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古いボルボの魅力とは? P1800ES&940エステート試乗記

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古いボルボの魅力とは? P1800ES&940エステート試乗記

ボルボのディーラーであるボルボ・カー 東名横浜の一画に、「KLASSISK GARAGE(クラシック・ガレージ)」が置かれたのは2016年夏だった。古いボルボのメインテナンスを行うために専属のメカニックが常駐、修理や車検、点検などをおこない、安心して古いボルボに乗り続けることができるように体制を整えたのだ。

初年度の2016年には38台、2年目は81台、3年目は95台と、入庫台数は順調に増えて、現在では数カ月先まで予約が埋まっているという。そのいっぽうで、クラシック・ガレージで整備した車両の販売もおこなっている。今回は、整備された2台に試乗した。

不便だけど価格が一向に下がらない魅惑のSUV

ボディは全長×全幅×全高=4380×1700×1280mm。ミシュラン社製のクラシックカー用タイヤを履く。サイズは15インチ。クーペ版の「P1800」と異なり、ESは大型のガラスゲート付き。まずステアリング・ホイールを握ったのは1973年型の「P1800 ES」。2ドアのスポーツクーペであるP1800にハッチゲートを与えたいわゆるシューティングブレーク(狩猟用の貨物車)で、スリークなボディはいま見ても美しい。

この個体は何年か車庫で眠っていたものを引き取って内外装から機関まで全面的にレストアを施したもの。スウェーデンの本社には年間50万台規模(!)でヒストリック・モデルのメンテをする部署があるとのことで、パーツの生産や流通のシステムはしっかりと確立されているという。

車両重量は1160kg。一部箇所にウッドを使ったインテリア。大径のステアリング・ホイールはノンパワー。速度計はkm/h表示。各計器の動作に問題はなかった。トランスミッションはボルグ・ワーナー社製の3AT。現代のクルマに比べると華奢で径が大きなステアリングホイールを握り、2.0リッターの直列4気筒OHVエンジンを始動する。ATとの組み合わせなので発進にコツは要らないけれど、ノンパワーのステアリングはパワステに慣れたヤワな腕に、ずっしりとした重さを伝える。駐車場から出るとき、“よっこらしょ”というかけ声が出る。

けれども走り出してみると、P1800 ESは46年以上も前に生産されたクルマとは思えないほどきちんと走った。エンジンは低回転域から実用的なトルクを発生し、高速道路に上がっても100km/h巡航だったら楽々こなす。

P1800ESは1972年に登場。フロントシートはヘッドレスト一体型。リアシートの座面長は左右非対称。ラゲッジ・ルームのフロアはフラット。P1800ESをしめすエンブレムは、リアゲートにさりげなく置かれる。3ATなのでちょっとエンジン回転があがりすぎて音と振動が気になるけれど、それを活気だと思えるところが古いクルマの面白いところだ。“運転している!”という実感がある。

ステアリング・ホイールの遊びが大きいのは時代を感じるが、直進性もしっかりしているし、何よりこの手のクルマでありがちなブレーキの頼りなさが感じられないのがいい。ブレーキを踏んだ時の、カチッとした踏み応えが頼もしい。P1800ESの後期型は4輪ディスクブレーキが採用されていて、この時代からボルボは“安全のボルボ”だったのだ。

シャシーは1950年代登場の「アマゾン」とおなじ。搭載する2.0リッター直列4気筒エンジンは、最高出力125ps/6000rpm、最大トルク189Nm/3500rpmを発揮する。インパネ上部には、油温計や時計などを含む3連メーターが備わる。ラジオは新車時から装着されている純正品。各種スウィッチ類は正常に動くという。238万円の940なるほど、美しいボディと味のあるインテリア、それにダイレクトな操縦感覚の古いクルマは楽しい、とほくほくしながら、今度は1996年型の「940 POLAR SX エステート」に乗り換える。

外観を眺めて、運転席に座って、これはP1800ESとはちょっと違うと感じる。カクッとした四角いボディは懐かしいけれど、インテリアはグレイの質感の低いプラスティック。これはクラシックとかヒストリックといった類ではなくて、中古車だ。

940は740の後継モデルとして1990年に登場。搭載するエンジンは2.3リッター直列4気筒ターボ。シンプルな造形のインテリア。エアコンはマニュアル調整式。カセットデッキは新車時の純正装着品。と、第一印象はあまり芳しいものではなかったけれど、走り出してなんとも言えない懐かしさが押し寄せてきた。1990年代の終わりに、ボルボ940エステートの最終モデルにスコットランドで試乗したときの思い出が蘇ってきたのだ。

2.3リッター直列4気筒低圧ターボは昼行灯のようにボンヤリしたエンジンだったけれど、まったりとした乗り心地と絶妙にバランスして、雨のスコットランドをリラックスして旅することが出来た。

駆動方式はRWD(後輪駆動)のみ。エアバッグ付きのステアリング・ホイール。ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)も標準。日本仕様のトランスミッションは4ATのみ(本国やヨーロッパ地域では5MTも設定)。タコメーターと時計が同サイズ。フロントシートはヒーター機能付き。リアシート中央には、ビルトインタイプのジュニアシート付き。リアシートのバックレストは40:60の分割可倒式。トノカバーや荷崩れ防止用のネットも備わる。お値段を見ると238万円(現在は売約済み)。いまでは希少になった角張ったボディと、ゆる~いフィーリング。決して歴史に残る名車というわけではないけれど、この金額だったらノスタルジーに浸るためにギリギリ支払えるかもしれない。

いずれにせよ、ヒストリック・モデルから懐かしのちょっと古いクルマまで、安心して楽しむことができるようにするボルボの取り組みは、クルマ好きにとって慶事であるのは間違いない。

文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.)

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