■1800人以上のスバル WRXファンが愛知県に集結した一大イベント
晴天に恵まれた2019年11月9日、愛知県新城市のふれあいパークほうらいにて「WRXファンミーティング2019」がおこなわれました。
スバル新型「レヴォーグ」世界初公開! 1.8Lターボと新世代アイサイト搭載で2020年後半発売
長年に渡り歴代WRXに搭載されたEJ20型エンジンの生産終了に伴い、WRX STIの受注も2019年12月23日で終了。EJ20ファン、そしてWRXファン達に感謝の気持ちを伝える場として、スバルが企画したイベントです。
このイベントは開催の約2週間前に告知されたにも関わらず、抽選を通過した1000台強の歴代WRXと約1800人のWRXファンが全国から集まりました。
会場に到着すると、会場内の連絡道がWRXで渋滞しています。これは単にWRXを駐車するのではなく、モデルとボディカラーを揃えて駐車するという試みによるものです。
渋滞によりイベントの開始が予定より15分遅れてしまいましたが、駐車場はまとまりのある美しい景色になりました。
イベント開始前の駐車場を見ると、自動車メディアでよく目にする開発部門をはじめとするスバルやSTIのスタッフがユーザーのところに出向き、ユーザーと直接ディスカッションをしています。
このイベントにはスバルとSTIのスタッフが各部門から総勢30人ほど訪れており、ユーザーとメーカーとの距離の近さにスバルらしさを強く感じました。
イベントの柱は、歴代WRC参戦車両やニュルブルクリンク24時間レース参戦車両の展示」、EJ20開発スタッフによるトークショー、「スバルのWRC参戦で華々しい戦績を残したペター・ソルベルグ氏のトークショーとスペシャルデモランなど豪華なものです。
■WRXファンミーティング2019のトークショーで印象に残った言葉とは
まず、EJ20型エンジンに深く携わったスタッフによるトークショーがおこなわれました。
登壇者は現STI社長でスバル時代にEJ型エンジン、現在スバルの主力となっているFAとFBエンジン開発にも携わった平岡泰雄氏、スバルで開発ドライバーを長年務め現在はSTIでニュルブルクリンク24時間レースの総監督などを務める辰巳英治氏、スバルでWRXの商品企画を担当する嶋村誠氏です。
・平岡氏
「1989年に初代レガシィを出したときに、車体と同時にゼロから作ったエンジンがEJ型エンジンでした。この時はコストの安い直列4気筒にするという意見もありましたが、中嶋飛行機から始まったスバルのルーツであり、重心の低さによる高い運動性能などのメリットが大きい水平対向エンジンにしたことは、長期的に見て大英断だったと思います」
・辰巳氏
「ニュルブルクリンク24時間レースを走るWRXが11回走って6勝を挙げている大きな原動力は、EJ型エンジンによるものが大きいです。EJ型エンジンは信頼性・耐久性が非常に高く、レース中のエンジントラブルは1度もありません。
エンジンが壊れてしまうとテストもできず何も進まないので、これは非常に素晴らしいことです。またスバルの水平対向エンジン+AWDというシンメトリカル構造はニュルブルクリンク24時間レースでの大きな武器になっています。ですからスバルの水平対向エンジン+AWDは永遠に続くと思っています」
・嶋村氏
「私は入社翌年からWRCプロジェクトに携わりましたが、初めはEJ型エンジンのパワー不足などで大変でした。1993年のニュージーランドラリーでの初代レガシィ最後のWRCでのスバル初優勝などもいい経験で、モータースポーツというのはクルマだけでなく人が鍛えられるという意味で、量産車へのフィードバックに繋がっています」
※ ※ ※
続いて、スバルからWRCへ参戦し、2003年にワールドチャンピオンを獲得したペター・ソルベルグ氏と、ソルベルグ氏のチームメイトを務めたこともあり、現在はTOYOTA GAZOO Racing WRTのチーム代表を務めるトミー・マキネン氏が登壇するトークショーがおこなわれました。
・ソルベルグ氏
