■EVの軽自動車も登場する時代に突入!
いま、軽自動車が未来に向けて大きな岐路に立っています。
世界各地でEVシフトが進むなか、日本では政府が「遅くとも2035年までに軽自動車を含む新車100%を電動化する」という方針をグリーン成長戦略のなかで打ち出しました。
そうなると、軽自動車は少なくともハイブリッド車になる必要があります。
こうしたなか、日産と三菱自動車は2021年8月27日、2社の合弁企業であるNMKVで企画・開発を進めてきた軽自動車クラスのEVを2022年初頭に日本国内で発売することを正式に発表しました。
ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mmで、価格については“実質的”という表現で各種の購入補助金を活用すると約200万円からとしています。
電池容量は20kWhといいますから、日産「リーフ」のベースモデルのちょうど半分の大きさです。
満充電での航続距離はリーフがWLTCモードで322kmですから、単純計算では161kmとなります。これにリーフとの車重の差などを考慮して、180km前後と予想できます。
そうした日産・三菱の軽EV関連の表と同じ日に、スズキは新モデル「ワゴンRスマイル」を初公開しました。
スズキ「ワゴンR」といえば、1993年に登場して以来、1998年に2代目、2003年に3代目、2008年に4代目、2012年に5代目、そして2016年に現在の6代目が登場し、2020年までの累計販売台数は480万5853台におよぶスズキの大黒柱です。
ワゴンRの長い歴史の幕開け直前の状況について、筆者(桃田建史)は初代ワゴンRのデザイン担当者のひとりに話を聞いたことがあります。
すると彼は「そもそもワゴンRの狙いは、それまでの軽のイメージを刷新する、男性が乗ってもカッコいい軽自動車だった」という当時の発想を教えてくれました。
スズキの軽自動車は、1979年登場の「アルト」が、それまでの軽自動車にあった商用優先のイメージから、主婦など女性も気軽に乗れるシティコミュータ―という発想で登場し大成功を収めました。
そうした流れのなかで、ワゴンRは1993年の初代を皮切りに、より広い世代に対する多目的なクルマとして、軽自動車の新時代を切り開いてきたといえます。
今回登場した新型ワゴンRスマイルも、こうしたワゴンRの進化のひとつです。
新型ワゴンRスマイルのチーフエンジニアである高橋正志氏は「開発を始めたのはいまから4年ほど前。買い物時などの利便性の良さでスライドドアの市場が拡大するなか、軽ハイトワゴンではなく軽ワゴンでの可能性を検討してきた」とこれまでの開発経緯を振り返りました。
ただし、新型ワゴンRスマイルは、ワゴンRという冠がついていても「派生車という位置付けではなく、まったく違う発想で開発した」ともいいます。
■ワゴンRは将来EVに進化する?
新型ワゴンRスマイルのパワートレインはマイルドハイブリッドを採用しています。
日産と三菱の新型軽EVが登場することなどを踏まえて、ワゴンRを筆頭とするスズキの電動化は今後どう進むのでしょうか。
新型ワゴンRスマイル発表会見後の質疑応答で、筆者は鈴木俊宏社長に次のように質問しました。
「今回の新型ワゴンRスマイルは、単なる派生車というより、スズキの軽自動車事業の中核であるワゴンRが、時代変化とともに軽自動車にとっての新たなるスタートポイントという解釈で良いでしょうか。
そのうえで、軽自動車でのEV化など今後の電動化がさらに進んでも、スズキの中核モデルであるワゴンRは永遠に不滅でしょうか」
これに対して鈴木社長は、次のように今後の姿勢を示しました。
「ワゴンRは(これまで同様にこれからも)時代とともにお客さまのニーズに応じて変わっていく。ワゴンRとして安住せず、今回のような軽ワゴンでのスライドドアを持つワゴンRスマイルも開発した。
今後もワゴンRもどんどん変わる。電動化はもちろん視野に入れる。(EVなど電動車は)メーカーが先行して車両開発して量産化するだけではなく、充電インフラを含めた政策が重要だ」
そのうえで、「時代変化に合わせてワゴンRもしっかり変化させる。(その意味では)形をかえて、ワゴンRは永遠に不滅だ」と言い切りました。
鈴木社長が指摘するように、軽EVについては、現在の軽に対する単なるパワートレイン変更ではなく、軽EVのみならず全ての領域での電動化を社会全体で考えていくことが重要だと感じます。
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