AT車全盛のなか時代に抗う走りが楽しいオススメMT車
いまMT車がちょっとした話題となっている。短距離移動で渋滞も多い日本の道路事情ではAT人気が高まるのは必然で、1980年代にはすでにAT車が主流派となっていた。そしてバブル期を迎えるとAT車がさらに多数派となり、1990年代にはMT車はごく一部のクルマ好きが乗るクルマとなってしまった。昨今は商用車や軽自動車の商用バンでもAT車(またはCVT車)しか設定がないという状況のなか、意外にもMT車を設定する車種がにわかに増えている。自動車の電動化シフトの反動なのか、線香花火の最後の火花のような儚い存在とも言える「後世にまで残したい走りが楽しいMT車」を紹介しよう。
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初代からMT車にこだわり続けるマツダ・ロードスター(ND型)
1989年に登場したマツダ・ロードスターは、初代モデル以降つねにMT車を設定し続けているモデルだ。現行型となる2015年発売のND型(4代目モデル)は、1.5L直4エンジンかつ1トンを下まわる軽量なボディながらも、パワーとトルクにゆとりが溢れるエンジンとは言いがたい。しかし最高出力132ps/最大トルク15.5kg-mのエンジンは、その性能を最大限まで引き出すことができるMT車の醍醐味を持ち合わせている。希少になったライトウェイトスポーツを堪能するには必要にして十分であり、ドライバーが両手両足を駆使して走らせることで、カタログ数値では言い表せないファンなドライビングが堪能できる。
また、ND型ロードスターには「RF」というリトラクタブルファストバックという電動開閉式のルーフを持つモデルもあり、ソフトトップは不安だからとこちらの方が何かと安心という人もいることだろう。もちろん重量が増えることから、エンジンは2L直4を搭載しており、こちらは最高出力184ps/最大トルク20.9kg-mと高性能ぶりを発揮。当然、6速MTもあるのだが、クルマのキャラクターとしてはATの方がふさわしいとも感じている。もちろんMTがダメなわけではないが、MTから見たクルマ選びとしては軽量で非力な1.5Lのソフトトップに軍配が上がる。
FRスポーツの醍醐味がMTで堪能できるトヨタGR86(ZN8型)&スバルBRZ(ZD8型)
次に紹介したいのがトヨタGR86とスバルBRZの兄弟車だ。個人的には2代目をよくぞ発売してくれたと讃えたいモデルで、エンジンは先代同様に水平対向の自然吸気を採用するも排気量は2.0Lから2.4Lへと拡大された。そのスペックは最高出力235ps/最大トルク25.5kg-mを誇り、1200kg台の車両重量に対してそれは十分なもので、先代モデルと比べて低回転域からトルクが厚く、MT初心者でも扱いやすい仕立てとなっている。また、2ドアでも後席があることから荷物も積みやすく、サーキット走行を楽しみたい人にとってうれしいのがトランクと後席をフルに使うことでタイヤ4本が収納できること。
これは2シーターのクルマにはできないことであり、使い勝手の面でネガティブな要素を潰すことができる。思えばAE86は荷物が積みやすかったし、広くはないもののしっかりとリヤシートを持つスポーツクーペでありながら、デートカーとしても使える魅力を兼ね備えていた。その精神はもちろんAE86からしっかり継承されたものであり、MT車が初めてという人や2シーターでは困るというのであれば、GR86&BRZが魅力的に映るはず。
加えて兄弟車であるそれぞれのモデルは個性が異なるため、購入するのであれば、何度か両車を乗り比べるなど試乗をしっかり行い、それぞれの性格を理解してから相棒を決めることをお薦めする。
実用5ドアハッチバックにもMT車を設定するホンダ・シビック(FL5型)
スポーツ度があまり高くなくても、MTを駆使してクルマを走らせたい人にお薦めしたいのが現行型のホンダ・シビックだ。11代目のフツウのFL型は、1.5L直4ターボエンジンを搭載し、最高出力182ps/最大トルク24.5kg-mを発揮する爽快な走りを楽しむことができる。なにより5ドアハッチバックのため使い勝手にも優れており、後輪駆動やボディタイプにこだわらず、日常使いでMT車が欲しいという人にはうってつけだ。
昔よりボディが大きくなっているが(全長4550mm×全幅1800mm×全高1415mm)、それでいてホイールベースは2735mmと長いことから室内は広く、ホンダの根幹である「マン・マキシマム/メカ・ミニマム」(ボディは小さくて室内は広い)を継承。実用性を犠牲にしないMT車という位置付けだ。以前はこうしたクルマがたくさんあったのだが、現在では希少な存在となってしまったのが非常に残念だ。毎日のカーライフをMTで操りたいというのであれば、FL型シビックは最適なモデルだろう。
もちろんトップエンドに君臨するFL5型シビックタイプRも発表されており、その存在にもさらに注目が集まる。2L直4DOHCターボエンジンからは最高出力330ps/最大トルク42.8kg-mというハイスペックを誇る。その性能を存分に味わい尽くすとなるとサーキットに限られるが、先代のFK8型シビックタイプRをさらにブラッシュアップした運動性能は、499万7300円の車両本体価格がバーゲンプライスと言えるほどスペシャルなシビックに仕上がっている。
好みのスタイルが選べる軽カーオープン!「ダイハツ・コペン」(LA400K型)
ダイハツ・コペン、これも魅力的なモデルだ。ふたりしか乗れないものの軽自動車のため維持費を低く抑えることができるメリットも大きい。軽自動車は低コストで実用性が高いことから人気の高いカテゴリーのクルマであるが、なかでもコペンはオープンエアスポーツと考えると軽自動車のなかでも異端児的な存在ではあるものの、それ故にダイハツが大切に作り込んでいることがわかる。
価格はほとんどが200万円以下で「ローブ」「エクスプレイ」「セロ」の3つのボディスタイルのすべてにMT車の設定がある。そして尖がったコペンGRスポーツにも当然MTの設定があり、パワーユニットは軽自動車の自主規制いっぱいの最高出力64ps/最大トルク9.4kg-mとライバルに対して性能に違いはないのだが、さまざまなバリエーション展開が多くの軽カースポーツファンを虜にしている。
小型車からハイパフォーマンスカーまでまだまだMTモデルが選べる
ほかにもルノー・トゥインゴのMT車はRR(リヤエンジン・リヤドライブ)という希少なレイアウトによるドライブの楽しさを享受することができ、BMWのM4クーペや日産フェアレディZなどの国内外のハイパフォーマンスモデルにも、普段使いでMTを駆使して走ることができるモデルが存在する。
* * *
おそらくスポーツカーのMT車は今後価格が高騰していくのは必至だが、投機目的ではなく純粋にMT車がある生活を楽しみながら、「昔のクルマの主流はこうだったのだ!」といまのうちに体験しておくことは、長い目で見たカーライフを豊かなものにしてくれるだろう。そして多分、痴呆防止にもつながるかもしれないし、自動運転や電気自動車が当たり前になったとき、MT車を経験したという貴重な体験はきっとかけがえのない思い出になることだろう。
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みんなのコメント
乗れば乗るほど一体感がでて沼にハマってしまうかも知れません。
サイズもパワー、シャシの動きも全て手の内にある感じが凄く素敵なんです。
町中を普通に運転するだけでも屋根を開ければ特別な時間に変えてくれるかも知れません。
使い勝手の悪さを全て帳消しにしてくれる位楽しい車です。