「EJ20型エンジンは市販車用としてもモータースポーツ用としても素晴らしいエンジンでした。このエンジンは今年で長年の歴史に幕を閉じますが、それはエキサイティングな新しいことのスタートであると私は思っています」
・マキネン氏
「スバルは素晴らしいチームなので、ここでスタッフにまた会えたことがとても嬉しいです。スバルとの縁はフィンランドでスバルのクルマ販売や、ニュルブルクリンクでタイムアタックをしたことから始まっています。
いまでもトヨタのチームでレッキ(ラリーのコースを下調べする試走)に使うクルマにWRX STIを使ったりと、縁は続いています。スバルチーム時代ソルベルグは愉快で速く素晴らしいドライバーで、ベストなチームメイトだったと思っています」
トークショーが終わると、ソルベルグ氏には引退のメモリアルとしてSTIの平岡社長から花束が贈呈されました。
■ペター・ソルベルグ氏のスペシャルデモランはまさに圧巻のひとこと
現行WRX STIで辰巳氏がコースを紹介した後、ソルベルグ氏がハッチバックの先代WRX STIのグループNラリーカーで会場内の連絡道を走行しました。
初めて乗ったクルマでありながら、連絡道内の道幅6メートルほどのロータリーでコマのような速さでグルグルと回るドーナッツターンを連発。拍手喝采のなか、スバル車のDNAである乗りやすさやコントロール性の高さを披露してくれました。
さらにスペシャルラン後は、スバルチーム時代と同様にドアを開けたままクルマを走らせるハコ乗りと、屋根に仁王立ちするパフォーマンスも披露し、レーシンググローブとバラクラバ(ヘルメットの下に着けるフェイスマスク)を会場に訪れていた子供にプレゼントするなど、現役時代と変わらない旺盛なサービス精神も見せてくれました。
ソルベルグ氏のデモランの後は、次期レヴォーグとWRXの開発責任者を務める五島賢氏、エンジン開発をおこなう第二技術部副本部長の小倉明氏、商品企画本部長の阿部一博氏が登壇。WRXファンはもちろんのこと、クルマ好きには聞き逃すことのできないトークショーになりました。
・五島氏
「東京モーターショー2019でプロトタイプを公開した次期レヴォーグは、『継承と超革新』というコンセプトで開発していますが、次期WRX、とくにSTIは超革新以上の革命を目指して、皆さんが驚くようなクルマになるよう開発しています。マニュアルトランスミッションもスバルのDNAですので、継承できたらいいなと思っています」
・小倉氏
「昨今の自動車業界は電動化が騒がれていますが、当面は内燃機関が無くなることはなく、エンジン開発は非常に重要です。次期WRXにはパワーだけでなく、燃費や排ガスのクリーンさもEJ型以上のエンジンを搭載します。ちょっと時間はかかるかもしれませんが、みなさん期待して待っていてください」
・阿部氏
「現代のクルマは環境性能やコネクテッドといった、クルマを単に走らせる以外の要素も重要です。そういった事情もあってトヨタさんと提携しているのですが、トヨタさんとの提携をネガティブに捉えている人もいるかもしれません。
でもそれはむしろ逆で、我々はトヨタさんと結びつくことによって、いままでよりもっと楽しいクルマ造りができるようになるのです」
※ ※ ※
「WRXファンミーティング2019」は、始まりから終わりまで、スバルがいかにユーザーを大事にしているかヒシヒシと感じる素晴らしいイベントでした。
また、最後のトークショーではWRXをはじめとするスバルの将来に対して、「楽しさは絶対に残す」という開発陣の強い想いが印象的でした。
時代によってクルマに対する夢や楽しさの形は変わってきますが、スバルはクルマ造りが難しくなる厳しい時代でも「スバルらしい楽しいクルマ」を造り続けてくれることでしょう。
WRX STIは一旦絶版車種となりますが、次期レヴォーグやその先にあると思われる次期WRXの登場を楽しみに待ちたいところです。
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