現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「ホンダZ」は軽自動車初のスペシャルティカーだった! クラスを超えた質感の高さはライバルに影響【国産名車グラフィティ】

ここから本文です

「ホンダZ」は軽自動車初のスペシャルティカーだった! クラスを超えた質感の高さはライバルに影響【国産名車グラフィティ】

掲載 14
「ホンダZ」は軽自動車初のスペシャルティカーだった! クラスを超えた質感の高さはライバルに影響【国産名車グラフィティ】

マイナーチェンジでシャシーもエンジンも大刷新

軽自動車でスタイリッシュなスペシャルティクーペという新たなる提案をしたホンダ。低いルーフとノーズで伸びやかなフォルムを実現し、さらにマイナーチェンジでエンジンを空冷から水冷に変更した。シャシーも刷新するなど、「ホンダZ」はモデルライフで幾度もの進化をし続けたモデルである。

「ハコスカ」から「ホンダZ」に乗り換えた理由とは? 旧車好きオーナーに360ccの魅力を聞きました

新たな価値観を生んだ未知のクルマ

ホンダが送り出す軽自動車は、常に刺激的だ。初の軽乗用車として開発され、市販に移された「N360」は、圧倒的なパワーと驚異の低価格で瞬く間にベストセラーカーになった。軽自動車界のリーダーへと一気に上り詰めたホンダの首脳陣は、おごることなくN360に続くヒット作を生み出そうと議論を重ねた。

多くのアイディアが出され、新しいジャンルの開拓も提案されている。導き出した答のひとつが、今までどのメーカーも足を踏み入れなかったミニマムサイズのスペシャルティカーだ。当時の軽自動車の最大寸法は、全長3000mm、全幅1300mm、全高は2000mmである。全長と全幅は事実上変えられないため、自由度があるのは全高だけだった。そこで背を思い切り低くし、クーペ風のデザイン処理を考えている。

1970(昭和45)年9月、ホンダはセンセーショナルな軽乗用車、ホンダZを10月に発売すると発表した。アルファベットのZは未知を表す数字で、未来への可能性を秘めた軽自動車であることを意味している。10月3日にベールを脱いだが、発表会場に詰めかけた報道陣は驚嘆した。目の前に軽自動車とは思えないスタイリッシュなフォルムの3ドアクーペが姿を現したからである。

エクステリアのキャッチフレーズは「プロトタイプルック」だ。ロングノーズに見せるために低いボンネットの先端を尖らせ、ヘッドライトは奥まった位置に取り付けた。台形のグリルは独立したデザインだ。

サイドビューは、軽自動車とは思えないほど伸びやかなフォルムである。フロントピラーを強く傾斜させ、厚みのあるサイドパネルに対しガラスエリアは意識して薄くした。これに続くリアクオーターピラーは太いため躍動感と前進感が強い。縦長のドアハンドルも新鮮な味わいだ。

全高は当時の軽自動車でもっとも低い1275mmとした。リアビューで特徴的なのは、ブラックで縁取りされた大きなハッチガラスだろう。大きな面積で印象が強かったため、多くの人が好意的に「水中メガネ」と呼んだ。跳ね上げて開閉でき、荷物を出し入れしやすい。便利だから1970年代半ばにはリアゲートを装備する軽自動車が一気に増えた。

ブラットフォームやパワートレインなどのメカニズムは、1970年1月に登場したN III 360から譲り受けた。ホイールベースは両車とも2000mm。デビュー時のバリエーションは、シングルキャブレター仕様がACTとPRO、ツインキャブ仕様がTS、GT、GSだ。それぞれのグレードが強い個性の持ち主だった。

ホンダZの発表と同じ時期にトヨタが初代セリカを出したため、奇しくも2台のスペシャルティカーが揃い踏みすることになった。また、これまた同じ時期にデビューした初代フェアレディZと顔立ちが似ている、という声も飛び出している。多くの人の耳目を集め、注目の存在だったことは確かだ。発表直後の東京モーターショーやホンダの週末フェアには多くの人が足を運んでいる。

シャシーとエンジンだけでもフルモデルチェンジ並みの大変更

前期型のエンジンは、熟成の域に達したアルミ合金製のN360E型空冷直列2気筒SOHCだ。半球形燃焼室を採用し、ボア62.5mm、ストローク57.8mmで、総排気量は354ccになる。可変ベンチュリーCVキャブを1基装着したエンジンは最高出力31ps/8500rpm、最大トルク3.0kgm/5500rpmを発生。圧縮比を9.0に高め、ツインキャブを装着したエンジンは36ps/9000rpm、3.2kgm/7000rpmだった。

