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走行距離227キロの奇跡のフェラーリ! 未開封・保護フィルムつきの「エンツォ」のオーナーは日本人でした

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走行距離227キロの奇跡のフェラーリ! 未開封・保護フィルムつきの「エンツォ」のオーナーは日本人でした

エンツォ・フェラーリのプライベートセール

新型コロナ禍が世界を大きく変容させてしまった数年前以来、「プライベートセール」とも呼ばれる単一ロット、あるいはごく少数ロットのオークションが、海外のオークション会社から発信されるようになった。そして、ようやく通常の対面型オークションが復活を遂げた今となっても、主にオンライン上で盛んに行われているという。

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RMサザビーズ社でプライベートセールを行う小規模販売部門「サザビーズ・シールド」では、これまでホワイトとマットブラックでそれぞれワンオフ製作された「エンツォ・フェラーリ」を販売してきた実績があるそうだが、2023年3月15日スタート/17日クローズしたセールでは、1台のこの上なく特別なエンツォ・フェラーリが出品されたようだ。

最後のピニンファリーナ製、最後の純ICE搭載フェラーリ・スペチアーレ

1984年の「288GTO」に端を発し、「F40」、「F50」と着実に歩みを遂げてきたフェラーリの「スペチアーレ」モデル。2002年のパリ・サロンにて発表されたエンツォは、21世紀への新たな一歩を踏み出すモデルだった。

ピニンファリーナ製スペチアーレとしては最後の作品となったカーボン製ボディの下には、当時最新鋭のティーポF140B型6L V型12気筒エンジンが搭載され、専用開発の6速シーケンシャルMTと組み合わされて、創業者の名を名乗るのにふさわしい圧倒的なパフォーマンスを発揮した。

フェラーリは、同時代のF1GPで培ってきた技術を導入することを意図し、軽量化と性能向上のために宇宙時代の素材や革新的なソリューションを盛り込んだ。モノコックはカーボンファイバーとノーメックスハニカムで構成されており、その重量はわずか約90kg。ボディワークはピニンファリーナ社の風洞で完成されたもので、カーボンファイバーとケブラーで編まれたパネルで構成されている。

前述のV型12気筒エンジンは、1970年代の「712Cam-Am」以来、フェラーリにとっては最大排気量のエンジンであり、ニカシルライニングを施したシリンダーウォール、チタン製のコンロッド、トルクアップのためのテレスコピック式インテークマニホールドなど、F1マシン譲りのコンポーネンツがふんだんに使われ、最高出力は660ps/7800rpm、最大トルクは67.0kgm/5500rpmを誇った。

この恐るべきエンジンは、フェラーリが培ってきた伝説的なエンジニアリングの典型。そして、マラネッロでは最後となる自然吸気・非ハイブリッドのV12ハイパーカーに搭載され、その歴史的重要性を証明することになった。

当初予定された399台に加えて、2004年にローマ法王ヨハネ・パウロ2世のために作られた1台も生産されたエンツォの大半(全車両の70%以上)は「ロッソ・コルサ」で仕上げられたが、一部車両はオーダー主のリクエストに応じて、ほかの色にペイント。「ジャッロ・モデナ」、「ネロ・パステロ」、「ロッソ・スクーデリア」は人気のオプションカラーとして一定数が製作されたいっぽう、「アルジェント・ニュルブルクリンク(ニュルブルクリンク・シルバー)101/C」は、生産台数の2%以下、わずか9台しか塗られなかった希少な色とされている。

日本で過ごしてきた奇跡のエンツォながら、入札は不調に終わった?

このほどサザビーズ・シールドのプライベートセールに出品されたエンツォ・フェラーリは、シャシーナンバー#132662。

新車として日本のコレクターのもとに納車されたのち、一度も走行登録されることなく、その生涯のほとんどを人目に触れることなく過ごしてきた。そのため、今となっても文字どおり「包装されたまま」の工場出荷時のコンディションで出品されることになった。

走行距離はわずか227kmで、そのほとんどは、納車前にマラネッロ工場周辺で行われるロードテストで刻まれたものとされる。

またカーボンファイバーの地肌がむき出しのドアシル、イグニッションキーに巻かれたテープ、ブレーキとアクセルペダルなどには、工場出荷時に貼られたブルー半透明の保護フィルムの多くがそのまま残っている。

さらに、真っ赤な純正ボディカバー、工場出荷時からジップロックに収められた各種の取扱説明書とスペアキー、純正の3ピース式ラゲッジセットなどが未開封のまま付属しているのも、正統性を物語る大きなポイントといえるだろう

すべてのフェラーリ・エンツォがコレクターズアイテムであることは間違いあるまい。しかし、今回の出品車両で何より注目を集めるのは、昨今注目の希少リバリー車であることだろう。

新車時に、アルジェント・ニュルブルクリンク101/Cのボディカラーで仕立てられたエンツォはわずか9台。しかも標準指定の「ネロ(黒革)/ロッソ(赤ファブリック)」コンビではなく、「クォイオ(ナチュラルブラウン)」のレザー内装が施されたのは、この個体のみと伝えられているのだ。

保護ラッピングをつけたまま保管された正真正銘の新車コンディション

「時代を超越したアルジェント・ニュルブルクリンクのボディカラーに、エレガントなオプションが施された#132662は、現時点でも非常に人気が高いうえに、これから将来にわたって永遠に敬愛されるであろうフェラーリのひとつ。工場で保護ラッピングが施されたままという驚くべきコンディションで、希少性とオリジナリティの両方を重視するコレクターにとっては、まさしく究極の1台となる……。」

そんな触れ込みとともに、サザビーズ・シールドはこの競売を「No Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定。さらにエスティメート(推定落札価格)も明示しないという、いかにもプライベートセールらしい秘匿性重視の出品としていた。

ところが、オンライン形式の入札は3月15日に解禁され、きっちり3日間・72時間後に終了となったものの、それから3日を経ても5日を経ても「Result(結果)」が発表されないまま、現在でも継続販売となっている。つまり売り切りだったはずのオークションながら、なんらかの理由で入札を停止したことになる。

これはあくまで推測の域を出ないのだが、思いのほか入札価格が伸びなかったことに対応し、出品者とオークショネア側の営業担当者でいったん撤退し、継続販売とするという判断が下されたのであろう。

このように、出品者の意向がより色濃く反映されるプライベートセールは、今後もっと増えてくるだろうと思わせる、実に興味深いオークション結果となったのである。

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