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スーパー耐久鈴鹿でダブルウイン&ST-X王座獲得。「今回決めたかった」D’station Racing最良の日に

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スーパー耐久鈴鹿でダブルウイン&ST-X王座獲得。「今回決めたかった」D’station Racing最良の日に

 9月18~19日、三重県の鈴鹿サーキットで開催されたスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook第5戦『SUZUKA S耐』。5時間の長丁場の戦いでは、ST-Xクラス、ST-Zクラスともに僅差の戦いが展開されたが、両クラスともD'station Racingのアストンマーティン・バンテージが制した。2クラスのアストンマーティン制覇は初であり、ST-Xでは星野敏/藤井誠暢/近藤翼のトリオが初のチャンピオンを決めた。

■「今回決めたかった」2021年チャンピオン
 2019年からアストンマーティン・バンテージをスーパーGTとともにスーパー耐久に投入したD'station Racing。その年の第1戦だった鈴鹿では、ダレン・ターナーを呼び寄せデビューウインを飾り、この年本格投入されたばかりのアストンマーティン・バンテージAMR GT3にとっては世界初のレース優勝に。イギリスのアストンマーティン・ラゴンダ本社からもプレスリリースが出る世界的な勝利となった。

スーパー耐久第5戦鈴鹿でD'station Racingがダブルウイン! ST-Xはじめ5クラスでチャンピオン決まる

 そんなD'station Racingだが、参戦台数が少なかったST-1では星野辰也/織戸学/浜健二のトリオで2018年、2019年こそチャンピオンを得ていたが、ST-XのAドライバーに星野、Cドライバーとして近藤を据える体制で2017年から参戦を続けてきたものの、なかなかチャンピオンには届かなかった。

 2020年からはチームのマネージングディレクターでもある藤井誠暢がBドライバーに加わり、3人で参戦を続けてきたが、抜群の安定感を誇ったのが2021年。第1戦もてぎで優勝を飾ると、第2戦SUGOで2位。第3戦富士では接触で長いピットインを強いられるも2位まで追い上げ、第4戦オートポリスでは繰り上がりで2位。今回の鈴鹿ではチャンピオン決定の可能性が生まれていた。

 予選でこそ「BoPの面でも予選は毎戦厳しかった(藤井)」と3番手に留まるが、「今までとは少し違う方向性だったのですが、平野亮エンジニアが鈴鹿に向けて持ってきてくれたクルマが、リヤがすごくしっかりしていて、セクター1がすごく速い。クルマは最高にキマっていました」と決勝には自信をもっていた。

 迎えた9月19日の決勝。藤井はスタート直後から「今回勝ってチャンピオンを決めようと、自分が全部抜いてトップに立とうと思っていました。マージンも築けましたし、勝てる流れができたと思います」とリードを築いていく。ただ、代わった近藤がST-5クラスのヒロマツデミオマツダ2と接触し、ドライブスルーペナルティを課されてしまった。

 ただその後、トップに立っていたDAISHIN GT3 GT-Rのまさかのアクシデントによりふたたびトップに浮上すると、星野がブロンズドライバーとしては抜群のペースで自らのスティントをこなし、ポルシェセンター岡崎 911GT3Rに対しリードを築いた。

 星野は103周まで大役を果たし、ふたたび近藤に交代する。しかしすぐ背後にはポルシェセンター岡崎 911GT3Rの上村優太が迫っていた。近藤と上村は、ポルシェカレラカップでの長年のライバル。「うしろが上村君ということは分かっていました。ペースも変わらないし『抜かれたらおしまいだ!』と頑張りました」とアグレッシブにポジションを守り、最後は上村のピットインもあり、優勝をたぐり寄せた。

 そしてランキング2位だったFloral UEMATSU FG 720S GT3は4位。この瞬間、最終戦岡山を前にD'station Vantage GT3が2021年のチャンピオンを決めた。実は第6戦岡山はWEC最終戦バーレーンの翌週で、星野と藤井、平野エンジニアは参戦できない可能性が高い。だからこそ、鈴鹿で決めたかったのだ。

