シボレーの現行「コルベット」に追加された高性能バージョン「Z06」に、渡辺敏史が試乗した。ノーマルモデルとの違いとは?
DOHC化
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世の中的にはあんまりそんなイメージはないのかもしれないが、21世紀のコルベットにとって切っても切れない関係といえば、ロックスターではなくレーストラックだったりする。ル・マン24時間レースやWEC(FIA 世界耐久選手権)での活躍の背景には少なからずマーケティング的な要素もあっただろう。結果、それまでアメリカ国内向きのイメージの強かったコルベットが、一時、欧州市場で年間1万台も販売されるモデルに成長した。
ちなみに21世紀以降、コルベットのル・マン24時間レース勝利数(GTEカテゴリー)は8回であるものの、2015年を最後に勝利からは遠ざかっていた。ライバルの高性能化に対峙するには、伝統のFR(後輪駆動)レイアウトでは限界がある。そう悟れるほどにFRをやり尽くしたことが、コルベットのリヤミッドシップ=MR化への大転換の端緒となったのは、GMのエンジニアもはっきりと認めるところだ。
そうまでしてル・マン24時間レースで勝ちたかったのか……と、そんな彼らの執念の権化ともいえるのが「Z06」である。ネーミングのルーツは遡ること約60年前、2代目コルベットに用意されたパフォーマンスパッケージのオプションコードだ。それが5代目以降はハイパフォーマンスグレードに与えられる名称となった。
6代目のZ06は自然吸気の7.0リッター、7代目は6.2リッター+スーパーチャージャーと動力性能を追求する術は異なるが、エンジン型式そのものはアメリカ車のソウルともいえるOHVを採用した。しかし、8代目が採用したのは驚くことにDOHCだ。自然吸気の5.5リッターV8は、ファクトリーレーサーの「C8.R」、そしてカスタマー向けレーシングモデルとして販売される「C8.GT3.R」と基本設計を共有。後者は、70%以上のエンジンパーツをZ06と共有するという。
クランク形状は基準車のクロスプレーンとは異なり、フェラーリとおなじフラットプレーンを採用。高回転・高出力化に有利な一方で、快適性の面では不利とされる。前述の通り、“勝つためのエンジン”であるゆえ、とにかくハイパフォーマンスであることを前提に設計されたのだ。ボアストローク比は今どきあり得ないほどのショートストローク型で、圧縮比も12.5と強烈な設定だ。形式は異なれど素性的に極めて近い量産エンジンとして唯一挙げられるのがポルシェ「911GT3」のMA275型かもしれない。本気を出したアメリカのエンジニアリングはシャレにならないほど高精度・高密度であるのだ。
ただし、Z06とベースモデルの識別点は思いのほか少ない。とりわけ試乗車の外装は真っ黒で、クーリングチャンネルを増やした前後バンパー形状や幅広のフェンダー、リヤサイドのエアインテークなどが目立ちづらい。ちなみに本国仕様はエキゾーストが専用設計のセンター4本出しとなり、高負荷・高回転域では半分がストレート抜きになるが、騒音規制に引っかかる日欧仕様では、基準車に準拠した形状のエキゾーストだ(馬力は約20psパワーダウン)。
フェラーリやランボルギーニにも劣らないエンジン
内装の差異については唖然とするほど素っ気ないが、Z06の別物ぶりはエンジンを掛ければ即座に伝わるはずだ。助平心でちょっとブリッピングをかましてみれば、異様なピックアップがレーシングの血統を余すことなく見せつけてくる。自然吸気でリッター当たり約120psも発揮するだけに、やはりエンジンの放つオーラは半端なものではない。回転の上昇と共に伝わってくるのは、ムービングパーツが無駄なくズレなく仕事をしている様子だ。クルマ好きにとってはなんとも艶めかしい微振動である。それに伴うサウンドもフェラーリのように甲高い高音が際立つものではなく、ちょっと野太くていかにもメカメカしい。
エンジンは、低回転域からのトルクリッチなアメリカ車のイメージとは異なり、回転上昇と共にぐんぐんパワーを紡いでいくようなフィーリングだ。低中回転域でもトルク不足を感じることはないが、さりとて有り余るほどでもなく、ATモードでも1500rpm以下のところを積極的に使いたがるようなフシはない。100km/h巡航では8速のトップギヤを使い切れないほどだ。その域で走り続けると水温や油温や70度台とかなり低めを指しているが、高負荷域では一気に適正温度へと上がるその推移をみれば、冷却能力に気遣っているかが伝わってくる。
コーナリングのタッチもゴリッとマッシブな手応えだ。ベースモデルより80mm近く広い、2.0m超の車幅に収められるタイヤは、前輪がポルシェ911カレラの後輪にほど近く、後輪に至っては345幅と極太だ。さすがにここまでグリップ力が強力だと、日本のワインディングを気持ちよく……程度のペース(50~60km/h)では前輪の力でグイグイと曲がっていく感が強くあらわれる。そもそもロードゴーイングレーサー的な位置づけであるこのクルマにとって、パフォーマンスを全開放する場所はサーキットになるのだろう。
だからといって公道ではまるで満足感が得られないかといえば、そんなことはない。今、大排気量の自然吸気エンジンを自分のものとして日々扱えるという贅沢はクルマ好きにとっては格別なものだ。エンジンだけの価値を切り取ってみたとしても、それはポルシェやフェラーリ、ランボルギーニなど錚々たるメーカーのエンジンたちと比肩する魅力を持つ。
今もって伝統的なOHVを軸足にしながら、一方でこういった選択肢を得られた背景に、コルベットのスポーツカーとしての歴史と共に、米国の本気のエンジニアリングの深淵を垣間見る。
文・渡辺敏史 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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