トランスミッションはフルシンクロの4速MTを基本とした。シフトレバーはセンターコンソール下から伸びている。ツインキャブ仕様の最高速度は120km/h。フラッグシップのGSには、量産の軽自動車初の5速MTを採用した。ステアリングギヤはキレのいいラック&ピニオン式。サスペンションは夏に登場したN III 360タウンと同じタイプとしている。フロントはコイルスプリングのマクファーソンストラットで、Iアームにトーショナルスタビライザーの組み合わせとした。リアはリーフスプリングによるリジッドアクスルだ。

ホンダZは低重心でハンドリングがスポーティだから、全国各地のサーキットで開催されていたミニカーレースに多くのプライベーターが参戦している。エンジンを500ccまでボアアップしたZが多く、スズキ「フロンテ」やダイハツ「フェローMAX」などの2サイクル勢と熾烈なバトルを繰り広げた。素性がいいこともあり、つねに上位に食い込み、好成績を残している。

デビューから1年後の1971年11月、ホンダZはフルモデルチェンジ級の進化を遂げた。フロアパネルを新登場のライフから譲り受け、パワーユニットも一新。振動を打ち消す2本のバランサーシャフトを内蔵した水冷のEA型直列2気筒SOHCに換装したのだ。EA型は低鉛ガソリンに対応した新世代ユニットで、ブローバイ還元装置や電動ファンなど、環境性能を重視した新発想のエンジンだった。

また、日本で初めてタイミングベルトを採用したエンジンでもある。ボア67.0mm、ストローク50.6mmの2気筒で、総排気量は356ccだ。パワースペックはN360E型エンジンと大差ないが、快適性や燃費性能は大きく向上している。3速ATとの相性もよかった。

立体的なダッシュボードデザインはクラスを超越した質感を実現

ホンダZはインテリアも新鮮な感覚のデザインだった。上級クラスのように立体感のあるインパネで、センタークラスターまで一体的にデザインされている。そして深いコーンのなかにメーターを並べた。このスポーティなインパネは「フライトコクピット」と名付けられている。

フルスケール1万回転表示のタコメーターと140km/h表示のスピードメーターを並べ、その左側に補助メーターを縦に2個重ねた。中央寄りには大きなベンチレーションベントが存在感を主張している。ステアリングは樹脂製だが、3本スポークのスポーティなデザインだ。

1971年1月、ひと足遅れてGSが発売された。イメージリーダーだけに5速MTのほか、145SR13ラジアルタイヤや特製のバケットタイプのフロントシート、パッシングライトなどを専用装備としている。そして同年2月、ファッショナブル仕様のゴールデンシリーズを追加。ボディと同色のリアゲートやカラフルなシート、グレーメタリックのグリル、ホワイトリボンタイヤなどで粋にドレスアップしている。

前記したように、ホンダZが大きく変わるのは1971年11月だ。フロアパネルを変更したことにより型式がN360からSAに変わり、ホイールベースは80mmも延長された。グリルの位置を下げ、湾曲の強いデザインのバンパーを装着した。リアコンビネーションランプも色味と配置を変えている。ハッチゲートの開閉機構がキーからノブで開けるタイプに変更されたこともニュースのひとつだろう。

また、名称をシングルキャブ仕様はゴールデンシリーズ、36psのツインキャブ仕様はダイナミックシリーズに変えた。このビッグチェンジのときにGSが整理されている。

ホンダZは1972年11月に2度目の仕様変更を行った。センターピラーを取り去り、ピラーレスのハードトップとしたのだ。また、フェイスリフトを実施し、シビックと似た2分割のハニカムグリルを採用した。リアバンパーは分割式になっている。エンジンもツインキャブ仕様だけに絞り込み、3速ATが消滅した。

最後の変更は1973 年夏だ。衝撃吸収ハンドルやタンデムマスターシリンダーなど、安全装備を充実させている。その1年後、ホンダは軽自動車市場から一時撤退する。今も語り継がれる孤高のクーペがホンダZだ。

ホンダZ・GTL(SA) ●年式:1972 ●全長×全幅×全高:2995mm×1295mm×1275mm ●ホイールベース:2080mm ●車両重量:510kg ●エンジン:EA型直列2気筒SOHC ●総排気量:356cc ●最高出力:36ps/9000rpm ●最大トルク:3.2kgm/7000rpm ●変速機:5速MT ●サスペンション(前/後)ストラット・コイル/リーフスプリング  ●ブレーキ(前/後)リーディングトレーリング/リーディングトレーリング ●タイヤ:5.20-10-4PR ●新車当時価格:46万1000円

