辺陽一郎氏に軽自動車のOEMでいったい誰がトクをしていて、誰が損をしているのか? そんな疑問に答えます。
文:渡辺陽一郎/写真:日産
ベストカー2017年11月10日号「自動車メーカーアライアンス解読ドリル」
EVについて知っておくべき7のコト【いつが買い時? 航続距離は? 電池の劣化は?他】
■OEMでトクするのはダイハツ? それともスズキ?
メーカー間の業務提携には、技術面を含めていろいろなパターンがあるが、ユーザーにとって身近なのはOEM車だろう。例えばスズキワゴンRは、マツダにフレアとして供給される。ダイハツトールは、トヨタルーミー/タンク、スバルジャスティとして売られる。軽自動車やコンパクトカーは薄利多売の商品だから、OEMによって売れゆきを伸ばさないと開発しにくい事情がある。
損得勘定でトクをするのはOEM車を供給するメーカーだ。スズキやダイハツの商品企画担当者は、「OEM車では、供給相手のメーカーが販売促進などのコストを負担する。従って製造メーカーにとっては効率が抜群に高い」と口を揃える。最もトクをするメーカーは、以前はスズキだったが、今はダイハツだろう。スバルが軽自動車の開発と生産を終えて、すべての車種がダイハツ製OEM車になった。トヨタもダイハツから軽自動車の供給を受け、2017年1~6月の上半期で見ると、前年に比べて販売台数を約10%伸ばした。ルーミー&タンク、パッソなどもダイハツ製だから、ダイハツの組立工場は稼働率が高い。
ただし今のダイハツはトヨタの完全子会社だから、ダイハツだけがトクをしているともいい難い。そこまで考えれば、OEMのメリットを最も多く得ているのはスズキだ。軽商用車のスズキエブリイは、マツダスクラムバン、日産NV100クリッパー、三菱ミニキャブバンとして供給され、スズキを含めると4社が扱う現状がある。 残りはトヨタ/ダイハツ/スバルのグループと、OEM関係を結ばないホンダだ。スズキは供給可能なメーカーとは、すべて手を組んでいる。
こちらが大人気のダイハツタント。OEM先は下のスバルシフォン
こちらがOEM先のスバルシフォン。うーん、中身は同じクルマなのにちょっと違う
OEM軽自動車の早見表。これをすべて覚えているのはなかなか至難の業
■マツダは「魂動デザイン」の軽自動車がほしい!?
前述のように日本のOEM関係は「日産/スズキ/マツダ/三菱」と「トヨタ/ダイハツ/スバル」のグループに分けられる。このなかで日産と三菱は、合弁会社のNMKVが軽自動車を共同開発。生産は三菱が行って日産にも供給する。スズキは三菱にソリオをデリカD:2として供給するなど、グループ内で個別のOEM関係を築いている。
トヨタのグループでは、トヨタとスバルが86とBRZを共同開発した。86や日産の軽自動車ではOEMという表現はしていないが、供給相手のブランド商品を自社で製造するのだから、それに準じた提携と考えていい。OEMでは供給する側がトクをするが、供給を受ける側にもメリットはある。スバルやマツダはかつて軽自動車を製造していた時期があり、OEM車があれば、その乗り替え需要を守れるからだ。OEM車によって顧客の流出を防げる。
ただし初代CX-5を発売した後のマツダは、「魂動デザイン」と「SKYACTIV技術」に特化した商品開発で個性を強めた。その結果、スズキから供給されるOEM車と、マツダ自身が製造する商品の隔たりが拡大している。マツダは2010年には約5万台のOEM軽自動車を販売したが、2016年は4万台を下 回った。損得とは意味が違うが、マツダがOEM軽自動車を扱うメリットは薄れている。
そして危ない橋を渡ったのがホンダだ。OEM関係を結ばず、薄利多売な軽自動車のエンジンとプラットフォームを新開発して、先代N-BOXを中心とするNシリーズを作り上げた。先代N-BOXが大ヒットしたから結果オーライだが、失敗したら大損していた。Nシリーズのプロジェクトはきわめて挑戦的で、シビックタイプRなどよりも「ホンダらしさ」を感じさせる。
たしかに最近のマツダのデザインとはある意味、一線を画すのがこのスクラムワゴンかもしれない(OEM元はスズキエブリイワゴン)
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