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初試乗 アストン マーティン・ヴァンテージ ライバルは911

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初試乗 アストン マーティン・ヴァンテージ ライバルは911

もくじ

ー 新型ヴァンテージ ライバルは911
ー ボディサイズは911が有利
ー 独自デザインとスポーツカーらしさの融合
ー 重量配分は50/50 サーキットでは思いのまま
ー 公道でも輝くモデル
ー その差は優劣ではなく「違い」
ー 番外編 ツインターボV12を積む日がくる?

メーカーばかりの注目、理不尽? サプライヤー「GKN」 脇役の矜持

新型ヴァンテージ ライバルは911

ポルシェ911よりも素晴らしい? これこそまさにアストン マーティンCEOのアンディ・パーマーから彼のエンジニアたちへの質問であり、われわれが知りたいことだ。

では、その答えは? エンジニアたちがパーマーに、そしてわたしがこれからお伝するように、答えは簡単ではない。いくつかの点で答えはイエスであり、911よりも素晴らしい。そして、多くの点では答えはノーだ。

しかし、ほとんどの部分で両者の間にあるのは、優劣ではなく、違いなのだ。

ところで、現在のアストンはどういった状況だろう? 「セカンドセンチュリープラン」のもと、ふたつ目のモデルが誕生し、このサイクルが再び廻り始めれば、アストン マーティンからは2022年まで毎年新型モデルが登場することになる。

継続的な改革のもと、新型モデルが生みだす収益を次のモデル開発に費やすことで、さまざまなスポーツカーを生み出すことになる。通常の自動車メーカーと同じ方法であり、「難しい理屈などではありません」とパーマーはいう。

その最初のモデルが、大型で快適なグランドツアラーのDB11であり、そしていま、DB11と多くを共有しながらも、スポーツカーとしては対極に位置するヴァンテージが登場した。

新型ヴァンテージは、アストンのパートナーで、且つ株主でもあるメルセデス-AMG製4.0ℓツインターボV8 エンジンをフロントに積む完全な2シーターであり、トランスアクスル方式の8速オートマティックギアボックスと電子制御式LSD(e-ディフェレンシャル)を介してリアを駆動する。

ボディサイズは911が有利

新型ヴァンテージのボディの下には、これまで同様オールアルミニウム製ながら、アストンがこれまでのVHアーキテクチャに替わって創り出した、新型ストラクチャが採用されている。

基本骨格でDB11と共有するのは33%だけであり、全長4465mmのDB11に対し、ヴァンテージは274mm短い一方、1942mmの全幅(ミラーまで含めると2153mm)はDB11より2mm幅広い。対して911は全長こそやや長いものの、全幅は1808mmと非常にスリムであり、この差は大きい。

近年アストンではアルミニウム成形に、押出しよりもプレスや鋳造を多用している。製造コストの面では、プレスや鋳造は不利だが、強度の面でスペース効率が高く、ヴァンテージでは大柄な乗員が快適に過ごすことのできるキャビンと、ハッチ式テールゲートの下には余裕をもってゴルフバッグふたつを飲み込むトランクスペースを確保することに成功している。

ボディ材質にはアルミニウムと複合樹脂を採用しており、最も軽量なオプションを装備した場合の乾燥重量は1530kgだが、911 GTSはオイルと、さらにはドライバーとガソリンに相当する75kgをプラスした状態でもさらに軽量だ。同様の条件では、ヴァンテージは911よりも10%ほど重く、これもまた重要な点だろう。

独自デザインとスポーツカーらしさの融合

現行モデルでは初めて、ヴァンテージにはあえて他のアストンとは異なる外観(このルックスはお好きだろうか? わたしは見慣れて来たその3面とフロントを気に入っている)、インテリアが与えられている。

キャビン内部も好ましい。仕上げは素晴らしく、エアベントの形状も、グランドツアラーであるDB11よりもスポーツカーらしく、どうやら円形のステアリングホイールも選択できるようだ。

個人的にはアルカンターラ仕上げのレーシーなステアリングは、円形でこそ最も魅力的に見える。そのレザーは縫い目やステッチ廻りの仕上げがやや気になるが、これはスポーツカーなのだ。

メカニカル面での仕上がりも期待通りだ。510psにチューンされた同じエンジンを積むV8のDB11では、AMGモデルの活発で迫力あるエンジンサウンドがやや抑制されていたが、ヴァンテージでは再びその咆哮を楽しむことができる。

数年前は、アストンでも複数のモデルが同じようなサウンドを聞かせてくれたかも知れない。それでも、間違いなくヴァンテージのエンジンサウンドは素晴らしい。

この勇猛さは、ヴァンテージのドライブモードにも反映されており、こういった方向性は、われわれよりもアストンにとってより重要だといえるだろう。

DB11のシャシー・セッティングには「GT」、「スポーツ」と「スポーツ+」の各モードが与えられる一方で、ヴァンテージでは、そのすべてでより堅く引き締まったダンパー・セッティングとなる「スポーツ」、「スポーツ+」と「トラック」を選択することができる。路面の荒れたサーキットでの「トラック」モードは明らかに堅すぎるが、アストンは相応しいセッティングだという。実際、彼らはスライドが非常に容易だと話す。

アストン マーティンは控え目なのだ。

重量配分は50/50 サーキットでは思いのまま

思い出して欲しい。確かにヴァンテージは911より重いが、車重は1630kgであり、依然として他メーカーのライバルとは十分に戦えるレベルにある。

そのメカニカルレイアウト(すべてがフロントアクスルよりも後ろに積まれている)が意味するのはフロント/リアで50対50の重量配分であり、選択できるタイヤは専用設計のピレリ-ゼロのみとなる。

