フラット6のEZ36&5速ATをエクシーガに搭載しつつアイサイトまで稼働!
複雑な制御系も攻略した超変態ミニバンの産声!
「エクシーガに水平対向6気筒エンジンを換装!?」スバリスト垂涎のボクサーミニバン究極形態!【ManiaxCars】
スバル唯一の3列シート7人乗りミニバン(オペルザフィーラのOEM、トラヴィックは除く)として存在感を放っていたエクシーガ。2015年の生産終了後にはクロスオーバー7なんていうSUVが存在したが、これも2018年をもって販売終了。次に乗りたいクルマが見つからないスバルファンは多く、それだけに未だエクシーガは根強い人気を誇っていたりする。
そんなエクシーガで様々な仕様を手がけてきたのが“オートプロデュースA3”。これまでGRBやBP/BL9改(S402)のパワートレインを移植した“ミニバンの格好をしたスポーツカー”を作ってきたが、そこにEZ36型エンジンと5速ATを載せる新たな1台が加わった。
「そういえば6気筒のエクシーガは作ったことないなぁと思って。エクシーガって基本フロント周りがBP/BL系、リヤ周りがBR/BM系レガシィと同じなんですよ。で、BP/BL系にはEZ30型を搭載したモデルがあったし、EZ36型はEZ30型とサイズが同じだから、エクシーガにEZ36型を載せるにも寸法的には問題ないだろうと」と、オートプロデュースA3の武田さん。
実際、モノコック側は無加工で、干渉するウォッシャータンクを小加工しただけでEZ36型を搭載できたそうだが、マウント方法が見直されている。というのも、EZ36型を載せるBR/BM系は振動の低減を目的として、ゆりかご状のフレームにエンジンをマウントするクレードル構造を採用。
それに対してフロント周りがBP/BL系に準じるエクシーガへの換装では、クランクケース(シリンダーブロック)下側2ヵ所のマウントと、クランクケース後方をバルクヘッドと連結するバッファーロッドによる3点留めへと改められてるのだ。
最も、その辺りの構造的な違いやエンジン換装にあたっての解決策は、スバル車を知り尽くした武田さんには想定内。何よりも厄介なのが制御系だった。
「基本的にはBR/BM系のメインハーネスを間引いてエクシーガのメインハーネスに移植するんですけど、これが地道な作業で。ウチでは、やむを得ない場合を除いてハーネスを継ぎ足すことはせず、純正カプラーから端子を抜いて次に差し込みます。これまで作った中身GRBやS402は4気筒同士の組み替えでしたが、今回は4気筒から6気筒への変更なので、困難を極めましたね」と武田さん。
例えば、インジェクターや点火の信号線は2気筒分追加されるし、4気筒なら1系統のO2センサーも6気筒だと2系統ある。さらに、クルマ全体で統合制御が図られる今どきのクルマらしく、アイサイトもBR/BM系のものを移植して作動させないとエンジンにフェイルセーフが入ってしまったりする。
ちなみに、ミッションは6速MT化を予定していたが、制御系に問題が残るだろうと考えて断念。結果、フロアパネルの一部を張り替えた上で5速ATが搭載された。
車両に繋いだ故障診断機のオープニング画面には、“3.6DOHC”と表示される。EZ36型エンジンの搭載をちゃんと認識しているわけだ。純正ハーネスで制御系を構築している証と言っていい。
ステアリングホイールはプローバ製の小径Dシェイプに交換されているが、それ以外は純正然としたダッシュボード周り。電動パワステが合わないという問題があったものの、初期型エクシーガのステアリングラックと、BR/BM系と同じ配線のパワステ用ECUを移植することで解決できた。
恐らくエクシーガオーナーでなければ気づかない変更点がメーター。実はメーターユニットはBR/BM系のモノに交換されているのである。というのも、電動パーキングブレーキの制御がメーターで行なわれているから。メーターナセルの形状が違うのに、まるで違和感なく装着しているのが見事だ。
ATセレクターレバーの前方右側はエンジン特性を切り替えられるSI-DRIVEの操作ダイヤルで、これはベース車2.5iスペックBに備わるモノ。その左が、移植された電動パーキングブレーキのスイッチだ。始めから存在していたかのように、自然に装着されている。
ブレーキはS206などに使われるフロント6ポット、リヤ4ポットキャリパーで強化。ちなみに、駆動系はプロペラシャフト以降、BR/BM系のパーツを流用。エクシーガ用に比べ、デフサイズが大きくドライブシャフトも太いなど容量アップされている。
以前、BLE型レガシィB4でEZ30型に試乗したことはあったが、排気量3.0Lなのに低速トルクが薄くて愕然とした。そんな記憶があるため、「もしかしてEZ36型も…」などと思っていたのだけど、さすが600ccも大きいだけあってアイドリング回転+αの領域から十分なトルク感がある。というか、アクセルペダルに軽く足を乗せてるだけでグングン加速していく感覚だ。
漲るトルクを感じつつ、右足の踏み込み方ひとつでそれを即座に引き出せるし、振動なくスムーズにエンジン回転を高めていく上質なフィーリングは、レシプロエンジンの中でもフラット6ならではのもの。
しかし、何より凄いのは、始めからEZ36型を載せたモデルが存在したのではないか? と思えるほどの高い完成度に尽きる。これは完全にメーカーレベルの仕事。オートプロデュースA3の実力を示した超大作だ。
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:オートプロデュースA3 大阪府岸和田市稲葉町216-5 TEL:072-479-2760
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