こんな記事も読まれています

[カーオーディオ・素朴な疑問]メインユニット…アルパイン『ビッグX』のオーディオ機器としての実力は?
[カーオーディオ・素朴な疑問]メインユニット…アルパイン『ビッグX』のオーディオ機器としての実力は?
レスポンス
最新パワーユニットを搭載した「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+ クーペ」を追加発売
最新パワーユニットを搭載した「メルセデスAMG CLE53 4MATIC+ クーペ」を追加発売
月刊自家用車WEB
日産新型「最上級3列SUV」まもなく登場! 全長5.4m級の巨大ボディ&超豪華インテリア採用! 新型「QX80」米国で発売へ
日産新型「最上級3列SUV」まもなく登場! 全長5.4m級の巨大ボディ&超豪華インテリア採用! 新型「QX80」米国で発売へ
くるまのニュース
TomTomがBMWモトラッドのグローバルラインナップへナビゲーションスタックの提供を発表!さらに革新的なモデルへ
TomTomがBMWモトラッドのグローバルラインナップへナビゲーションスタックの提供を発表!さらに革新的なモデルへ
バイクのニュース
アストンマーティンF1、ランス・ストロールとの契約を”2025年以降”まで延長。ホンダPU搭載マシンもドライブへ
アストンマーティンF1、ランス・ストロールとの契約を”2025年以降”まで延長。ホンダPU搭載マシンもドライブへ
motorsport.com 日本版
アルピーヌF1のブリアトーレが、サインツ獲得に動く。ウイリアムズ、アウディとの争奪戦を展開
アルピーヌF1のブリアトーレが、サインツ獲得に動く。ウイリアムズ、アウディとの争奪戦を展開
AUTOSPORT web
魔改造の夜に「Sズキ」登場!! ワニちゃん水鉄砲でエンジニアが壮絶な闘い
魔改造の夜に「Sズキ」登場!! ワニちゃん水鉄砲でエンジニアが壮絶な闘い
レスポンス
なぜD1グランプリ王者はレイズを選ぶ?「gram LIGHTS 57NR」をトヨタ「GR86」にセットする「Team TOYO TIRES DRIFT」を紹介します
なぜD1グランプリ王者はレイズを選ぶ?「gram LIGHTS 57NR」をトヨタ「GR86」にセットする「Team TOYO TIRES DRIFT」を紹介します
Auto Messe Web
7年ぶりにラリー・ポーランドがWRCに復帰、勝敗を分けるポイントは?【WRC第7戦開幕プレビュー】
7年ぶりにラリー・ポーランドがWRCに復帰、勝敗を分けるポイントは?【WRC第7戦開幕プレビュー】
Webモーターマガジン
首都高沿いの神田川がぐにゅ っと曲がる場所で「橋を撤去します」 変わる“印刷会社銀座” 都バスも経路変更
首都高沿いの神田川がぐにゅ っと曲がる場所で「橋を撤去します」 変わる“印刷会社銀座” 都バスも経路変更
乗りものニュース
メルセデス・ベンツ、CLEカブリオレを発売
メルセデス・ベンツ、CLEカブリオレを発売
月刊自家用車WEB
BYDが“フラッグシップモデル” EV「SEAL」発売 「ブレードバッテリー」が長い航続距離と安全性確立
BYDが“フラッグシップモデル” EV「SEAL」発売 「ブレードバッテリー」が長い航続距離と安全性確立
くるまのニュース
アストンマーティン『バリアント』発表、745馬力のV12を6速MTで操る…世界限定38台は完売
アストンマーティン『バリアント』発表、745馬力のV12を6速MTで操る…世界限定38台は完売
レスポンス
日本全国いますぐチェック! 梅雨&台風シーズンに向けて必須の「愛車チェック&メンテ」6つ
日本全国いますぐチェック! 梅雨&台風シーズンに向けて必須の「愛車チェック&メンテ」6つ
WEB CARTOP
金利ゼロ! 通常のローンを断られても使える! 魔法のように聞こえる中古車屋の「自社ローン」の落とし穴
金利ゼロ! 通常のローンを断られても使える! 魔法のように聞こえる中古車屋の「自社ローン」の落とし穴
WEB CARTOP
タイヤの“使い方”が勝敗を分けた? スペインGPで敗れたランド・ノリス、最後に追いつけなかった理由は
タイヤの“使い方”が勝敗を分けた? スペインGPで敗れたランド・ノリス、最後に追いつけなかった理由は
motorsport.com 日本版
新型「GX」にも乗れた! “高級車ブランド”レクサスが提案する「アウトドアの新たな楽しみ方」とは? 「肝いりのキャンプイベント」は何が進化した?
新型「GX」にも乗れた! “高級車ブランド”レクサスが提案する「アウトドアの新たな楽しみ方」とは? 「肝いりのキャンプイベント」は何が進化した?
VAGUE
トヨタ「ハイエース」に「セルシオエンジン」搭載!? 専用「豪華装備」満載の“救急車”がスゴかった! 大活躍の「ハイメディック」はもはや“伝説”か
トヨタ「ハイエース」に「セルシオエンジン」搭載!? 専用「豪華装備」満載の“救急車”がスゴかった! 大活躍の「ハイメディック」はもはや“伝説”か
くるまのニュース

みんなのコメント

14件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

105.8128.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.888.0万円

中古車を検索
Zの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

105.8128.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.888.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村