さらに、このクルマを設計したのは、限界を超えてもなお適切なハンドリングが必要だと考える人間であり、3段階あるスタビリティ・コントロールは完全にオフにすることができる。素晴らしいプレゼントだ。

そして、サーキットでのヴァンテージは驚くべき存在だ。エンジンサウンドは期待どおりの猛々しさであり、(オプションの)カーボンセラミックブレーキのストッピングパワーは素晴らしく、温度上昇に悩まされることもない。

さらに2000rpmという低回転から発揮される69.8kg-mの大トルクにも耐えるタイヤはどんなドライビングをも許容する。

例え最もソフトなサスペンションモードを選んでも、そのボディコントロールは素晴らしく、ドライバーが座る車両中心を軸に旋回するような感覚によって、機敏さも十分に味わうことができる。フロントはドライバーが意図したとおりに向きを変え、リアのコントロール性は特筆すべきレベルの正確さだ。

シャシーに直接マウントされたリアのサブフレームは捩れなど感じさせない強固なもので、サイド方向の素晴らしい剛性に寄与している。このクルマのリアアクスルは、エンジンとe-ディフェレンシャル(状況に応じて100%ロックとフルオープンのいずれもが可能だ)からの要求を、そのままに受け止めることができる。

サーキットでパワーオンすれば、ドライバーの要求に的確なロックアップで応え、コーナリングラインは望みのままだ。

エンジンがフロントに低く搭載されている点ではフェラーリ488 GTBに似ているとも言えるだろうが、限界を超えたところでのバランスはさらに素晴らしく、サーキットでこれほど扱い易い現行モデルは他にないだろう。

レーサーのように走らせることもできるが、そんな走りをしても依然としてバランスに優れ、美しい程にニュートラルだが、911ほどの切れ味はない。つまり、両者は異なる方法でその素晴らしさを発揮しているのだ。911にはステアリングの正確さが、アストンには楽しさが宿っている。

公道でも輝くモデル

すべてが素晴らしい。しかし、これはロードカーなのだ。その乗り心地は、特にスポーツモードでは安定して滑らかなもので、スポーツ+であってもほとんどの場面でそれは変わらない。

エンジンとトランスミッションに鞭を入れれば、それなりの荒々しさを見せるが、それでも適切なモードを選択している限りは、十分なレスポンスで唸り声を上げつつも、公道にも相応しい仕上がりといえる。

さらに、ステアリングコラムに設置されたことで、常にハンドル操作に対して位置が変わらない大型のパドルは非常に扱いやすく、パドルを引けばマニュアルモードに切り替わり、アップシフト側を長く引くことでオートマティックモードに戻すことができる。特にこのZF製8速ギアボックスのようにスムースなトランスミッションと組み合わせるには最高のシフトである。

(サーキットでは時おりダウンシフトを嫌がるようなことがあるが、これはメルセデス流。ギアボックスではなくエンジンを保護するやり方だ。)

ではステアリングはどうだろう? サーキットではフィールに溢れるが、コーナリングフォースが足りなければ、路面状態が伝わりにくくなり、この点ではフロント荷重が少ないために、アシストがそれほど必要ない911の方がより路面伝達能力に優れるものの、それでもヴァンテージの素晴らしさに変わりはない。

スムースで、速く、ステアリングセンターのフィールも期待どおりのものだ。車幅が広く、キャビンからそのボディワークを確認することはできないにもかかわらず、バランスと落ち着きが失われることはない。

まるでボディが小さくなったかと錯覚するほど、安定して、反応に優れ、思い通りにコントロールすることができる。つまり、感覚の面でも、ヴァンテージはその全てでドライバーを楽しませてくれるのだ。

その差は優劣ではなく「違い」

結局、ヴァンテージと911をそれぞれ比較しても、決してそこに優劣はない。

では、ヴァンテージ同様に12万900ポンド(1836万円)ほどのプライスタグを掲げる他のライバルたちはどうだろう?

なかには違った魅力をもち、ひとつかふたつ、ヴァンテージよりも優れたところをもつクルマがあるかもしれないが、このアストンほどの全体的な完成度をもつモデルは他にはないと断言できる。

では、ヴァンテージは911 GTSよりも優秀なのだろうか?

おそらく答えはノーだ。

しかし、911とはまったく違うモデルとして、多くの点で十分に満足できるからこそ、このクルマは本物の、素晴らしいもうひとつの選択肢となっているのだ。

911より劣っているのではなく、違った存在であり、多くの面でより素晴らしくもある。アストンとポルシェのサイズや価格、それに能力を比較してみれば、このクルマ自体が驚くべき到達点だといえる。

番外編 ツインターボV12を積む日がくる?

V12エンジンを積む計画はあるのだろうか? これは当然の質問だろう。アストンは忍耐強くこの質問に答えながらも、公式には現時点で決まった計画はないという。つまり、まだ決定していないということだが、恐らく彼らはこの計画を進めている。

最初に知っておくべきなのは、DB11と多くを共有するヴァンテージでは、5.2ℓツインターボエンジンをそのボディに収めることができるということだ。

さらに、アストンのデザイナー自身が、フロントがより印象的になるとも考えている。おそらくモデルライフの中盤でV12エンジンを搭載したモデルが登場するだろうが、排気量を増したこのエンジンを冷却するに必要な大型のベントが設けられても、その美しさを損なうことはない。

そして、現段階ではCLS 53が積むメルセデス-AMG製の新3.0ℓ直列6気筒エンジンをヴァンテージに搭載する計画もないのだろう。

このエンジンは必要なパワーを、ターボ過給と電動コンプレッサーに電子制御を組み合わせることで驚くほどスムースに紡ぎだし、モデル全体のCO2排出量を削減する有効な手段となる。おそらく計画に含まれていないだろうが、検討には値するはずだ。

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