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「エネルギーを消費せず涼しいクルマを造る」日産が炎天下で温度上昇を抑制する自動車用自己放射冷却塗装の実証実験を公開

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「エネルギーを消費せず涼しいクルマを造る」日産が炎天下で温度上昇を抑制する自動車用自己放射冷却塗装の実証実験を公開

日産自動車は、夏場の直射日光による車室内温度の過度な上昇を防ぐことで、エアコン使用時のエネルギー消費を減らし、燃費や電費の向上に貢献する自動車用自己放射冷却塗装の実証実験を公開した。

エネルギーを消費せずにより涼しい車を作り出す

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これまで日産は、カーボンニュートラルの実現に向けて電動化をはじめ、さまざまな取り組みを推進してきた。カーボンニュートラルの実現においては、クルマの使用時におけるエネルギー消費を抑制する取り組みが不可欠となる。今回開発した塗装は、物体の温度上昇を引き起こす太陽光(近赤外線)を反射するだけでなく、メタマテリアル技術の活用により熱エネルギーを放射するため、エアコンの使用を抑制しながら、涼しく快適な車内環境の提供が可能となる。

この塗装に使用している塗料は、放射冷却製品の開発を専門とするラディクール社と共同開発したもので、電磁波、振動、音などの性質に対し自然界では通常見られない特性を持つ人工物質「メタマテリアル」を採用している。今回は「熱のメタマテリアル」として、晴れた冬の夜間から早朝にかけて起こる放射冷却と同じ現象を人工的に引き起こす。これにより、太陽光を反射するだけでなく、クルマの屋根やフード、ドアなどの塗装面から熱エネルギーを大気圏外に向かって放出することが可能となり、車内の温度上昇を抑制する。

開発段階において、この塗料を塗装した車両と通常塗料を塗装した車両を比較した際には、外部表面で最大12度、運転席頭部空間では最大5度の温度低下を確認。これにより、炎天下に長時間駐車していた車両への乗り込み時の不快感を軽減し、エアコンの設定温度や風量の最適化により、燃費や電費の向上を図ることができる。

今回の塗装を開発した、総合研究所で先端材料・プロセス研究を担当する主任研究員の三浦進氏は、ポピュラー・サイエンス誌の2020年「Best of What‘s New Award in the auto category」を受賞した「音響メタマテリアル」の開発も担当しており、より効率的に車内の静粛性を向上させる方法を長年研究してきた。同塗装の開発においては、2018年からラディクール社との共同開発の可能性を探り、2019年にはフィルムによる冷却効果を確認。さらに自動車への適用を考慮し、2021年から塗装の共同開発を進め、今回の実証実験に至った。

三浦進氏は、以下のように述べている。

「私の夢は、エネルギーを消費せずにより涼しい車を作り出すことです。特に電気自動車(EV)において重要となる夏のエアコンの使用によるバッテリーの負荷を、大きく軽減できる可能性があります」

実は、メタマテリアルの技術を利用した放射冷却塗料は建築用途には使用されているが、建築用塗装は自動車用塗装と比較すると塗膜が非常に厚く、ローラーで塗布することを前提としており、自動車の塗装に必要であるクリアトップコートの使用も想定されていない。そのため日産は、この塗料を車に適用できるよう、エアスプレーでの塗布や、クリアトップコートとの親和性、日産の厳格な品質基準など、様々な条件への対応に取り組んだ。

約3年の開発期間において、三浦氏をはじめとした研究者が総合研究所で100以上のサンプルを作製し、一般的な自動車塗装に用いられるエアスプレーでの塗装に成功。また、今回の実証実験において、塗装の欠けや剥がれ、傷、塩害などの化学反応に対する耐性、色の一貫性、修復性にも現時点で問題がないことも確認した。

さらに、自動車用塗装への適用として重要な要件のひとつである塗装膜厚においては、同等の冷却性能を確保しつつ開発当初の120µm (0.12mm)から大幅な薄膜化に成功した。現在、トラックや救急車など炎天下においての走行が多い商用車への特装架装としての採用を検討しており、商品化に向けてさらなる薄膜化に取り組んでいる。

この塗装の効果と耐久性を検証するために日産は、羽田空港において2023年11月から1年間の実証実験を実施。ラディクール社の日本法人の販売代理店を務める日本空港ビルデングの協力により、ANAエアポートサービスが空港で日常的に使用しているNV100クリッパーバンに当該塗料を塗装して評価を行っている。

日産は、長期ビジョン「Ambition2030」において、環境問題や社会課題、変化するユーザーのニーズに対応し、よりクリーンで安全、インクルーシブで持続可能な企業となることを目指し、モビリティと社会の可能性を広げていくとしている。

関連情報:https://www.nissan.co.jp/

構成/土屋嘉久

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