日産は2024年3月6日、栃木県上三川町の同社栃木工場でバイオエタノールを原料に燃料電池で発電させるシステムの運用をスタートした。当初の電力量は3kWからで、工場での二酸化炭素を削減させるのが狙いだ。現地からのレポートをお届けしよう。
文、写真/ベストカーWeb編集部・渡邊龍生
将来的にはクルマにも運用へ!? 日産がベンチャーと協業で「バイオ燃料電池」で水素から電力を発生させる定置型発電をスタート!
■リオ五輪に使われたNV200の燃料電池車の技術を応用
発表会の冒頭、日産の村田和彦常務執行役員から今回のSOFCの前身となるe-NV200でのe-Bio Fuel-Cellの説明が行われた
日産は2016年に固体酸化物形燃料電池(SOFC)を発電装置とした燃料電池システム、「e-Bio Fuel-Cell」の技術をクルマの動力源として世界で初めて車両(e-NV200)に搭載。2016年のリオ五輪で使用されたのだが、その車載用SOFC開発で培われた知見を工場向けシステムへと応用し、今回のトライアル運用を開始することになった。
SOFCはエタノールや天然ガス、LPガスなどさまざまな燃料を使って発電することが可能だが、これらの燃料を高温で作動する改質器を使って分子と反応させ、発生した水素を利用した発電を行う。
日産車両生産技術開発本部環境&ファシリティエンジニアリング部環境エネルギー技術課の黒田太郎部長がバイネックス社との共同開発についてレクチャー
SOFCでは高温で作動させるため、触媒の活性度も高く、固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電効率が60%なのに対し、日産のSOFCは70%という高効率を実現するという。
今後、その発電量を向上させながら2030年の本格運用を目指すという。また、2050年にはすべての工場での電力について約3割をこの燃料電池システムでカバーする見込みだ。
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■発電に使われるバイオエタノールの原料は「ソルガム」を採用
発表会当日、メディアに公開された稼働したばかりのSOFC。この日までにまだ日産の社長も専務も現物を見ておらず、メディアに先に公開されたのだとか(笑)
現地での発表会には、日産総合研究所EVシステム研究所の臼田昌弘主任研究員や同研究企画グループの上條元久エキスパートリーダーらが出席。
同席した日産車両生産技術開発本部環境&ファシリティエンジニアリング部環境エネルギー技術課の黒田太郎部長は「2050年までにクルマのライフサイクル全体でのカーボンニュートラルを実現する。今回の試みは2030年代早期から主要市場での新型車をすべて電動車とし、戦略分野での電動化と生産技術のイノベーションを推進する一環」と語った。
メディアへの日産SOFCの公開プレゼンが行われた会場
バイオエタノールの原料は、今回日産が協業したバイオマス関連を手がけているベンチャー企業「バイネックス社」が日産と共同で担当する。その原料には「ソルガム」(イネ科の作物。別名:コーリャン、キビ)を採用するという。
このソルガム、大量収穫が可能でエネルギー生産に適した植物で、同社が東京大学と共同で開発してきたという。発表会に出席した同社代表取締役の青木宏道氏によれば、国土の広いオーストラリア国内でソルガムを栽培し、バイオエタノールを製造する予定。
また、2024年から10haの農地でソルガムの栽培をスタートし、6年後には1000kLのバイオエタノールを製造していくとしている。
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