走行性能が非常に高いことで話題となっている、新型ノート。前型のE12ノートのいい部分を受け継ぎつつ、弱点であった乗り心地とノイズを大幅に改善し、ライバルであるヤリスやフィットを凌ぐ実力で、クルマ業界を震撼させている。
この新型ノートの高い走行性能は、新たに導入されたプラットフォーム、「CMF-B」による効果だ。CMF-Bは、基本性能の向上と、コスト低減を目的として、ルノー・日産のアライアンスの元で共同開発された、上級小型車向けプラットフォームである。
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今回は、CMF-Bの何がすごいのか、紐解いていきたいと思う。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、RENAULT
【画像ギャラリー】走りが期待できるコンパクトカー!! CMF-Bをプラットフォームとするクルマをギャラリーでチェック!!
「走り」にこだわってつくられた
昔からコンパクトカー需要が高い欧州地域での人気車種といえばVWゴルフだが、それに続くのがルノー「クリオ(日本名:ルーテシア)」だ。欧州地域だけでも年間30万台以上(2019年)が販売されており、ルノーとしては主力となるコンパクトカーだけに、一切の妥協が許されないクルマでもある。
2012年に発売された現行型ノートから8年、2020年12月に新型へとフルモデルチェンジする 第2世代e-POWERを搭載する
Bセグのなかでも力強い走りがルーテシアの特徴
新型ノートの開発関係者に聞くと、新プラットフォーム開発の主導はルノーであるが、そのプラットフォームをベースに、日産独自で改良を施しており、全く同じ車台をポン付けしたわけではないという。もちろん、目に触れるエクステリアやインテリアのパーツなどは、それぞれのメーカーが作っている。
新型ノートのチーフビークルエンジニアである、渡邊 明規雄氏も、新型ノートのe-POWER 4WDの実力には自信を持っている
CMF-Bは他にも、日産の2代目ジュークや、K14マイクラ、ルノーのキャプチャーにも採用されている。日本よりも常用スピードレンジが高い欧州向けのため、走行安全性と快適性にこだわり、「質感の高い走り」を狙ってつくられている。
ちなみに、欧州メーカー勢は、協業関係にあるメーカー間で、プラットフォームやパワートレインを共用化し、開発費低減やグループとしてのコストダウンを狙うのが当たり前になっている。
例えば、プジョーやシトロエン、オペルなどが属するPSAグループでは、B/Cセグメントにあたるプジョー208やDS3、オペルコルサが、「CMP(コモンモジュラープラットフォーム)」を使用しており、コスト低減を図っている。
フロントサブフレームの車両前方の支持部のスパンを長く伸ばし、なおかつ、強靭なサイドメンバーからサブフレームへと迎えを出していることで、サスの横剛性向上や、路面外乱に対する余計なアライメント変化の抑制が狙える(日産の公開資料より)
「太い骨格」が特徴
クルマのプラットフォームは、人間でいうと「胴体」のことだ。
人間は、体幹を鍛えると、筋肉のバランスが整い、カラダ全体の安定性が高まる、という。クルマも同じで、プラットフォームが強靭だと、各部を的確に動かすことができる。心臓に相当するのがエンジン、腕や足がサスペンション、手や靴に相当するのがタイヤとして、それらすべてがつながる胴体のポテンシャルが、そのクルマの性能のベースを作っているのだ。
新型ノートのプラットフォームを見ると、サスペンション形式は、フロントがストラット型、リアがトーションビーム型と、ごく一般的ながら、フロントのサブフレームが大きく前方に伸びていることが分かる。
これまでのサブフレームは、この半分程度の大きさであったが、車両前方の支持部のスパンを長く伸ばし、なおかつ、強靭なサイドメンバーからサブフレームへと迎えを出していることで、サスの横剛性向上や、路面外乱に対する余計なアライメント変化の抑制が、より可能となっているはずだ。
CセグやDセグでは見られる大型サブフレームを、Bセグへ採用する、という、相当な性能向上を図ったことがわかる。
新型ノートはナチュラルなハンドリング特性であり、走りの質感が高く感じられる。それは、強靭な車体と、サスペンションやサスペンション横剛性を上げたことが要因だという(日産の公開資料より)
他にも、太いサイドシルやフロア面横方向へ入ったクロスメンバー、リアのトーションビームが取りつく部分のリアサイドメンバーの太さなど、Bセグとは思えないほど強い骨格が印象的だ。
車体との取付ポイントが少ないこの手のリアサスは、太い梁の真下に、取付点をレイアウトすることが操安性能や音振性能上重要となるが、新型ノートでは、基本をしっかりと抑えた位置へレイアウトされている。
また新型ノートは、ロードノイズの遮音性能も秀逸だ。新型ノートでは、旧型に対して車体剛性が30%向上しているが、この車体剛性の向上は、衝突安全性はもとより、音振性能への寄与が大きい。
人間は、体幹を鍛えると、筋肉のバランスが整い、カラダ全体の安定性が高まるという クルマも同じで、プラットフォームが強靭だと、各部を的確に動かすことができる
弱い骨格だといろいろな振動モードが生じてしまい、余計なバイブレーションやノイズを消し切ることが困難になり、タイヤやサスペンションのセッティング代に無理強いをすることになってしまうが、車体が強ければ、それらをする必要がなく、その分、走行安全性能や乗り心地性能へと振り分けることもできるので、より走りへと特化できるのだ。
e-POWER 4WDは、日産の秘密兵器
新型ノートは、当初はFFのみの発売だが、2021年2月に、4WDが追加される予定だ。実はこれにも、新型ノートの隠し玉ともいえる新技術が盛り込まれている。
新型ノートの開発担当者によると、太い骨格と、後輪用モーターのサイズアップによって、車両後部のフロアレイアウトが、かなり難しくなったそうだ。しかし、そのおかげで、E12にあったe+4WDのモーター出力3.5kWに対し、約14倍の50kWまでパワーアップする、という、とてつもない進化を、新型ノートは実現している。
太い骨格と、後輪用モーターのサイズアップによって、車両後部のフロアレイアウトが相当難しかったという だがその分、e-POWER 4WDのパフォーマンスは大いに期待できる(日産の公開資料より)
なお、リアに50kWのモーターとなると、フロントモーターの出力(85kW)と合わせれば、135kW級(最大出力は約180PS級、最大トルクは400Nm近いと推定)にもなり、新型ノートではオーバースペックにも感じられるが、実際には、出力は絞って使うことになるそうだ。
おそらく、後続の「新型エクストレイル」で、本領発揮をすることだろう。このe-POWER 4WDは、今後の日産の秘密兵器になる、と思われる。
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