 近藤は汗でスーツをびっしょりにしながら「D'station Racingさんには2017年から乗せていただきましたが、今回初めてミスをして、初めてチャンピオンが獲れました(苦笑)。本当に良かったです」と安堵した表情をみせた。

■子どもたちの名を記したマシンがダブルウイン
 コツコツとステップアップを続け、2021年はWEC世界耐久選手権にもフル参戦を果たした星野は、「2015年にST-Xにデビューしましたが、なかなかうまくいかず、そこからST-1に下げて修行してから再度ST-Xに戻ったんですが、都合4年くらいかかりましたね」とチャンピオン獲得までの道のりを振り返った。

 星野にとっては、今季は良いこと続き。「今季はチャンピオンも獲れて、WECにもデビューできて表彰台にも乗れて、ル・マンでも完走できて、さらにはオリンピックでもフェンシングが金メダルも獲りましたし、最高の一年になっていますね」と自身も信じられない様子だった。

 そして、これまで星野と二人三脚で歩み、チーム立ち上げから活動を担ってきた藤井にとっても、喜びはひとしおだ。「近藤選手のペースも良かったですし、星野選手がプロに近いタイムで走れていたので、すべてがうまくいきました。それに今季トラブルがゼロなんです。チームのミス等もゼロですし、平野エンジニア、D'station Racingのなかでもいちばん若い林徳大チーフメカニックが、GT3をずっとメンテナンスしてくれました。まだ20代なのに、こういう難しいクルマを1年間やってくれたことに感謝しています」と藤井。

「D'station RacingとしてはST-1のチャンピオンを獲ったことはありますが、ちゃんと競ってチャンピオンを獲るのは初めてです。自分としてもこのチームで獲れて嬉しいですし、去年、一昨年は獲れそうで獲れない状況でした」

「星野選手にとっても日本ではこれがメインの活動で、なかなかチャンピオンが獲れなかったので良かったですし、佐々木主浩総監督に就任していただいてから初めてのタイトルですからね。自社メンテナンス2年目で非常に高いレベルでできています。GT4も2連勝で、最高ですね」

 藤井の言葉にもあるとおり、チャンピオン獲得に最高の華を添えたのは、ST-ZクラスのD'station Vantage GT4の優勝だ。星野辰也/織戸学/篠原拓朗/浜健二の4人でパーフェクトなレースを展開し、チームのシミュレーターで鍛えてきた星野辰也はプロにも迫るスピードをみせた。

 これ以上ない週末に、ひさびさにイギリスのアストンマーティン・ラゴンダも、デイビッド・キング社長の名でプレスリリースを発行した。「バンテージGT3は、プロとジェントルマンドライバーにとって、競争力あるレーシングカーとしてのクオリティを証明した。2019年の導入以来、毎年タイトルを獲得してきたが、『スーパー耐久』をタイトル獲得リストに追加できることは、D'station Racingと彼らすべての献身と努力の証だ」とキング社長。

「過去3年間、バンテージGT3はシリーズに参加してきたが、日本は我々にとって重要なマーケットであり、D'station Racingの成功はGT3の世界での可能性を示している」

 ちなみに、今回ST-Xを制したD'station Vantage GT3、ST-Zを制したD'station Vantage GT4だが、第4戦オートポリスの後、チームは御殿場のファクトリーで8月7日、SDGsおよび社会貢献活動の一環として、『D'station Racing / Kids Racing Garage Experience & Tour』という子ども向けのお仕事体験イベントを行った。

 このなかで、子どもたちが2台のアストンマーティンの清掃を行い、自分たちの名前をカウルの裏側に書いていたのだが、実際に子どもたちの名前が刻まれたマシンたちが、鈴鹿で2クラス制覇を果たしたのだ。

 レース後、メインストレート上で行われたパルクフェルメウォークでは、当日プレゼントされたキャップをかぶった子どもたちが訪れ、柵越しながら藤井たちからは感謝、子どもたちからは祝福の声がかけられた。

 子どもたちの思いとともに戦い、チャンピオン獲得を成し遂げたD'station Racing。チームとしても新たな歴史を刻んだ、忘れられない週末となった。

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