10月8日別件の仕事で名古屋キャンピングカーフェアに行ってきました。筆者自身はクラシックカーやスポーツカーが好きなので、オートキャンプといったカテゴリーは門外漢なのもあり、まず会場に着いた時の率直な感想をいってしまうと、「アウェイ感が半端ない」でした。同時にこの文化はかなり日本では難しいだろうなぁというのが筆者の印象でした。これに関しては後程申し上げようかと思います。
キャンピングカーというと何を思い浮かべますか?
夢のガレージライフを実現させる「ガレージング・ピクニック 2nd」イベントレポート
キャンピングカーといってもCL読者の皆様が思い浮かべる車種は多様だと思います。ハイエースやステップワゴン等、一般的な1ボックス車やミニバンなどのワゴンモデルをベースに充電設備とベッドやラウンジシートとテーブルを装備し、簡易なキッチンまで備えた車両、日本ではこれがかなり大半を占めてるいようです。その一方では2t車クラスのトラックをベースに、シャワールームやトイレなどのトイレタリー設備まで装備した本格的なモーターホームと呼ばれるような車両。筆者の場合キャンピングカーというと、アメリカ文化の影響が色濃く残る幼少期の記憶で自動車図鑑や夕方に放映されていたアメリカのカートゥーンアニメによく出てきた、ウッド柄のステーションワゴンにヒッチメンバーを取付て引っ張るトレーラーハウスでしょうか。
やはり日本で人気なのはこの種のハイエースをベースにしたキャンパーで、外見はハイエースそのままながら簡易キッチンやベッドも備え、本格的オートキャンプが楽しめる装備でありながら、日常使用にも支障がないというのが各キャンパーメーカーからの売りのようです。
ただ…冒頭で「アウェイ感がする」と書きましたが、どうも今回の取材はいつもと勝手が違うというのを会場に一歩入ったところからずっと感じていました。誤解を恐れずにいうと「クルマのイベントを見ている気がまったくしない」のです。筋金入りのキャンパー愛好家であればおそらくそんなことはつゆほどにも思わないのでしょうが、筆者からするとこの日のイベントに展示されいているのはみなどれも同じ。ハイエースはどれも普通の小奇麗なハイエース、モーターホームも普通の2tトラックに居住スペースを架装しただけ、クルマそのものを見ると一部の業者がハイエースで社外品のホイールを替えたりしているだけ、ローダウンサスを出していたのは2社だけでした。
普通、自動車というのはSUV、クロカン、セダン、ミニバン、スポーツカー、果てはお買い物専用の軽自動車でも何かしら「クルマとして見せる要素」というのが少なからずあると思いますが、キャンパー車両には一切そういうことが無く、クルマを見てるというよりは家具を見てるという感じでした。あいにく筆者はそのジャンルの知識を持ち合わせていないため、キャンパー車両のベッドや対面シートのテーブル、キッチンを見てもどう評価したらいいのかわからないというのが実直な感想でした。案外インテリア屋さんや内装屋さんを連れてきて意見を伺ったほうが良かったかもしれません。キャンパーにとってはクルマというのは単にA地点からB地点に移動するための「装備」であり、思った以上にストイックな世界なのかもしれません。
海外と日本のオートキャンパー文化の違いとは何なのか
正直なところ、クルマを疾らせること、クルマを魅せることに悦びを見出すカテゴリーの人にはまったく理解の及ばない世界なのかもしれません。メルセデスベンツVクラスをベースにしたモーターホームにいたっては、1500万円近いプライスを下げている車両もありました。Sクラスが買えてしまう価格故に某編集の方とその話をしたところ
「正直、1000万円も出してVクラスのモーターホーム買うくらいなら、僕らなら自分の愛車で一泊3万円の旅館に300回泊まるほうがいいよねぇ(苦笑)」
それこそ、筆者自身も同じメルセデスなら鈍重なVクラスのモーターホームより、高原のウィンディングロードを縦目のメルセデスで駆け抜けながら旅館かペンションの窓から駐車場が見える部屋に泊まって、自分のクルマを眺めながら悦に入るというのを選ぶと思います。しかし、確実に海外にはオートキャンパーというクルマの文化があるということは必ず何かしらそうなるための土台なり要素なりがあるはずです。一体その違いはなんなのか…
