コロナ禍の逆風の中、月販目標の15倍受注で好スタート
新型ハリアーが売れています。6月17日の発売から1ヶ月で4.5万台もの受注を獲得したという発表がありました。月販目標は3100台ということですから、なんと15倍ものオーダーを集めています。
これまでトヨタのクルマは、ディーラー網によって扱ったり、扱っていなかったりしていましたが、5月から販売チャネルを統合しています。ハリアーは全販売網で扱うようになって実質的に最初のフルモデルチェンジとなり、そうした追い風もあるにはあるのですが、まだまだコロナ禍という情勢の中であり、全体的には逆風のはずです。
万人受けするクルマ作りは愛車として認められない!?
では、なぜハリアーはこれほどのスタートを切ることができたのでしょうか。チーフエンジニアを務めた佐伯禎一さんは「しっかりキャラ立てすることができたこと。ハリアーのファン層として確実に存在している30代ユーザーにもなんとか手の届く価格帯を実現できたこと」が大きいと分析します。
そしてさらに、「愛車として認められるクルマに仕上げることができた」ということもハリアーの高評価に対する分析として挙げてくれました。佐伯さん曰く「10人中10人に評価されるクルマではなく、10人中2~3人に評価されればいいと割り切った」といいます。
従来、トヨタというブランドのイメージは、万人受けするクルマという印象が強いように思えます。初代カローラの開発時に生まれたという「80点主義+α」という言葉は、そうした優等生的なクルマづくりのイメージを象徴しています。しかし八方美人、優等生は社内的には高く評価されるかもしれませんが、本当の愛車にはなれないというわけです。
スタイリング優先で荷室や立体駐車場を切り捨てた
実際、新型ハリアーはスタイリングに全振りしたかのようなクルマづくりをしています。巷で、見えづらいと話題になっているリアウインカーの配置についても一文字でシャープなテールランプを実現するために割り切ったデザインの一例ですし、クーペルックにこだわって荷室は旧型より大幅に削られています。
全幅1855mmとしたことも、ある種の割り切りといえます。マンションなどに併設されている立体駐車場の多くで1850mm以下であることが求められる日本市場において、あと5mmを削ることなく、エモーショナルなデザインを優先したのです。
RAV4やハイランダーとの合わせ技で80点取れればいい
こうした割り切りが可能だった理由は、ハリアーの開発体制にヒントがあります。ご存知のようにハリアーはRAV4とアーキテクチャを共有するモデルですが、開発チームとしても共通で、ハリアーとRAV4、そして北米で販売するハイランダーの3モデルをワンチームで平行して開発していたのです。チーフエンジニアの佐伯さんは「10人中2~3人に評価されればいい」と言っていましたが、そうして明確な個性のモデルを作りわけても、3モデルを合わせればかなり広範囲のユーザーに訴求できることになります。
もしもハリアー単独の開発チームだったら、ラゲッジスペースを小さくするなどという判断はできなかったでしょう。社内であっても姉妹車(RAV4)はライバルとして意識してしまうはずです。しかし、同じチームで開発したことで、極論すれば「荷物を積みたい人はRAV4を買ってください」というスタンスが可能になりました。それゆえ、ハリアーはクーペルックのスタイリングに振れたわけです。視点を逆にすれば、ハリアーがオトナのユーザー層を狙ったデザインだからこそ、RAV4は若い世代をターゲットにしたスタイリングが可能になったといえます。ちなみにその意味でいうと北米で売られているハイランダーはファミリー層をメインターゲットとしたキャラ設定になっているということです。
複数モデルをまたぐ“新たな80点主義+α”が広がるか?
これはトヨタ伝統の「80点主義+α」を、複数モデルをまたいで実現するという発想の転換といえましょう。そうして生まれたハリアーがこれほどの人気を集めているとなれば、この手法は成功体験となって影響すると予想されます。すでにカローラやヤリスといったモデルでは、複数のバリエーションによってトータルとして「80点主義+α」を実現しているような印象もあります。
それにしても、こうした作り分けには規模が必要といえるだけに、強者の一人勝ちになってしまう可能性もあります。ライバル各社がどのように対抗していくのか、いっそうの奮起に期待したいものです。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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