2Lターボが熱い。WRX STIやシビックタイプRに加えて、AMG A45など輸入車も交え、群雄割拠だ。なかでも性能的な頂点は2Lターボエンジンに4WDを組み合わせたモデル。日本が誇るWRX STIと欧州を代表するVWのゴルフR、2Lターボ四駆の頂に立つモデルはどっち!?
文:松田秀士/写真:編集部
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ベストカー2017年9月10日号
対照的な2Lターボエンジンはどちらがいい?
WRX STIの開発陣がベンチマークにしたという、ゴルフR。まずどっちのエンジンがいいか?
STIの308ps/43.0kgmに対してゴルフRは310ps/40.8kgm(MTモデルは38.7kgm)。最高出力はゴルフRが上回るが最大トルクはSTIのほうが上。ただし最大トルクの発生回転域が2000~5400rpmとゴルフRのほうが低く幅広い。
実はこのデータがそのまま加速フィールに直結している。3000rpmあたりからグイグイとターボのブースト圧の盛り上がりを感じるゴルフRに対してSTIがそれを感じるのは3600rpm以上なのだ。
STIのレッドゾーンは8000rpmなのに対して、ゴルフRは6500rpm。しかしどちらも6400rpm付近で最高出力を発生。
間髪なくシフトアップする7速DSG(デュアルクラッチのセミAT)に対して人手に頼る6速MTというキャラクターの違いからか、シフトラグの間の回転落ちを補う目的も含め、STIのトップエンドは高回転域にマージンを持たせているのかもしれない。
でも、STIの7000rpm以上は力感がなくなるので、トップエンドに達するのを待つ時間がもったいない。対してゴルフRは、クライマックスに達した瞬間に次のギヤに切り替わり、新しいシーンが現われる。
コーナリング性能は素性よいWRXに軍配
次に、気になるコーナリング性能。こちらは縦置きエンジンレイアウトが効いていて、前後荷重バランスに優れるSTIの勝ちだ。
コーナーでサスペンションがMAXにバンプしきって限界域に達した時、FFベースゆえエンジン横置きによるフロントヘビーな現象が顕著に出るゴルフRに対して、重いトランスミッションを車体中央寄りにマウントするSTIのハンドリングはよりニュートラル。
また、STIの操舵初期のフロントの応答はすばらしくとてもスポーティ。センターデフの機械制御部を取り去り、完全な電子制御としたことで、旧型で操舵初期に見られた山を越えるように急激に高まるステアフィールも自然になり、サスペンションもしなやかになった。
しかし、ゴルフRに乗るとその部分はまだまだ。初期応答は明らかに鈍いがステアリングを切れば切るほどに曲がる。初期の鈍さは18インチタイヤ(STIは19インチ)と銘柄によるところも大きいが、誰でもすぐに馴染む自然なフィーリングだ。しかも自立直進性はしっかりしている。
ただし、マルチモードDCCD(ドライバーズ・コントロール・センター・デフ)のスイッチで好みのハンドリングに前後駆動配分を変化させることのできるSTIは、コーナーにより自然に飛び込め、旧型よりも明確に変化を感じられるように進化。
この楽しさはゴルフRにはない。言い換えればゴルフRは乗り手を選ばないがSTIは玄人好みで奥が深い。
乗り心地は電子制御を駆使するゴルフRの勝ち
そして、乗り心地。これはダンパーの減衰力や電動パワステの特性をコントロールするアダプティブシャシーコントロール“DCC”を装備するゴルフRが圧倒的にいい。
STIのダンパーは電子制御を持たないので、ゴルフRの一番ハードなレースモードと比較しても、STIには細かなピッチングが多い。これも旧型よりはるかに改善されているがまだまだだ。
今回STIにはモノブロック構造のブレンボ製のキャリパーとドリルドローターが採用された。モノブロック構造と6ポットの採用は、バネ下荷重を増加させるので、特にフロントの応答性にも影響する。
しかし、ネガティブな面はほとんど感じさせず、逆にブレーキコントロール性と剛性感がアップ。特に踏み始めの減速Gの立ち上がりが穏やかで踏み込むほどに効きが増す。
つまり、踏力に素直にリニアに効く。だからコントロール性がよく、ストロークも短く強く踏み込んだ時の剛性もしっかりとしている。
対するゴルフRはペダルストロークが大きく、初期制動の立ち上がりが速い。剛性感も少し落ちる。ゴルフRのブレーキは、高速からのフルブレーキングなどON/OFF的使い方で威力を発揮。
僅差ながらゴルフRの成熟度に軍配
個人的には、パワーフィールの気持ちよさと、キャビンの静粛性。カリスマを追い求めるSTIに対して、僅差だがその道を通り過ぎて成熟した感のあるゴルフRの勝ちとしたい。シビックタイプRも採用しているように、もはやスポーツモデルには電子制御可変ダンパーが不可欠の時代なのだ。
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