オートキャンパーの業者の話を聞いたり、車中泊好きの友人の話を思い出したりしているうちにふと思ったのですが、そもそも日本にキャンパー仕様のクルマを乗り入れる事の出来る場所が少ないというのがあると思います。車中泊をよくする友人から聞くのが「環状族対策で高速道路のパーキングエリアが閉鎖される」「有料駐車場でも車中泊禁止にしている所がある」「郊外の公園の駐車場や野中の空きスペースにクルマを止めておくと警察から職務質問され移動を命じられる」「何もない草原に乗り入れたら地主がやってきて追い出された」等です。
つまり、せっかくキャンパー用のクルマを見ても筆者のようなキャンプ等の趣味の無い門外漢からすればオートキャンプ場のような元々そういう施設でしか使いようが思いつかないクルマにはいまいち興味が沸かないのです。ハイエースベースならまだしもVクラスや2tトラックベースのモーターホームとなると、移動中の駐車場確保でも苦労するのは容易に想像が付きます。大陸の国のようにモーターホームやトレーラーハウスでグランドツーリングのような長期旅行に出掛けて、湖畔や白樺並木で気に入った景色の場所を見つけたら、空きスペースにキャンパーを乗り入れてしばらくそこでキャンプ生活をしながら気の赴くまま次の行先に向かう…というわけにはいかないでしょう。
日本のツーリングのような、短期の休暇をやりくりして温泉旅館か安宿に泊まるのが前提ではオートキャンパーという文化はかなり難しいなあという感想に至ったのです。
欧州車勢でちょっと気になったクルマ
モーターホームタイプのキャンパーの欧州車勢でちょっと気になったのがこのフィアット・デュカトというクルマ。筆者は商用車には疎いのですが営業の方に聞くとヨーロッパではかなりメジャーな商用車で、日本でいうとハイエースのような、御馴染みのボックスタイプの商用車だそうで、モーターホームのベース車両としての人気も高くフィアットもモーターホームのベース前提で居住スペースを即架装できるようにヘッド部分だけのベアシャシーの状態でも販売しているそうです。
さすがに欧州でもこのクラスのキャンパーを購入できるのはかなりの富裕層に限られるかとは思うのですが、おそらくオートキャンパーの愛好家の層も我々日本人とは比べ物にならないくらい分厚いのでしょう。このデュカトのモーターホームの営業の方も「(キャンパーにおいても)やはりヨーロッパはクルマの…車輪の文化が違います」とおっしゃっていました。常々CL誌面上でも申し上げていますが、日本と欧米には数値上のスペックとは違う所に高くて分厚い壁があるのです。
日本には独自のオートキャンパーの文化がある
一方、日本には日本独自のオートキャンパー文化が芽生えつつあるのも事実です。最近はテレビ等でも取り上げられていることでご存知の方多いかもしれませんが「軽トラキャンパー」です。
軽トラックの荷台にDIYで作った居住スペースを載せ固定するだけ。居住スペースを350kg以内に収めてしまい荷台に乗せて固定すればただの「積載物」になるため、書類上の改造車としての変更申請も不要、普段は荷台から居住スペースを降ろして仕事用のトラックに使う事も出来ます。(ただし積載物なので走行中の居住スペースの乗車や車検証上の乗車定員を超える乗車は不可)また、恒久的な固定をすることで4名乗車に変更して軽トラックベースのモーターホームとして登録も可能だそうです。
しかし、これでも畳の和室(?)に簡易キッチンや走行充電装置があったりと、1~2人の旅行なら十分の居住スペース、まさしく箱庭の文化の日本が生み出したキャンパー文化と言っても過言ではないかもしれません。この最低限の広さは茶室を思わせる物すらあります。
正直なところ、今回のキャンピングカーフェアでもこの軽トラキャンパーに関しては出展が少なかったのですが、今後日本では大いに普及が期待できる形態のキャンパーではないでしょうか。これなら道の駅や車中泊禁止にはなっていない時間貸駐車場でも十分宿泊出来ます。事情を話せば軽トラックくらいなら…と土地の管理者に空きスペースを一晩くらいは使わせてもらえるかもしれません。オートキャンプには門外漢の筆者ながらもこの軽トラキャンパーの今後の動向だけは見守りたいと思います。
[ライター・カメラ/鈴木修一郎]
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