この記事をまとめると
■気候変動抑制へ世界レベルで取り組むための話し合い「COP26」がイギリスで開催された
新車が消えゆくのは仕方ないが……すでに所有している「ガソリン車」にすら乗れなくなる可能性!
■COP26の議題の真逆をいくようなレンジローバースポーツSVRに試乗した
■どこまでBEV化に本気なのかとも感じるが、電動版SVR登場もあるかもしれない
「新車の排出ガスを全てゼロ車に」宣言に日米中韓独は署名せず
イギリスのグラスゴーで11月1日から12日の期間でCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催された。さまざまな自然災害を助長しているともいわれる気候変動抑制へ全世界レベルで取り組むために、世界各国の首脳などが話し合いを行なった。
クルマの分野では、気候変動対策のひとつとして車両電動化(BEV=バッテリー電気自動車などゼロエミッションビークル)が急速に進んでいる。そして、その急先鋒がヨーロッパとなる。EU(欧州連合)では2021年に欧州委員会が、2035年までにHEV(ハイブリッド車)も含む内燃機関車の新車販売を終了する方針を打ち出している。さらに加速させようとしているのが、EUから脱退したイギリスだ。ジョンソン政権は2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止することを発表しており、さらにその後2035年にはHEVすら販売禁止することを加えている。
HEVは別として、BEV(バッテリー電気自動車)レベルでの車両電動化では完全に出遅れている日本では、「本当に実現できるのか?」という話がよくある。確かに単純にクルマを全部BEVにすればそれでよしという話ではない。事実、ドイツではすでにサプライヤーレベルでの人員整理が始まっており(内燃機関関連技術者など)、2022年には完成車メーカーまで波及するのではないかとされている。政府はすでにBEV関連のエンジニアとして働けるような就労支援策を打ち出しているともされている。
アメリカのバイデン政権は2030年までに新車の50%をBEVとする目標を発表しており、こちらのほうが現実的な目標なのかとも考えてしまう。
そのようななか、英国ブランドとなる、レンジローバースポーツ SVR カーボンエディションというモデルに試乗する機会を得た。SVRとはジャガー・ランドローバーブランドのハイパフォーマンスモデルとなる。そして試乗車はカーボンファイバーのボンネットやエンジンカバーなどを装備したカーボンエディションであった。
搭載される5リッターV8スーパーチャージャーエンジンは575馬力を発生。
COP26の席上で気候変動対策について熱弁をふるうジョンソン首相や、イギリスの今後の電動車対応とはまさに”真逆”をいくような英国モデルにタイミングよく試乗することができたのである。
V8サウンドとそのパフォーマンスをBEVで再現するのは難しい
ドアを開け、バケットシートを連想させるシートに座りエンジンをスタートさせると”ブロロオーン”とかなり威勢のいいエンジン音とともにV8エンジンが始動する。SVRということでエンジン音もだいぶ演出されているようで、以前試乗したシボレー・コルベットより主張を感じるV8サウンドを終始奏でてくれる。
スーパーチャージャー仕様となっているせいか、アクセルを半分ほど踏み込んだだけでも、爆発的な加速を見せてくれる。加速時に体感する重力イメージは、ジェット旅客機が離陸するために滑走路を加速するイメージとまさにそっくりであった。仮にアクセルをベタ踏みしたらそのまま空を飛んでいくのではないかとも思ってしまった。
燃費を気にするようなモデルではないが、あとで調べたらWLTCモードで6.9km/Lとなっていた。このクルマに乗っていると、「本当にイギリスは2035年に完全にBEV化するのだろうか」と首をかしげたくなってしまった。
なんといっても主張があり心地良く聞こえるV8サウンドとそのパフォーマンスは、BEVで再現するのは困難であろう。2035年までまだ10年以上あるとはいえ、このモデルはMHEV(マイルドハイブリッド車)でもないので、2030年にはイギリス国内では販売できなくなる対象に含まれるといえよう(アメリカや日本のような電動化の遅れているマーケット向けには残るかも?)。
ただ、レンジローバーがひと足早くフルモデルチェンジするので、早晩レンジローバースポーツもフルモデルチェンジを実施するはずだ。次期型ではこのようなモデルはラインアップされないだろうとも考えがちだが、SVRモデルは次期型でも用意されるとの情報もある。
今回の試乗では「どこまでBEV化に本気なのかなあ」とも感じてしまったが、そこは合理主義のヨーロッパ。時期がやってくれば、スパっと販売終了にしてしまうのかもしれない。それか、”電動版SVR”が登場するかもしれない。
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