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「AZ-1」「ビート」「カプチーノ」、女子はどう見てた? 「ABCトリオ」根強い人気のワケ(写真20枚)

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「AZ-1」「ビート」「カプチーノ」、女子はどう見てた? 「ABCトリオ」根強い人気のワケ(写真20枚)

バブル末期を彩った3台の「軽スポーツ」

 1980年代後半から1990年代前半、バブル時代真っ盛りの頃には、その人の趣味嗜好や人柄、経済状況を計る強引な質問として、「(クルマ)何、乗っているの?」というものがありました。そして、それと同じぐらい強力で、女子にとってはかなりの「踏み絵」的質問ワードがあったのです。それが、「どんなクルマが好き?」です。

ハイオク車にレギュラー給油、どうなる? その逆は?

 さあ、ここでなんと答えるか。いえ、路上で声をかけてきたそのあたりの輩とかなら、べつにいいのです。「フェラーリ! でもV8モデルはありえないから」とでも言っておけばいいのですから。しかし今後の可能性を感じている相手には、ギラギラしたところは見せられません。一方で、「クルマ、あんまり詳しくなくて」などと言っているほかの子と同列の答えでは、一歩抜け出せません。しかも、あわよくば「あ、わりといい子じゃん」と思わせたいもの。

 欲望と葛藤が渦巻くそんな時、とっても便利なキーワードがありました。それが「ABCトリオ」だったのです。

「ABCトリオ」とは、マツダ(オートザム)「AZ-1」、ホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」の3モデルのこと。共通点は、2シーターのスポーツカーで、しかも軽自動車という点です。いずれも1991(平成3)年から92(平成4)年にデビューしているのですが、この付近の年代は、日産「スカイラインGT-R(R32型)」など、いまでも名車と人気の高いモデルが続々発売されています。まさに「日本車黄金期」という時代でした。

 また、モータースポーツ人気が高く、若者が仲間と一緒に峠を走ったり、サーキットを貸し切って走行会を開催したりすることが、しばしば行われていたのです。そんな機運の中で、「軽自動車でスポーツ走行ができるモデル」という、日本だけの文化が誕生したのでした。

「小さい『NSX』ってことでしょ?」

 マツダ「AZ-1」は、販売ディーラーが多チャンネル化していたマツダの中で、「オートザム」店の目玉として発売されました。「エキサイティングなマイクロクーペ」とうたわれたこのモデル、3台の中では車高が一番低く(1150mm)、重心位置は2名乗車時400mmと低重心で、軽快な操縦性を実現。最大の特徴は、やはりガルウィングのドア。女子を「スーパーカーみたい!」とときめかせるのに十分なインパクトがありました。

 ホンダ「ビート」の魅力は、スタイリングはもちろん、その技術に対する説得力でした。F1エンジンのテクノロジー応用から生まれた「多連スロットル」や、軽自動車初の4輪ディスクブレーキなどを、小さなボディにギューっと詰め込んでいます。発売から26年経った今年(2017年)になって、一部パーツの再生産がホンダから発表されるほどの人気モデル。女子的には、「小さい『NSX』ってことでしょ?」と、強引な解釈で憧れの眼差しを送っていました。

 そして、スズキ「カプチーノ」。ABCトリオ唯一のFRモデル(ほかはMR)で、軽自動車初の4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用。走りももちろんいいのですが、丸っこくてかわいいフォルムと、ハードトップ、Tバールーフ、タルガトップ、フルオープンと4通りが楽しめるルーフ構造が「おしゃれ!」と親しまれていました。

 つまり、「軽はイヤ」なんて言っちゃう高ビー(高飛車)な子じゃないのよ、とアピールしつつ、走り好きの男子の趣味に理解がある風を装えるため、「どんなクルマが好き?」と言われたときに、ABCトリオは最強の答えだったというわけです。

「2シーター」も大きなメリット

 ABCトリオがさらに優れていたのは、女子が所有してもいい雰囲気のクルマだったということ。「助手席専門なんてつまらない! なんなら、ジムカーナ(編集部注:舗装路面で行われるモータースポーツの一種。1台ずつコースを走行しタイムを争う。公道走行可能な、つまり普通のクルマでの競技が主流)とかついて行っちゃいたい!」というアクティブな女子でも、「男子よりも『格上』のクルマに乗って『生意気』と思われたくない……」というのが、昭和生まれの乙女の気遣い。ABCトリオなら、「軽だから私でも買えるし、小っちゃくて運転しやすいし、いろんなカラーリングがあってかわいいし!」という言い方で、自然に無難に所有できたのです。

 ついでにもうひとつ。彼氏が「(クルマ)何、買おうかな」と言っているときにすすめるのにも、ABCトリオは最適でした。うっかり高級ドイツ車の名前を出して、経済観念の無いミーハー女子と見られないために、というのはもちろんですが、平たいボディにアフターパーツテンコ盛りのとんでもない方面に行かれないためにも、「走るのが好きならこういうのがいいんじゃない?」と、手綱を引っ張るのに有効だったのです。もちろん、2シーターなら、「あ、オレも乗っけてよ」的な邪魔者を避けられるというメリットが一番ですが。

 兎にも角にも、褒めてよし、乗ってよし、勧めてよしの、女子の好感度アップ最強兵器だったABCトリオ。環八のM2(編集部注:マツダ車のチューニングカーなどを企画、販売していたマツダのグループ会社。特徴的なデザインが目を引く環八沿いのM2ビルに入っていた)でフォグランプを付けてとんでもなくかっこよくなっているのにときめいたり、MTしかなくて泣く泣く諦めたり(編集部注:「AZ-1」「ビート」は5速MTのみ、「カプチーノ」も当初は同様だったが、後期モデルから3速ATを追加)、「中身『アルト』じゃん」と言われて喧嘩したり(編集部注:とはいえ「AZ-1」「カプチーノ」の“中身”はスポーツモデルである「アルトワークス」用に開発された規制限界のターボエンジン)、思い出は尽きませんが、あの時代、間違いなく、いろんな意味で「女子の味方」だったクルマたちです。

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