レンジローバー・スポーツに新たなモデルが加わった。ブランド史上最もパワフルかつダイナミックで、最高のパフォーマンスと比類なき走破性を備えたという“SV”の実力は如何に?
サーキット走行も許容するスーパースポーツSUV
【国内試乗】こだわりのクリエイターが語る、プレミアムSUV+プラグインHVのある生活「ランドローバー・レンジローバー・ヴェラール」
新型レンジローバー・スポーツSVでポルトガルのアルガルヴェ・サーキットを走る。
もっとも、いくらハイパフォーマンスモデルとはいえ、相手は全高1.8mオーバー、車重は2.5トンの巨漢である。ひとたびタイヤのグリップが失われたら、どんな挙動を示すか想像もつかない。そこで私は、やや慎重すぎるペースから走り出し、徐々にスピードを上げていくことにした。
しかし、サーキット走行用に装着したミシュラン・パイロットスポーツS5はなかなか音を上げる気配を見せない。やがて、かすかなスキール音とともに、ステアリングやシートからグリップの抜け欠ける予兆が伝わってきた。そこからさらに攻めれば、ときには後輪が、ときには前輪がおだやかにスライドし始めるが、ステアリングやスロットルペダルを使ってこれをおさめるのは実に容易。しかも、このときはかなりの横Gが身体にのしかかっていた。
「このタイヤを装着している状態では最大1・3G、標準装着のパイロットスポーツ・オールシーズンでも1.1Gを記録します」
助手席に腰掛けたインストラクターが、私の心を読み取ったかのようにそう話しかけてきた。
1.3Gといえば、最新のスーパースポーツカーに匹敵する数字。これを、本格的なオフロード性能も確保しながら達成したのだから、その技術力は驚異的といって差し支えないだろう。
実は、私が必要以上に慎重なペースでサーキットを走り始めたことには理由があった。これに先だって、レンジローバー・スポーツSVで公道を走っていたのだが、しなやかな足回りがもたらす乗り心地があまりに快適だったため、「これはサーキットでの限界走行では腰砕けになりかねない」と予想していたからだ。ところが、私のそんな心配が杞憂に終わったことは、前述のとおりである。
なぜ、レンジローバー・スポーツSVは、公道でも驚くほど快適なのにサーキット走行も楽々とこなせるのだろうか? その最大の秘密は、新開発の6Dダイナミック・エアサスペンションにあるといって間違いない。
これは、サスペンションダンパーの油圧回路を前後左右で結びつけることにより、ロールやピッチといったボディの動きを自ら抑えるシステムのこと。その基本的な考え方はマクラーレンのプロアクティブ・ダンピングコントロールと共通している。さらにいえば、このダンパーシステム自身がロールを抑える効果を持っているため、アンチロールバーが不要となっている点もマクラーレンと同じだ。
おかげでレンジローバー・スポーツSVは圧倒的な万能性を発揮。ちなみに、アンチロールバーを持たない6Dダイナミック・エアサスペンションにはオフロード走行時のロードホールディング性を改善する効果もあるので、1輪が浮き上がるような過激なモーグルコースもなんなく走破できた。
BMWと共同開発した4.4LV8エンジンは絶対的な性能が優れているだけでなく、いついかなるときでもレスポンスよく柔軟にパワーを生み出してくれて扱いやすい。レンジローバー・スポーツSVには、まさにうってつけのパワーユニットだ。
そうした走行性能にも増して強調しておきたいのが、内外装のエレガントな仕上がりにある。高性能モデルであることを誇示するアイテムはほぼなく、「よく見てみれば」そうと気づく小粋な演出ばかり。しかも高品質でセンスのいいインテリアをそのまま受け継いでいるのも嬉しいところ。その出で立ちは、まさにスポーツを愛する英国紳士そのままといえる。
【SPECIFICATION】ランドローバー レンジローバースポーツSV エディションワン
■車両本体価格(税込)=24,740,000円
■全長×全幅×全高=4970×2209×1814mm
■ホイールベース=2997mm
■トレッド=前:1714、後:1723mm
■車両重量=2485kg
■エンジン型式/種類=─/V8DOHC32V+ツインターボ
■総排気量=4395cc
■最高出力=635ps(467kW)/6000-7000rpm
■最大トルク=750Nm(76.5kg-m)/1800-5855rpm
■燃料タンク容量=90L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ=前:275/40R23、後:305/35R23
問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン TEL0120-18-5568
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