■エレガントなスタイルで安全装備満載の「スカンジナビアンコンパクト」
街中での取り回しのしやすさや、ハッチバックスタイルを基本とした、広いラゲッジスペースや豊富なシートアレンジなど、使ってみると生活にぴったりとフィットするのがCセグメントモデルの魅力。それだけにこのクラスには、世界的に見ても各メーカーの顔ともいえるモデルがそろっています。
ボルボの新型SUV「XC40」がリアルに凄い! 全てに完璧を求めるボルボの自信作
代表モデルとしてすぐに思い浮かぶのが、フォルクスワーゲン「ゴルフ」やメルセデス・ベンツ「Aクラス」、BMW「1シリーズ」などのドイツ勢。フランス勢ではプジョー「308」やルノー「メガーヌ」など、走りにこだわる質実剛健なモデルから、しなやかな足を持ち味とする個性派まで、じつに多彩な顔ぶれをもち、強豪がひしめいています。
そんななか、独自な味わいを持つ北欧を代表するメーカー、ボルボから、2013年に日本投入されたのがV40です。
流れるようなボディフォルムは、曲線を基調としたフランス車とは一線を画しながらもエレガントで、それでいながらドイツ車のような力強さもあわせ持つなど、そのスタイリングはデビュー当時の新鮮さをいささかも失ってはいません。
リアまわりのデザインは、とくにボルボがこだわって作り込んだ立体形状で、コスト的にも相当かけられていたといいます。個性派ぞろいのCセグメント市場に送り込む強い思いが、このフォルムひとつにも込められた意欲作といえるでしょう。
もちろん、ボルボの安全神話もしっかりと受け継がれています。デジタルカメラによる車線認識機能を持つレーンキープアシスト(LKA)は、65km/h以上で車線逸脱時にステアリング修正をおこないます。
さらに急接近車両警告機能、ロードサインインフォメーション、アクティブハイビーム、ブラインドスポットインフォメーション、歩行者保護のため、衝突時にはエアバッグが開くアクティブボンネット、全車速追従機能付きACCなどを標準装備。ミリ波レーダー、赤外線レーザーを使って衝突回避、被害軽減ブレーキをいち早く採用するなど、ライバルたちを圧倒する安全装備を満載しているのも特徴となります。
ラインナップは現在、1.5リッター直噴ターボエンジン搭載で出力違いの「T2」「T3」、2リッターディーゼルターボエンジン搭載の「D5」、2リッター直噴ターボエンジンを積む「T5」からなっています。
今回は、このV40シリーズが2019年で生産終了するにあたり、T3、T5にファイナルエディションが用意されました。
試乗したのは「T3 INSCRIPTION(インスクリプション)」をベースに、本革シートやパノラマガラスルーフを特別装備、17インチアルミホイールを採用して、新車5年保証をつけた「T3クラッシックエディション」。435万9259円(消費税込)のモデルです。
■熟成された足は、急峻なワインディング走行にも応える
試乗ルートは、長野県・松本市を起点として、東京まで戻る片道になります。
1.5リッター直噴ターボユニットと、進化し続けてきたフットワークを確認すべく、松本市内から浅間温泉を抜け、美ヶ原高原に向かうワインディングへと進路をとりました。
思いのほか狭くてタイトターンが続く山岳路では、このサイズ感がピッタリ。ロックtoロックが3回転に満たないクイックなステアリングギアレシオは、小さなコーナーでもハンドルを握り返すことなくクルマの鼻先を内側に向けられるし、危険回避の時の反応も早くなります。
乗り心地に関しては、2013年の登場時よりもカドがとれてきたとはいえ、依然大きな入力では突き上げ感が残ります。一方、路面インフォメーションに優れていて、長野県の急峻な山道を駆け上がるのにはちょうどよく感じました。
ダイレクトな接地感は、152馬力のパワーを確実に伝達してくれて、旋回中のトラクションは意外なほどしっかりとしていて、ステアリング操作に対して進路の安定性も高い。
パワー的には、低回転からジワッと立ち上がってくることで、日常的な走りやすさに優れています。組み合わされる6速ATは、DCTのような変速ショックは見られない一方、ファイナルレシオが高速寄りのせいか、カバーレンジが広くて、各ギアのホールド時間が長く感じます。
瞬発力を得たいときには、車速が落ちるのを待つ必要があり、最新の多段ギアに慣れた身からすると、軽快とまではいきません。ただしこれは、選んで走行した林道の上り勾配が急だったこともあります。
一方、大きめのコーナーが続くワインディングや、高速道路での移動では100km/hで6速1700回転程度でのクルージングが表しているように、粘い強い走りを楽しめました。
とくに眺めのよい丘陵地帯を走るときには、一定のギアをキープしたまま景色を見る余裕もできるし、剛性感の高い足元が路面をしっかりつかみ、ステアリング操作も落ち着いていて走りやすい。最終モデルとなったことで、硬めの乗り味のなかにも、落ち着いた走りを作り込む味つけが施されています。
高速道路では、アクティブクルーズコントロールなどの運転支援を積極的に使いながらのドライブとなりましたが、エンジンの余力もあり快適で、さらに日本車の運転支援以上の出来映えに感心しました。
※ ※ ※
2013年デビューというロングセラーモデルであることに加えて、次期モデルの予定がないことを聞くと、このファイナルエディションの存在感は大きいです。
人気SUVのボルボ「XC40」を選ぶユーザーも多いのですが、普段使いを考えると、このV40はやはり捨てがたく感じます。
強豪ひしめくカテゴリーゆえ、ボルボが作り込んできたCセグメント、V40の最終モデルに、いま注目が集まっても誰も不思議とは思いません。2020年の春までの在庫は確保していると聞きますが、生産は終了しているので、購入を検討している人は早めにディーラーで相談したほうがいいでしょう。
まだまだV40から目が離せない。V40の魅力をあらためて感じたロングドライブでした。
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